2008年5月・初夏の北陸旅行(2)
- キハ58との邂逅 -
さて。富山に来た僕には、どうしても確かめたい-いや、確かめなくてはならないことがあった。
北陸旅行直前にふと入手した情報だが、なんでも高山本線の富山口に、未だキハ58が走っているのだとか。
全国各地で次々とその運用を失っていくキハ58。南東北では「おもいで」号復活運転と嬉しいニュースもあるものの、四国でもこの秋限りだとか、「聖地」米坂線にも新車投入だとか、暗い噂が後を絶えない。
そんな中、高山本線には平日の朝に限り、キハ58運用の普通列車が走っていると言う。それは果たして本当なのだろうか。
その真偽を確かめるべく、高山本線列車の発着するホームへと向かう。待つことしばらく。
そして時刻は朝6時15分過ぎだったか。ゆっくりとホームへ入ってくる2両編成の列車-そう、そこには紛れもなく、キハ58+28の姿があったのだ!!
ああ…神は…ここに居た!!
噂は真実だった。高山本線のキハ58は、平日朝の84lD→844D→849D→852D→857Dと言う運用で富山⇔越中八尾間を往復しているのだ。(2008年5月14日現在)
しかしこのキハ58。小豆色に白い帯と言うカラーリングが渋くてカッコイイ。南三陸色やよねしろ色がハマってたから、キハ58にはグリーン系だとばかり思っていたが、こんな深い色も結構似合うなぁ。と言うかやはり美人は何を着ても似合うってヤツだ!!
ちなみに実を言うとこちら側はキハ28。と言うことは、逆側にはキハ58がいるハズなので、そちらを覗いてみると…。
な、なななななんと!!!
パノラミックウィンドウ車キタコレ!!!!!
もう興奮のあまり、早朝からテンション上がり過ぎでおかしくなりかける僕。そして更に追い討ち。床下から聴こえてくるエンジン音がね…もうね…。
これってもしや原型のDMH17H!?
この独特の「カランカラン…」と言う高らかなアイドリング音。間違いない。DMH17Hの音だ。
まさかここへ来て、エンジン未換装のキハ58に会えるだなんて…。
と言うか。
パノラミックウインドウにエンジン未換装だなんて、なんと言う萌え要素!! なんと言う萌えキャラ!!
ああっもうなんなのこの可愛いコ!!
…ちょっと待て俺。幾らなんでも興奮し過ぎだ。少し冷静になれ(汗)
このキハ58は折り返し、7時16分発の普通越中八尾行きとなる。つまり、出発までまるまる1時間あるのだが、その間、待避線へ入るでも無く、ずっとホームに停車している。
と言うワケで、思う存分にキハ58を眺め、写真を撮りまくる僕。小雨降りしきる早朝の、誰もいない無人のホームで、旧型気動車の周りを何回も何回もぐるぐると回っては独りニヤニヤしていた僕は、傍から見れば明らかにおかしな人だったと思う。うん。
車内はワンマン対応、そして近郊化改造されている。デッキが無くなり、ドア付近がロングシートになってしまっているのは残念だが、しかしボックスシートに腰を下ろせば、昔、急行として走っていた頃の雰囲気がそのまま味わえる。
さて。僕はこのまま、このキハ58に乗って越中八尾まで行くことにする。越中八尾は「おわら」で有名な町。情緒溢れる、風情ある町とのことだが、別に越中八尾に用は無い。ただキハ58に乗りたい、それだけだ!!
7時16分。列車は定刻通りに富山を出発。この時点で、車内に客はほんの6,7人と言ったところか。ゆっくりとキハ58は動き出す。カランカラン…と言うアイドリング音が、低く響くエンジンの唸りへと変わる。しかしこのDMH17Hエンジン、その響きは意外にも静かでおとなしい。同じDMH17系列でも、17Cエンジンのけたたましくすさまじい轟音とは対照的だ。
キハ58は富山の田園風景の中を走って行く。この頃には、雨も止み、いつしか晴れ間がのぞいていた。水が張られた田に、青空が美しく反射する。
こんないい天気になるのなら、予定通りに黒部峡谷鉄道に行くべきだったか…と、僕の心の中で一瞬の後悔が走る。が、その思いはすぐに打ち消される。
そんなことよりも、今のこの一時-キハ58と過ごすこの一時-それが何よりも一番大事なのだ、と。
キハ58の普通列車は7時43分、終点の越中八尾に到着した。
僕はここで駅から出ることも無く、そのまままた、このキハ58で引き返す。折り返し7時59分発の富山行き普通列車。富山には8時35分に戻ってきた。
旅の初めに、早朝のキハ58との素晴らしい出会い。まさに夢の様な一時だった。
折り返し、富山を8時54分発の越中八尾行き普通列車として再び走り出すキハ58。
その姿を、僕はずっといつまでもいつまでも見送っていた。




