前稿で ピンク・フロイド の話題を取り上げたので、ついでにもう一本。

前稿で書いた通り、シド・バレット がバンドから抜けた後は ロジャー・ウォーターズと デビッド・ギルモア が中心となって活動し、ロック史に残るビッグバンドへと大ブレイクしました。

デビッド・ギルモア、ロジャー・ウォーターズ

しかし、80年代に入ると二人の仲は険悪になり、ロジャー・ウォーターズ はバンドを離れ、ソロ活動に入りました。ピンク・フロイド は デビッド・ギルモア を中心に活動を継続させました。

フロイドには数々の名曲がありますが、それらはほぼ全て ロジャー・ウォーターズ が作っていました。彼は内心「自分が抜けたら、フロイドはもう曲を作れない」をタカをくくっていたのだ思います。自分一人で、再び名曲を作っていく自信もあったでしょう。

結果的に、ロジャーが抜けた後のフロイドの新譜は凡庸なものばかりとなりました。しかし、ギルモア達は過去の名曲をド派手なライト＆映像でショーアップしたライブをビッグ・スタジアムで行うスタイルを確立し、世界中をツアーで周ったことによって ピンク・フロイド は更なる人気を獲得し、ロック界で不動の地位を築きました。

一方のロジャーはフロイド時代のような名曲を生み出すことはできず、相対的に影が薄くなって行きました。自分のソロコンサートでもフロイドの曲を演りましたが、あまり話題にもなりませんでした。「アイツら、オレが作った曲で荒稼ぎしやがって！」と憤懣やる方なかっただろうと思います。

ギルモアには創造的能力はありませんでしたが、演奏力（ギルモアはギタリストとして、実力のわりには世間の評価があまり高くない）や演出力には長けていたのです。

今でも二人は犬猿の仲と言われていて、その最大の理由はロジャーが「ギルモアには創造力がない」と評価しないからと聞いています。人間、本当の事を言われるとキレます。ギルモアはロジャーを毛嫌いしているそうです。

ピンク・フロイドは1971、1972、1988年の３回来日公演を行っています。私は 1988年の公演を武道館で観ました。この時は既にロジャーは抜けていて、ギルモア・フロイドでした。

ピンク・フロイドは世界でも指折りのロックバンドですが、日本での人気はイマイチなので、巨額の経費をかけた公演を日本でやっても採算がとれないのでしょう。その後、今に至るまで来日公演はありません。恐らく、このまま1988年の公演が最後となって終わるでしょう。

つまり、私は完全形のピンク・フロイドを一度も観ることができませんでした。

残念無念・・・

せめて、 ロジャー・ウォーターズ 単独公演を観たかったのですが、それも実現しませんでした。数年前に始まったロジャーの The Wall 再現コンサートは観てみたかったなあ・・・

（The Wall はピンク・フロイドが1979年にリリースしたメガヒットアルバム。ロジャーの少年時代からの葛藤、ファザコン、ロックスターとしての栄光～孤独・疎外感から自壊していくストーリーが展開されるロックオペラ的なアルバム）

そもそも、ロジャー抜きのフロイドが The Wall の曲を演奏するなんて奇妙なのですが、ギルモア達は平気で演奏し続けてきました。ロジャーはそれを苦々しく思い、「これが本物の The Wall だ！」という想いをこめて創り上げたコンサートなのでしょう。私は Youtube で観ましたが、1979年当時はできなかった演出によって華やかにショーアップされ、見応え十分な内容に仕上がっていました。

シド・バレットが創って世に出て、ロジャー・ウォーターズが作った曲で大ブレイクし、デビッド・ギルモアが演奏してロック史に残るバンドになったピンク・フロイド。複雑性や偶然性といった人知を超える力も作用してのサクセス・ストーリーでした（悲劇もあった）。

↓1982年に制作された映画「The Wall」の一部

　Another Brick in the Wall はビルボートシングルチャートで１位になった

　ピンク・フロイド唯一の曲。教師に虐待される小学生が反抗する内容

"All in all you're just another brick in the wall."

（結局、君は壁を作るレンガの一つにすぎない）

↓2018年に行われたロジャー・ウォーターズの「The Wall」再現ライブ

　「こちらが本家！」というプライドを感じる

　36年前の映像では子供達は全員白人だったけど、今や多人種で構成

　子供達に”RESIST” Tシャツを着させる等、ショーアップしている

↓ギルモア達によるピンク・フロイドの Another Brick in the Wall

↓オマケ　どこかの素人のお姉さんのギターカバー

　　　　　（ツェッペリンＴシャツを着ているのが謎（笑））