見学に入ってくれた先生から、

疑問という形で、

こんなフィードバックをもらいました。

 

 

 

「昨晩」「昨夜」「夕べ」

上記の 3 つを同じ意味と説明していたが、厳密に言うと「夕べ」は夕方、
日が沈む時間帯、暗くなろうとする時間帯なので「昨晩」「昨夜」と少し違
うのではないか。また、「昨夜(さくや)」は、昨日の夜、日が沈んで星が
見える時間帯なので「昨晩」とも意味が違うのではないか。
「昨晩」は夕方から夜中までのことを意味するのでこの3つの言葉は完全
には同じ意味ではないと思った。

 

 

 

状況としてはN2漢字「昨」漢字語彙「昨晩」「昨夜」を教える時間に、

みん日で勉強した同じ意味の言葉は何だった?と「夕べ」を復習して、

これは3つ「昨日の夜」という意味で同じという説明をしたことについて

上記のようにご意見をくださいました。

 

 

さて、みなさんはこのフィードバックを受けて、

今後の授業にどのように役立てようと思いますか??

 

 

この3つが厳密には違うという言語感覚がすばらしいです!

とてもまじめに勉強されていて、知識が豊富で、すてきな先生ですよね。

 

 

 

以下私が先生にお答えした内容です

(ブログ用に読みやすく編集します)

 

・日本語教師として知っておくことは大切

・“普通の”日本人は使い分けているか

(普通:文筆業で使い分けを気にする職業の人をのぞくという意味で)

・“同じ”を教えるか“違い”を教えるか

という点について書きました。

 

 

確かに3つは完全に同じではない。

「夜明け」とはいっても「晩明け」とは言わないように、

「夜」が示す範囲と「晩」が示す範囲は違う。

 

学生から「朝」「昼」「夕方」は何時から何時までかなどの質問も出てくる。

これらの言葉はレイヤーが違う。

熟語で考えると、

 

「昼夜を問わず働く」し、「朝から晩まで働く」けど、

「朝から夜まで」は働かない。

「朝刊と夕刊」で、「夜刊」はない。

 

暗いか明るいかを分ける言葉は

「昼夜」であって、

太陽が昇る時間と沈む時間で、

「朝晩」か「朝夕」がセットという感じ。

 

「夕べ」について

昨日の夜と、暗くなる前の日が沈む時間の2つの意味がある

「○○の夕べ」のようなタイトルを付けたイベントが多い

時間帯は4時から7時くらいにスタートする用例がある

 

個人的な使用で、

時間を表す言葉として私は使用しない。

「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」

くらいしか使わない。

現代だとちょっと文学っぽい。

 

話は少し離れて、

「朝」と「昼」は何時から何時までかはっきりわからない

という学生でも、

「朝ごはん」と「昼ごはん」を間違える人はいません。

「朝ごはん食べた?」と聞くと

「いいえ、朝ごはんを食べません。昼ご飯を食べます。」

という学生が多いです。

(私のが受け持ちのネパール人は朝食をとらない人が多い。)

ブレックファストとランチは明確に違う概念だから。

 

では「夜ご飯食べた?」と聞いて、

「いいえ、夜ご飯は食べません。夕ご飯です。」とか、

「晩ご飯です。」っていう人がいるか、という話になります。

厳密に時間を聞いているのではないので、

ディナーを食べたかどうかという意味で、

3つの言葉は同じです。

 

同様に「昨日の夜何をしましたか?」と聞きたいとき、

「夜は昨日と今日にまたがっていますが、

何時ごろのことをおっしゃっているのですか」

というのは野暮であると。

 

「昨夜何をしましたか」

「昨晩何をしましたか」

「ゆうべは何をしましたか」

は同じだと教えてよいというのが私の考えです。

 

確かに違う言葉だけど、

“違い”を教えるか、“同じ”を教えるかは

“何のために教えるか”によると考えます。

 

”同じ”を教えるメリットは、

JLPTの類義語の問題になるから。

 

 

 

以上が私からの返信です。

朝とか夜とか夕方とか、結構簡単に教えてしまうけど、

なかなか面白い視点ですよね。


ただ、今回の語彙で

違いを教えるメリットって、

なんだろう?

私には思いつかないんですよね。

 

”違い”を教えるべきか

と言われると

メリットとデメリットを考えて、

私の答えは「教えない」です。

 

日本語教師として知っておくことは大切だし、

“普通の”日本人は使い分けているかといえば

そうとは思えない。

”同じ”か”違い”どちらを教えるかは

どのような目的で教えるかで

決めたらいいかなと思います。

 

なので、せっかくいただいたご指摘ですが、

わたしは多分これからも

この3つの語彙に関しては

同じだよー!って教えます。