大人になると、日常の中で新しい出来事に驚くことが少なくなってくる。
仕事をして、誰かと食事をして、たまにはお酒を飲んで帰る。
そんな毎日の繰り返し。
もちろん、それが悪いわけではない。
むしろ、何事もなく一日が終わることのありがたさも、この歳になるとよく分かる。
でも、何でもないと思っていた一日が、後になって妙に心に残ることがある。
お酒を飲みながら、いつものように他愛もない話をしていた。
特別な話をしたわけでもなく、ただ笑って、くだらないことで盛り上がって。
気づけば、いつもより少し遅い時間になっていた。
帰り道も、話は途切れなかった。
のんびり歩いていると、ふと手が触れた。
最初は偶然だと思った。
でも、次に触れたとき、その手は離れなかった。
気がつけば、自然と手をつないで歩いていた。
何か特別な言葉があったわけでもない。
それまでと同じように話しながら歩いていた。
ただ、それだけの出来事だ。
映画のような展開があったわけでもなければ、何かが大きく変わったわけでもない。
そんな何気ない時間が、思いのほか印象に残った。
なぜなのかと考えても、特別な答えがあるわけではない。
しばらくして思った。
大人になると、何かが起きたことよりも、そのとき自分がどう感じたかの方が、記憶に残るのかもしれない。
若い頃なら、もっと大きな出来事を期待していた気もする。
でも今は、こういう何でもない時間も悪くないと思える。
人生には、ほんの些細な出来事なのに、なぜか忘れられない瞬間がある。
そして、そんな何気ない話が、思いがけず誰かの心に残ることもある。
主人公は、先日一緒に飲んだ友人です。
あまりにも楽しそうに語るものだから、つい自分のことのように書いてしまいました。
人の話なのに、なぜか自分まで楽しくなった夜でした。