2008年7月・熊本旅行(14)
- 熊本城・そして旅の終わりは500系新幹線 -
球泉洞の駅にて、やって来た12時47分発の普通列車に乗り込む。車両はキハ30。
ステンレス製の、いかにも最近の軽快気動車と言った風情の、鉄的には全く面白みの無い車両なのだが、車内は転換クロスシートが並んでいるので、実はかなり快適。ただしトイレが無い。この辺りの普通列車は全然乗り通すと結構長時間にもなるので、トイレが無いと言うのはマズい気もするのだが…。
車内でうとうとしたりしながら、八代に13時34分に到着。ここで乗り換え。やって来たのは817系で、初日に福北ゆたか線で乗った車両だから、出来れば813系あたりに乗りたかったなぁ、などと思ってみたり。
熊本に14時22分に到着。ここからタクシーに乗って、いざ熊本城へ。熊本旅行で熊本城を見ないまま終わってしまうと言うのも何となく勿体無い気がして、最後の最後に観に行くことにしたのだ。
平日にも関わらず、それなりにお客はいる模様。まあ、平日と言っても世間は夏休みか。
並び立つ天守閣と宇土櫓。この熊本城と言うのは、実は西南戦争の時にそのほぼ全てが消失してしまったらしく、天守閣も当然、近年になってから再建されたもの。内部は熊本城の歴史などを展示した博物館になっている。結構上の階まであるので、全てを観て回るとなかなか疲れる。
一方、宇土櫓は昔のものがそのまま残っている貴重な建物で、内部も往時のままの姿が残されている。
宇土櫓の内部と、天守閣からの眺め。宇土櫓は当然ながら木造で、白塗りの壁にきしむ床、全てが昔のまま。
他にも本丸御殿など、とりあえず内部を見学できる建物は片っ端から回ってみる。再建された本丸御殿の内部はとても豪華で美しく、様々な美術品などもあったりで見応えがあったのだけれど、でもやっぱり僕は昔のままが残されている宇土櫓が一番面白かったかなぁ。
こんな「ゆるキャラ」もいた。
駆け足で回ってみた熊本城。だだっ広い敷地内に、内部見学可能な建物が幾つもあって、本気でじっくり観て回ろうと思ったら2時間くらいは欲しいところ。ただ、宇土櫓以外は再建された建物ばかりなので、本当の「昔の城」を観たいという人には物足りないかもしれない。
さて。タクシーを捕まえて熊本駅へと戻るのだが、ここでちょっとした事件発生。
タクシー乗り場にて、最前列に停まっていたタクシーに乗ろうとしたところ、なんと運転手が中で寝てやがる。ちょっと起きそうになかったので、仕方なくその後ろのタクシーに乗り込んだのだが、当然、発車時にその前のタクシー(運転手寝ている)が邪魔になるので、僕の乗ったタクシーの運転手さんが起こしに行ったのだが…。
その寝ていた運転手、車をどかそうとはせずに、こっちの運転手さんに向かって「バックして出ろ!!」と言ったそぶり。これにはほとほと呆れた。
観光客の多い熊本城と言うこの場所で、昼間仕事中にどうどうと居眠りと言うこと自体も酷いが、何よりその後が本当に酷過ぎる。自分に非があるのにも関わらず、どこうとはせずにこっちに迂回しろと言う。多分お客のことだとか何も考えていないのだろう。
まあ、正直僕は怒りよりもただ呆れて苦笑いだったのだが、こっちの運転手さんがかなり怒り心頭だった模様で、「タクシー会社に必ず報告入れておきますから」とおっしゃってた。
でもこの運転手さんが良い方で、迂回になってしまうからと、熊本城の敷地を出るまではメーターを入れずにいてくれたりと、何かと気を使って下さったので、結果的にはまあ良かった、か。
これだけお客思いないい運転手さんだからこそ、余計に同業者のあの酷い態度が許せなかったのだろう。
熊本城と言う、熊本随一の観光地で、旅の最後に見た人間模様。どっちも同じタクシー運転手と言う人なのに、凄く良い人とどうしようも無い人と。人間の最も綺麗な部分と最も汚い部分とを同時に見せられた、なんとも言えない経験だった。
**********************************************************************
熊本駅からは16時10分発の特急「有明24号」で博多へと向かう。
この「有明」、使用車両は「リレーつばめ」と同じく豪華な787系なのだが、4両編成のミニ特急で、しかも車内販売など行われていない。てっきりJR九州の特急は全車車内販売(+可愛いお姉さんの笑顔付き)だと思っていたので、車販の無い特急があることが意外だった。
博多に17時36分に到着。そして、今日の、いやこの旅のラストランナーは18時00分発の「のぞみ50号」。N700系デビューと共に瞬く間に少なくなってしまった、今や貴重とも言える500系運用の「のぞみ」。その姿が見られるのも、あとわずかだ。(500系と言う車両自体はしばらく残るが、山陽の「こだま」運用に転用されてしまう)
久々に出会った500系の「のぞみ」。シャープなロングノーズのその顔立ちは登場後10年経った今となっても新鮮だ。スマートで、均整の取れたスタイル。陳腐な言葉だが、誰が見ても「カッコイイ」と思えるシルエット。「スピード」に特化した、その機能性を追求した形が究極の「車体美」を生み出した稀有な例と言っても良い。
僕の中できっと、彼を超える新幹線車両は今後も現れないだろう。
黄色みを帯びた優しい光が灯すグリーン車。重厚で落ち着きと豪華さとが上手く調和した、その雰囲気も全く色あせていない。なのに、なのにキミは…もうすぐ居なくなってしまうのか。
正直、僕は新幹線車両にはほとんど全く興味が無い。旅に出る際も、極力新幹線なんて使いたくない位だ。しかし、だがしかし。この500系だけは別だ。ずっと、登場した当初からずっと、凄いヤツだと思っていた。最高の速さと最高のカッコ良さ。痺れる位に素敵な、「夢の超特急」。それが500系なんだと思う。
そんな彼もやがて消え去り、実用本位(で面白みの無い)700系だけが走る様になっていく。それも時代の流れなのか。仕方が無いことなのか。
とても寂しいことだと思う。鉄道の面白みがまた一つ、無くなって行く。
消え行く500系。彼に対して今、僕の抱いている想いは、キハ58やキハ52、もはや風前の灯火となった旧国鉄型気動車達への惜別の想い。それと同じものなのかもしれない。
グリーン車の深い座席に腰掛け、飲んだビールはほろ苦く、ちょっと切ない別れの夏の味だった。
**********************************************************************
こうして5日間の、実に濃い九州・熊本旅行は終わった。
寝台特急「はやぶさ」から始まり、旧型気動車乗り較べ、球磨焼酎に熊本の美味あれこれ、川下りに熊本城…本当に盛り沢山な旅だった。
もうしばらくは、こんな大きな旅はしなくても充分だ。
でも…まだまだ満足しきったワケじゃあない。この日本に、鉄道が走っている限り、僕はどこまでも乗って、あちこち旅して回って行くだろう。










