その夜、私とケイタは電話をした。

ケイタは言った。

周りに言うのは、

SHI-YOが今までしてきたことやで。

俺の知らない人にも。

SHI-YOはいつも自分の言いたいことだけ言う。

自分にも周りにも嘘をついて生きたくない。

それを言われたら何も言えない。

旦那に負けたんじゃない。

SHI-YOの道に負けただけ。

好きだよ。SHI-YOのそういうとこ。

笑った顔も笑ってる声も。

独り占めしたいと思うことがあかんのやな。





私はコトバがなかった。

そう。私はこの関係になってから、

不倫の事実を周りから知られたくないと、

自分にはこんなところもあることを

知ってほしい。と、

大事な友だちには話してきた。

さぞ、それが正義のように。

そして、それをケイタにも話していた。

ケイタはいつも笑っていたが、

2人の秘め事を自分勝手にあけすけにすること

そして、それを正義と思っている私のことを

受け入れ見守ってくれてたんだと思った。







その次の日、私たちは

お互いに日中がフリーだった。

私もケイタの仕事前の、貴重な時間。

ケイタは、電話の最後に、

「明日会いたい。会えないなら一生さよなら。」

そんなことばを言ったような気がする。






私は迷った。

会ったら同じのことの繰り返し。

ただ、

ケイタに悲しい思いをさせたくない。

この恋を嘘だと思われたくない。

お互いに納得して別れたい。

そう自分を言い聞かせて、

私は翌日車を走らせていた。

何度も待ち合わせたあの場所へ。






そのとき、全てを知る友だちからの電話。

私はスピーカーにして電話にでた。

「どこ向かってるの?」

彼女は私にそう聞いた。

一瞬、迷ったが私は正直に話した。

しばしの沈黙。

その後、

普段の彼女からは想像もできない剣幕で

彼女は言った。

「それ、○○くん(旦那)は知ってるん?」

「行くんなら○○くんに言ってから行ったら!」

「奥さんの気持ちを考えて申し訳なくて、泣いたって言ったやんな!それは嘘?!」

「SHI-YOは甘いよ!」

「今すぐ引き返して!!!」

彼女がここまで怒る理由を私はよく知ってる。

彼女は数年前に旦那の不倫で悩んで、

悩んで悩んで悩んで、

その末に勇気を出して離婚を選び

自分の道を歩き始めた人。

彼女はそれでも、私が恋をしたと言ったとき、

その姿に勇気をもらえると言って、

それからも私を見守り続けてくれた。

その彼女が怒っているのは、

不倫を責めてるわけじゃない。

私がケイタに振り回されて、

自分を見失っているから。

この先、不倫関係を続けたところで、

私が心から笑うことはできないと思うから。

彼女の私を罵倒する涙声を聞いて、

私の目からも涙が溢れた。

だけど、ケイタに向かう車のエンジンを

私は止めることはできなかった。






「SHI-YOがケイタくんのこと好きなんて

あっちもわかってるって!」

彼女が言ったこのことばに、

私はまた涙が溢れた。

わかってる。そう、わかってる。

2人でいた時間のお互いの好きは嘘がなくて、

納得して別れるなんていうのは

到底無理なこと。






「少し会ったら、すぐに帰る」

私は彼女にそう伝え、

嗚咽がでるほど泣きながら

ケイタの待つ場所に向かった。





そして、ケイタの車に乗り込むなり、

「ごめん、帰る。」

そして、「一緒にいたかった!」

そう言ってケイタを抱きしめ、

ワンワン泣いた。







ケイタは、困った顔して

「じゃあこんなとこまで来なくて良かったやん」

「無理矢理ホテルいこか」

そう言いながら、

私を抱きしめ返した。

そして、車は発進しないまま、





ケイタと私は別々の家路についた。