寒い冬には詩がいい
~ その1『冬が来た』~
つい先日、日本の中学生たちにとっても“他人事”では済まされない驚きのニュースが南半球
から届いた。今月10日に世界で初めて施行されたオーストラリアの『16歳未満のSNS利用禁止法』である
Instagram、Facebook、X、YouTube、TikTokなどの主要な10のソーシャルメディアプラットフォームが規制対象となったことは皆さんもすでにご存じだろう
。
「中毒性のある仕組み」「有害なコンテンツ」「ネットいじめ」「未成年を狙う犯罪」などから子どもを守るのが主たる狙いで、同国の世論調査によると保護者![]()
の間では高く支持されているという。EU(欧州連合)議会でも先月、16歳未満の子どもを対象に保護者の許可なくSNSを利用しないよう制限を求める決議案が可決されたばかりで、今後の動向を世界中が注目
している
。
では日本では今後どうなるのか。
ビクビクしているボクの教え子のキミのために、そして日本中の中学生のために、日本でもSNS禁止法が施行されないように、今日はとっておきのアドバイスを授けよう
。
このブログを読んで『詩』を学びなさい。
そして自分の親に「ケータイでゲームやYouTubeばかりやってると思ったら大間違い! ちゃんと『詩』の勉強をしながら想像力を働かせているんだよ!」とアピールしなさい。
そうすれば、“青少年SNS禁止法施行反対同盟”の会長として、ボクがキミたちを必ず守ってあげるからさ
。
と威勢よく言ったところで、さて、誰のどんな詩を中・高生たちに紹介すべきなのかしばらく悩んでいた。コーヒー
を淹(い)れたあとも「ボクが中学の時に教科書で学んだ詩と言えば、高村光太郎の『道程』だったな」などと考えながら、「でも『道程』はあまりにも有名だし、光太郎の別の詩がいいなァ」と、さらに30分ほど悩んだ
。
昭和55年当時の教科書(光村図書)
手をつけられなかったコーヒーもすっかり冷めてしまった頃、ボクはふと思い出した。
「そうだ、あれがいいぞ! ボクもあの詩に久しぶりに会いたいし。うん、そうしよう‼」
こうして、自室の本棚の上から2番目の棚の、ちょうど真ん中辺りに並んでいる少しホコリをかぶった1冊の詩集にボクは手を伸ばした
。
会いたかったのは『冬が来た』という詩。
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『冬が来た』
高村光太郎
きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹(いちょう)の木も箒(ほうき)になった
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
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実はこの『冬が来た』もかなり世の中には知られた詩であって、地域によっては小学校の国語でも扱うところがある。もしかすると、ボクの教え子たちの中にも「あ、それ小学校でやった」という子がいるかもしれないし、初めて読む子も少なくないかもしれない
。
いずれにしても、この詩を読んで何も感じない人はいないだろう。いるわけがない。
書き出しの「きっぱり」からして、すでに強烈。冬の話だというのに、熱い。文学者のみならず、多くの読み手が「寒く厳しい冬に真正面から対峙する勇気、凜々しく力強く潔い姿勢を感じる」と褒め称えている。
付け加えておくと、ボクが『高村光太郎』『冬が来た』をキーワードに検索をかけたら、昭和女子大学の公式ホームページ内の日本語日本文学科の記事(2017年1月31日付)にヒットした。題名は『受験生の皆さんへ』となっている。そこでも『冬が来た』の詩が紹介されたあと、次のような文面が掲載されていた。
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光太郎には冬の詩がたくさんあって「冬の詩人」と呼ばれています。この詩は、人に嫌がられ、草木に背かれ、虫類にも逃げられる、刃物のような厳しい冬こそ大歓迎だと歌っています。つまり、この「冬」は季節であると同時に、人生における厳しい試練という意味でしょう。その試練をしっかりと受け止めて、その厳しさに負けずに立ち向かっていこうとする力強い詩です。
今、受験シーズン真っ盛り。皆さんの姿が目に浮かびます。今まで一心不乱に勉強してきた成果を挙げる時がきました。厳しさに負けず、まっすぐに胸を張って立ち向かってください。皆さんの力が充分に発揮されることをお祈りしています。
(原文ママ)
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では、中・高生たち、受験生たちに、もう一度同じ質問をしよう
。
この詩を読んで何を感じたかい?
もっと 詩 を読みなさい。
光太郎 に触れなさい。
自然 に目を向けなさい。
想像力 を高めなさい。
SNS と 携帯電話 は
上手に正しく使いなさい。
これらのことができるなら
親 も 日本政府 も
だれも文句は言わないよ!
















