先週、党に続いて政府のエネルギー政策に一定の方向が示されました。

私自身も東電PT、エネルギー環境調査会、政府のエネルギー環境会議の役員、構成員として、議論に参画して参りました。

まず私自身、原子力への依存度を軽減していく大方針、これは必要なことであると同時に、やむを得ない道筋だと考えております。特に未だ多くの避難生活を余儀なくされている方々の存在、除染を含めて福島の再生への道筋が十分に描けていない状況の中にあっては当然の方向性だと思います。

そして、原子力依存度を軽減していく方向感の中には、当然原発ゼロを含めて考えるべきであり、政治的大方針として必要な方向感だと思います。

ただ、今回の党・政府の2030年代での原発ゼロに向けた取り組みは、節電、再生可能エネルギー、新技術の開発など様々な取組を組み合わせるとしても、現実味があるのかというご批判を含めて、相当高いハードルであることは間違いありません。

また、六ヶ所村の再処理工程などとの整合性もこれから厳しく問われることになると思います。しかし、今回、いずれにしても、特に政治的意思表示として、やはり原発依存度を低減させていく、それには原発ゼロの社会が含まれる、むしろそれを目指す、その大方針を是とすべきだと思います。

一方、当面の原子力発電の再稼働については、やはり容認せざるを得ないというのが私の立場です。福島での事故以降、非常用電源、防水工事、冷却水の備蓄などを含め相当程度安全対策が強化されました。

今現在、大半の原発が停止している中で、電気の使用にそこまで大きな不自由を感じずにいられるのも、年間3兆円前後の石油の買い増しと、古くなった火力発電設備をフル稼働させていることに大きく依存しています。

CO2排出の問題はもとよりですが、それ以上に深刻なのは、これが国際収支に及ぼす影響です。この石油の買い増しによって、日本は30年ぶりに貿易赤字に転落しています。経常収支まで赤字に転落すれば、これはすなわち毎年、国内に富を蓄積してきた構造から、毎年、国富が海外に流出する構造へと根本的に変わることを意味しています。

こうなれば国内に長年にわたって蓄積された貯蓄は目減りし、ひいては国債の引受先も現在は9割以上を国内でまかなっている構造に無理を来たすことにもつながります。

こうした経済、財政、国際収支の動向から見ても、この石油を大幅に買い増ししている状況は早期にあらためなければなりません。

いずれにしてもエネルギー問題は国の根幹に関わる問題であり、特に日本のように資源のない国にとっては様々な意味で死活問題です。

短期的のみならず長期、超長期に渡って熟考せねばなりません。しかも、エネルギー単体はもとより、環境面、安全面、貿易、国債収支、財政構造など複合的・総合的に思慮してこその問題です。

同時に、現在の決断を大切にしつつ、新技術、新エネ開発、節電の取り組み、国際情勢等をみつつ、やはり、5年、10年、月日を追って不断の見直し、再検証が必要な課題でもあります。