──庶民の声
十一日には天子様が「けんぷ(絹布)のはっぴ(法被)を下さるのだ…」
&『東京朝日新聞』明治二十二年二月七日
社説
当日付によると、明治憲法の発布を「裏店住居のワカラズヤ」共が天皇が絹布の法被を下賜されると勘違いして騒いでいる、と前騒動を伝えている。欽定憲法は明治二十二年二月十一日紀元節の日に発布、同時に衆議院議員選挙法も公布され、翌二十三年七月一日に第一回の総選挙が行われた。
新聞言うところのワカラズヤ庶民には、憲法とか選挙といった新語の意味がチンプンカンプンである。裏店連中どころか、政府の顧問官という地位にある者ですら「マグナカルタとは如何なる歌牌であるか」と問う始末であったという。社説もうんざり気味に、
唯夫れ憲法の事之を詳く説かんには中々一日や二日の社説にて済むべき事に非ず今は唯最もアラメなるところを述べて世の尚ほ知らざる熊八連に告るのみ其詳しき事を知らんと欲ば請ふ十一日以後の東京朝日新聞を読め
と、ピシャリ締めくくっている。
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