3度目の「ニュー・シネマ・パラダイス」
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最初は、幼い高校時代に。次に、ロマンチストな大学生のとき。そして現実を少し知った社会人になったいま、3回目のニューシネマパラダイスを観ました。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督。1989年公開。伊。
【壮年期】故郷シチリア島から元映写技師アルフレードが死んだという知らせを受け取った映画監督サルヴァトーレ(愛称トト)は、少年~青年時代の回想を始める。
【少年期】戦争で父を亡くしたトトは映画に魅了され、村の映画館「Cinema Paradiso」でアルフレードに近づく。やがて二人の間には友情が芽生え、映写技術を教わる。火事で失明したアルフレードの代わりに、学校に通いつつ映写技師を勤める。
【青年期】トトは良家の娘と恋仲になった。しかし彼女の父親の反対に遭い、泣く泣く別れ、失意のまま徴兵される。帰郷後、アルフレードの「おまえはここにいるべき人間じゃない」との強い薦めでローマに旅立ち、その教えどおり、故郷には戻らなかったのである。
【再び壮年期】葬式に列席するため、故郷に戻ったトトを、懐かしい人びとは郷土の成功者として歓迎する。大きく様変わりした実家、村、そして映画館。ローマに戻ったトトは、アルフレードの形見の旧いフィルムをひとり上映する。そこには、かつて上映を許されなかったキスシーンが数々つづられていた・・・。
ストーリーが長くなってしまいました。それだけ、重厚なプロットのもとに練られたストーリーです。
この作品のすごいところは、「どこを切り取っても完成した映画になる」ことです。
少年期、青年期、壮年期それぞれでも1本の映画になるし、全ストーリーからつまみぐいで抽出して、いろんなストーリーを編集できる。
その理由は、個々のシーンが完成度にあります。どのシーンも非常に細密かつ丁寧に製作されているから、どれを積み上げてもお話になる。
この作品はよくできたRPGとも言えるのです。
実際、今まで3回観たこの作品は、どれも異なるディレクターズカットになっています。
それなのに、映画としてどれもが完成している。そして、異なる視点での感想をそのたびに抱くことになるのです。
例えば、上記のストーリーは3回目に見たものですが、ラストのキスシーンのフィルムを見るシーンでは、いぶし銀なトトに懐古的な叙情性を感じずにいられません。
しかし、高校時代に見た同作品(おそらくこれが完全版)では、葬式の後に、同じく初老を迎えた元恋人と港の車中で再会するというシーンが入っています。
その直後にキス・フィルムのシーンが続くので、トトがもっぱら元カノとの思い出に浸っている印象を受け、「ヤらしい ちょいワル親父」に見えましたね!あの頃の私にはっ。
→今見れば、大人の恋愛は重要な懐古ファクターである!と主張しますけどね~。
つまり、
人の一生って、たくさんの経験で積みあがっていて、
その小さな一粒ひとつぶに壮大なドラマがあり、
どれをとっても、人のひとつの生き様を形づくる。
ということを映し出してくれるところが、永遠の名作と言われる所以なのです。