2008年7月・熊本旅行(10)
- 肥薩線の面白気動車(2) 「はやとの風」 -
「いさぶろう」を降りた向かいのホームに停まっている「はやとの風」。漆黒のボディが、(先日乗った「あそ1962」と若干かぶる印象もあるが)現代の鉄道車両のカラーとしては新鮮でカッコイイ。
…が、あまりのんびりと写真を撮ってもいられない。だってもうあと1分で発車するから!!
と言うワケで、慌てて乗り込む。特急「はやとの風1号」は、11時18分に吉松駅を出発。先程の「いさぶろう」の満席っぷりと異なり、この「はやとの風」はガラガラ。てっきり「いさぶろう」の乗客ほとんどが乗り換えるものだと思っていたがそうでも無かった。これなら指定券買う必要無かったか。
ところでこの「はやとの風」。特急列車なのだが、その元車両となっているのは先程の「いさぶろう」と同じくキハ40(系列)。それも、デッキ付きのキハ48をタネ車にしているのならまだしも、両開き扉のキハ47を使っていると言うのだから恐ろしい。デッキ無し・両開き扉の特急なんて、関西や九州の大手私鉄の特別料金不要特急くらいでしか見かけないシロモノ。
しかしこれが、内装を見れば誰しもが納得せざるを得ない、立派な「観光特急」に生まれ変わってしまっているのだから尚更恐ろしい。
「いさぶろう」や、先日の「あそ1962」と同様にウッドを多用した内装は暖かみがあって洒落ている。1号車と2号車とでは微妙に雰囲気が異なっていて、この日は指定席の1号車は白っぽいインテリア、自由席の2号車はもう少し深みのある茶系でまとめられていた。
天井と窓間の丸い照明。それにウッドの荷物棚が本当に洒落ている。鉄道車両でこういうセンスは普通なかなか考え出せないと思う。
トイレ回りの造作も凝っている。そして、トイレは元々あった狭い和式便所ではなく、清潔で広い洋式(車椅子対応)のものに新設されている。思えば、「あそ1962」はトイレは外観だけの改装で、中は昔のままだった。この辺りが同じ観光列車とは言え「普通」と「特急」の違いか?
車内の中央部分には大きな窓の展望フリースペース。だが、立席だった「いさぶろう」のそれと異なり、木製の椅子が窓側を向いて配置されているので、腰掛けてのんびりと景色を眺められる。
座席は回転リクライニングシート。背もたれ部分はやはりウッド。しかしこれが、見た目のカッコ良さとは裏腹に、掛けてみると安定感に欠けて正直、座り心地はそんなに良いとは言えない。こういった点や、デッキ無し、またそもそもタネ車がキハ40と言うこと自体がいけないのか、この「はやとの風」。鉄道好きからはあまり良い評価を受けていない模様。
でも僕はとても気に入った。これはこれで全然アリだと思う。特急とは言え、そんなに長距離・長時間を乗る列車では無い。ならば実際の居住性うんぬんよりも、見た目のインパクト第一で勝負するのも方法としてはアリだと思うのだ。
実際、この日も、乗った乗客の誰しも車内に入るなり「おおーっ!!」と歓声をあげていた。そもそも、普段の生活の中では鉄道車両に対して興味も無い一般の観光客なら、デッキうんぬんだとか細かいことなぞ気にしない、と言うか考えもしないだろう。
それよりも、いかに「観光列車にふさわしい楽しい雰囲気」を演出するか。その一点の方が大事だろう。
その点では、やはりJR九州の…と言うか水戸岡マジックは凄いと思うのだ。キハ40なんてありふれた車両を、徹底改造して(外観は塗装以外ほとんど変わってないが)、訪れた旅行客に「あっ!!」と驚きと感動とを与える観光列車へと生まれ変わらせている。
タネ車がキハ40と言うのも、余剰になっているものをムダにしないと言う点で理にかなっているし、日本人古来の「もったいない」の美徳に通じるものだと思えばなんだか気持ちもすがすがしい。
「はやとの風」車内では、色々と車内販売を行っている。ちなみに先程の「いさぶろう」でも行っていた。
両車の車内で、グッズを売られているもの全種類買ってしまった…。こういうグッズって、買ったところで別に使わないのにな…。でもつい買ってしまう。(ちなみに真ん中は、帰りに買った真幸駅の入場券)
朝乗った特急「くまがわ」の車内で貰ったリーフレット、「いさぶろう・しんぺい」と「はやとの風」のスタンプを押すページもあり、先程の「いさぶろう」とこの「はやとの風」、それぞれ押してコンプリート。
また、途中幾つかの停車駅では写真撮影などの為に数分間の停車を行っていて、更に「あそ1962」の時と同様、乗車日の入ったプレートもある。
ついついプレート持って記念撮影(笑) ちなみに、「いさぶろう」にも同様のプレートがあり、車内で客室乗務員のお姉さんに頼んで撮ってもらった。乗務員が写真撮ってくれるのは、独り旅にはありがたいサービスだ。(いっつも記念写真撮るのに困るのだ。見知らぬ人に頼んだり、セルフシャッター使ったり…)
列車は山の中を走り抜け、隼人あたりからは開けた場所へと出て、やがて車窓には海が広がってくる。
雄大な桜島が見えると、鹿児島はもうすぐ。この辺りの風景はやはり、座席からよりもフリースペースの展望窓からじっくりと眺めたい。
そして12時49分。列車は終点の鹿児島中央に到着した。
実に6年ぶりに降り立つ鹿児島中央の駅。(以前来た時はまだ「西鹿児島」だったが)
熊本を朝出発し、人吉からの「いさぶろう」、吉松でのりかえた「はやとの風」。肥薩線の2大観光気動車の旅は、実にユニークで楽しく、乗り応えのあるものだった。また、JR九州の車両や鉄道旅・観光に対する思い入れやコンセプトが良く分かる、そんな列車だったとも思う。先日の「あそ1962」もそうだが、心に残る、素晴らしい鉄道旅が出来た。JR九州には改めて感謝と敬意を表したい。
だが、まだ終わりじゃあない。ここからまた、同じく「はやとの風」「しんぺい」に乗って折り返すのだ(笑)












