2008年7月・熊本旅行(8)
- 再びの「あそ1962」 そして熊本での一夜・美味と美酒に囲まれて -
阿蘇山からバスで下山し、阿蘇の駅から豊肥本線の普通列車に乗って宮地へ。
-そして、「あそ1962」との再会。
一日ぶりに見るその姿は、やはり美しくもカッコイイ。黒光りするボディに金の帯が重厚感と高級感とを感じさせ、他のキハ58塗装では味わえない独特の雰囲気が何とも言えない。
早速、車内へと乗り込む。乗客は、昨日の熊本発の列車と較べるとかなり少ない。乗車率は30%くらいか?
15時37分。「あそ1962」は宮地駅を出発。熊本方面へと向けて走り出す。
車内では独り、阿蘇での色々な出来事を思い出しつつ、阿蘇での旅の余韻に浸りながら時を過ごす。暑い中遊び回り、疲れた体に、ディーゼルエンジンの音が心地良く染み渡る。
「あそ1962」の窓に映る阿蘇の山々。窓が額縁で、車窓がそのまま額に入った絵みたいに見える。
列車は、幾つかの駅で3~4分の、結構長い時間の停車をする。列車行き違いの為、と言うのもあるが、降りて「あそ1962」の写真を撮ったりも出来る、いわばサービスタイム的な停車も含まれている。
赤い気動車や白い気動車とも並ぶ。どちらと並んでも、「あそ1962」の真っ黒なボディはインパクト大。
車内でのひととき。帰りは行きの様にビールではなく、あえてラムネなんぞを買って飲む。懐かしさを感じる車内で飲むラムネ。これもまたどこか懐かしい雰囲気でいい。
客室乗務員のお姉さんに、記念撮影を撮ってもらったりしながら、ちょっと話す。「僕はこの気動車が好きでね…僕の子供の頃は全国どこにでも走っていた車両なんですけどね…」と言ってみるも、お姉さんはあまりピンと来てない。まあそりゃそうだろう。見た感じ、僕より10歳くらい若いだろうし。
今の若い世代達はきっと、このキハ58と言う車両が日本全国を急行列車として走っていた、そんな事実なんて知らない。こうして老兵は皆の記憶から静かに消えていく…。
それは寂しいことだけど、でもその一方で、この「あそ1962」は熊本・阿蘇を走る、「レトロで楽しい乗り物」として皆の記憶に刻まれて行く。きっと、それを「キハ58」と言う名前で覚えてくれる人はそのうち極少数なんだろうけど、でも例えどんな形であれ、キハ58のことがより多くの人の記憶に残るのならば、僕はそれで構わないと思う。
宮地を出て1時間と40分ほど。「あそ1962」は17時21分、終点の熊本に到着した。
熊本駅を回送として走り去る「あそ1962」。その姿を僕は黙ってずっと見送る。
ありがとう。「あそ1962」。キミと過ごしたこの2日間のことは忘れないよ。ずっと…ずっと元気で走り続けて欲しい。それだけが僕の願いだ。
…じゃあ、またね!!
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熊本駅を出ると、こんなパネルが駅入り口に貼ってあるのを見つけた。
やはりこの「あそ1962」、JR九州としてもかなり力を入れて売り出しているんだなぁ。そう思うと嬉しく、ちょっと心強くも感じる。
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この日は、熊本駅前のビジネスホテル「ルートイン熊本」に宿泊。チェックインを済ませ、夕食を取りに再び街へと出る。
熊本駅前から路面電車に乗車。やって来たのが新型車じゃなく、古めかしい車両だったのが嬉しい。
床も木の板張り。「あそ1962」や「九州横断特急」も床が木だったが、しかしあれは綺麗に加工された木材。こっちは違う。これこそ昔ながらの木の板張りの床。モータも当然釣り掛け式で、昭和の昔にタイムスリップしてしまったかの様な感覚。
熊本駅から10分かそこら。熊本城前で降り、歩いて数分。飲み屋街の中にある、「味の波止場」と言う店へと入る。
カウンターに座り、メニューを見ると、色々と熊本の名物があるので、それをあれこれと注文してみる。
まずは「人文字ぐるぐる」。茹でたネギをそのまま、青い部分を白い根元に巻きつけてある。ネギをまるごと食べると言う、どっかのボーカロイドが聞いたら泣いて喜びそうな料理。これを酢味噌につけて食べるのだが、サッパリとしてなんとも言えない。前菜にピッタリだ。
熊本と言えば名産のこれ。「辛子蓮根」。辛子蓮根は昔、土産物のを一度食べたきりだが、正直、鼻にツンと来るだけで特に旨いともなんとも思わなかったのを覚えている。が、しかし、こういったちゃんとした料理屋で食べるものは別格。何と言っても揚げたてなのだ。
揚げたてアツアツ、サクサクのをほうばる。蓮根のパリッとした食感が心地良く、そして中に入った辛子味噌が全然辛くないのだ。勿論、ピリリとしたものは感じるが、過度にツンと来るのでなく、まろやかで、甘くて美味い。これはとにかく酒が進む。球磨焼酎との相性が良過ぎる。
佐賀は呼子から直送、ヤリイカの活き造り。勿論生きている。透明に透き通った身がなんとも美しい。食べてみると、身はやや柔らかで、コリコリとした歯ごたえにはやや欠けるものの、甘みがあって上品な味。身を刺身で食べたあと、足の部分はお好みで焼き・揚げなどに調理してもらえる。僕は塩焼きにしてもらったのだが、刺身とはまた全然味の雰囲気が異なって箸が進む。
そして、個人的に一番だったのがこれ。メニューに「しゃく」と書かれていて、「?」と思ったのだが、店の人に話を聞くとどうやら「アナジャコ」のことらしい。
この「アナジャコ」と言うのはヤドカリに近い生き物らしく、本などで読んでその存在は知っていたが食べたことは無く、非常に興味をそそられたので是非!!と思い注文。茹でと天ぷらとあったが、天ぷらがお勧めとのことで天ぷらにしてもらう。
薄い衣の下には真っ赤に茹で上がった、ヤドカリとも海老とも蝦蛄ともつかない、奇妙な形の生き物。大きさは10センチ少々か。殻ごと丸ごと揚がっている。
これをそのまま、塩をちょっとつけて丸ごと食べるのだが、これがもう何とも言えない美味さ!! 殻は柔らかく、全く苦にならない。むしろそのサクサクとした食感が心地良い。その下にはギッシリと身が詰まり、食感は海老の様なプリプリした感じと言うよりはカニなどに近いだろうか。
味は、海老・蝦蛄・カニ、そのどれとも似ている様で違う、「アナジャコの味」としか言えない独特の味わい。しかし嫌なクセなどは微塵も無く、甲殻類が好きな人ならばまず間違い無く気に入る味だろう。
これほど美味い食べ物なのだが、その取り難さのせいなのか、食べる地方はごくごくわずか。九州や瀬戸内海の一部などでしか食べないらしい。
この他に、メニューには「イソギンチャクのバター焼き」と言うのがあって非常にそそられたのだが、これは生憎品切れでありつけず…。イソギンチャクも九州の一部でしか食べないらしく、是非ともトライしてみたかった。
また、焼酎で「金霧島」と言うのを見つけ、頼んでみる。芋焼酎で有名な「黒霧島」と言うのがあるが、あれの最上級品で、ベースは「黒霧島」、そしてその中になんと「冬虫夏草」を漬け込んだと言うものなのだ。高そうだったが、これは珍しい!!とつい頼んでしまった。
ほんのり黄金色の液体はどこまでもまろやかで、漢方臭さなど微塵も無く、とても飲みやすい。これをロックでゆるゆると飲りながら、上にあげた肴をあれこれ楽しみつつ…。
こうして散々飲んで食べ、熊本での夜は更けて行くのだった。











