山から見下ろす湖が良い。出来ればその中間に鳥が飛んでいたりしたら自ら立つ場所の高度感が増されて更に良い。色合い異なる湖水のキャンバスに陽光煌めく波立ちを刻み遠くからでも水の動きさえ感じられる。

 元々イワナ釣りから始まった山歩きだから水とは縁が深い。水のある風景がなんとも私の心を落ち着かせてくれる。自然の中にあって湖でも川でも、そこに水がある事で1つの構図が完成される。


 富士山を取り囲むそれぞれの湖。その湖面越しに、あるいは湖面に映し出される富士山を眺める。そんな代表的な景観も良い。磐梯山から見る猪苗代湖も良かった。一切経山と魔女の瞳も印象的だったし入叶津から延々と歩いた末の浅草山から見下ろした田子倉湖もよかったなぁ。でもここでは何と言っても中禅寺湖を眺める2つの山だ。


まず1つ目はもちろん男体山だ。中禅寺湖の水面標高は1269mとされている。この水面標高は堰止湖としては日本一との事である。男体山(2486m)の登山口は中禅寺湖畔の二荒山神社からとなっているので登山は1217mの高低差がある事になる。ジグザグの登り一辺倒で一切下る場面の無い登山道では時折訪れる中禅寺湖を見下ろす眺望が一息つかせてくれた。そして森林限界を超えた九合目からは終始中禅寺湖が背を押してくれる。

 

 山頂の鳥居をくぐり奥の院に手を合わせてお参りを済ませる。鳥居越しに満々と水をたたえた湖水を見下ろしながら2486mの涼風を身体全体で受け止める。風に乗って1217m下の湖面を走る観光船の汽笛が聞こえて来る。きらびやかに輝く大剣や西に降った太郎山神社の祠あたりからとウロウロと湖を見下ろす景観を楽しむひと時。霊峰男体山を制した喜びはやはりこの景観に尽きるだろう。





さて2つ目の山。これは男体山とは中禅寺湖を挟んで対岸に位置する社山だ。社山へのアクセスは中禅寺湖畔の湖岸路で阿世潟まで歩き峠への登山路を使う。手前の半月峠へ上がる登路も尾根歩きが楽しいコースだ。湖岸路を歩く過程で少し道を外れれば湖水を手に掬う事も出来きて中禅寺湖を肌で感じるられる。湖畔に佇みこれから登る社山を見上げるとやる気が湧いて来る。


阿世潟峠まで登ると大きなアンテナが立つピークまでがきつい登りとなるがピークに辿り着けば疲れなど一気に飛ぶ眺望が待っている。中禅寺湖を従えた男体山の勇姿が一望出来る。この先も長い登りが待っている。登って行くと所々に頂上然としたコブがあってこれにいつも騙されながら登る。シャクナゲの待つ頂上に立つと東に足尾の山々を眺め西には三等三角点の背景に男体山が聳える。


この山の圧巻と言えば下山時。男体山と中禅寺湖の共演を十分に楽しめる。視線の正面にクルマを置いた歌ケ浜を通り紅葉の名所の八丁出島から半月山。逆に男体山方向から更に目を送れば太郎山から日光白根山、手前に戦場ヶ原が広がり白く光りながら湯滝や竜頭の頭の流れが見え奥日光の名所を欲張る景観だ。欲張りな景観を楽しみながら下山の足も軽い。帰りはイタリア大使館跡辺りでのんびりしようか、、、