突然ですが『漢字の読み方テスト』

です。全5問。さて、読めるかな?

 

(1)推敲  (2)杞憂

(3)杜撰  (4)守株

(5)蛇足

 

 なぜこんな問題から始めたのかというと…。

 先日、現役の国語科教師で都内の某・高校で教鞭を執っている友人・K助と久しぶりに待ち合わせて、虎ノ門の中華料理店で舌鼓を打ったボク。食後、「まだ時間があるから、ちょっと一杯カクテル引っかけていくか」となって立ち寄ったジャズ・バーでのことキョロキョロ

 

 

 お互いに教育界に身を置いているため、やがて話題は高校受験のことになった鉛筆

K助は今年も入試問題作成の担当者の1人なんだってね。一体、どんな問題を出すつもりなんだい?」と、まさか漏らすことはないだろうと冗談半分でボクがたずねると、ちょうど酔いが回り始めていつも以上に饒舌になっていたK助が、怒ったような口調でこう答えた。

“故事成語” を出しますよ。読み方とか意味とかね。困ったことに、今どきの高校生たちは “故事成語” とか “ことわざ” だとか、全然わかっちゃいないんでね。語彙力が著しく低下してる。ヒドいもんです。このままじゃ、近い将来、日本の国語は崩壊してしまうぞムキー

 

 随分 前置きが長くなってしまったが、これが皆さんにもテストを仕掛けた理由学校によって異なるけれど、ボクの知る中学校では、先日の授業で1年生たちが “故事成語” を学んだばかりだから、彼らなら全問正解かな⁉

 ではここで答え合わせ。

(1)すいこう「詩や作文を練り直すこと」

(2)きゆう  「心配する必要のないことに気にかけること」

(3)ずさん     「いいかげんなこと」

(4)しゅしゅ 「古い習慣にこだわると時代に適応できないこと」

(5)だそく     「余計なつけ足し」

問中問正解なら合格あなた ???

 

 

 さてこの時期はどの中学校でも『三者面談』が行なわれている。そして特に3年生たちは、この面談を通して私立高校の “受験校” を決定することになる。

 学級担任に「推薦願」「併願優遇願」を提出し、私立高校独自の書式による調査書があればそれを担任に渡して記入・準備を依頼する。2学期の期末試験が「受験のヤマ場の第1段階」だとすると、この面談「第2段階」迷いに迷った末に、最終決定をしないといけないのだびっくり

 

 「自分の進路選択(受験校の決定)については最終的に受験生自身の意思を尊重して決めるべき」というのがボクの持論。あまり周囲の人たちが「あそこを受けろ、こっちにしろ」と干渉すべきではない。

 ただし、受験生本人も独りよがりになって「一人で勝手に決める!」というのもちょっと違うキョロキョロ

 “自分のことは自分が一番よくわかっている” と思うのは実はそうでないケースもあって、周りからの指摘によって自分の良いところや足りないところに気づく場合もある。『経験者の意見』も参考にしながら、最終的には自分で決めるという姿勢で、大事な決断をしてほしいウインク

 

 そんな願いを込めて進路担当だったボクが書いた1年前の『学年通信』がこれ飛び出すハート

 ご覧のとおり、『学年通信』では朝日新聞に掲載されている『天声人語』も紹介した。“名文”に触れながら、いざ自分が作文(小論文)を書くときの参考にしてもらいたいと意図したものであるニコニコ

 文章を書く際、『書き出し』と『終わりの文』の良し悪しで、読み手に与える印象が大きく変わるし、印象に残るか残らないかの分け目となることを、推薦受験を考えている3年生たちは意識して臨んでほしいなァ鉛筆

 

 

 今回のブログ珍しく『故事成語』で始めたものだから、最後もそれで締めようと思う。

 

 受験生のキミに告ぐ。

 入試での「小論文」や「作文」、書き終えたらしっかり推敲しなさいよ。今のうちから「もうヤダ! 作文苦手だし、無理!」などと心配するのは杞憂でしかないさ。きっとうまくいく。

 杜撰な試験勉強をしていた人なら仕方ないけれど、キミの勉強方法は守株でなく、他の人が真似できないような斬新で効率的なやり方で頑張ってきたのだから。

 あ、ゴメンゴメン。ボクなんかに言われなくとも、キミは自分で自分の道を切り拓ける人間だから大丈夫だね。

 

 どうやら最後のこの文章は、蛇足だったようだな…。

日本中の   たち、

12月 がってきた

 

 タンクの中には満タンに近い燃料が入っているのになかなかエンジンが掛からなかったキミ目も、「そろそろベンキョーしないとマズいかな⁉」とようやくイグニッション・キーを回して(あ、今の時代はスタートボタンを押すんだよね⁉)エンジン始動…となる時期がきた!

 ん?キョロキョロ あれ?びっくり たった今、ボクの耳元で「センセー、去年、うちの子はエンジンが掛かったことなんて一度もありませんでした💦」という懐かしい保護者の声が聞こえたような…。気のせいだろうか、それとも…!?てへぺろ

 

 

 まずはちょうど1年前のこの時期に発行した『学年通信』をご覧いただきたい。

 発行日は令和6年12月2日の月曜日。

 その前週の木曜日の午後10時過ぎに仕事を終えて職員玄関から外に出たときに見上げた夜空の写真星空を大きく載せた。記事の内容は、そんな時間まで残って3学年の教員たちだけで行なった進路会議(=我々の業界ではこれを “査定会” と呼んでいる)についてである。

 

 久しぶりに読み返して見ると、「そうかー、去年は “査定会” の翌日、つまり11月29日の金曜日に3年生たちに “仮内申” を伝えたんだったなー」と懐かしく思い出すニコニコ

 

 文中に『3種類の数字』として生徒たちに伝えられた」とあるが、これは 1⃣ 英数国3科目の評定の合計、2⃣ 英数国理社5科目の評定の合計、3⃣ 全9教科の評定の合計、のこと。評定がオール3の生徒には「3科9、5科15、9科27」という数字だけが学級担任から口頭で告知され、生徒たちはそれを生徒手帳や頭の中にメモをするのが通例。この数字が出されてようやく、受験校決定に至るのであるおねがい

 

 例えば、“推薦基準”「英数国3科合計で10以上、または、英数国理社5科合計で16以上」“併願基準”「英数国3科合計で12以上、かつ、英数国理社5科合計で18以上」といった具合に、各学校独自の条件が設定されているので、3年生たちは発表された “仮内申” とこれらの基準数値とを照合した上で受験校を決定しなければならないびっくり

  

 

 

 東京の高校受験制度に詳しくない方のために簡単に説明しておこう鉛筆

 私立高校を受験(出願)する場合、大きく分けて3種類の入試制度がある。【一般入試】【推薦入試】【併願優遇入試】の3つ。

 【一般入試】は言うまでもなく、通常の筆記試験を受けて得点上位者から順に合格者を選抜するもので、内申点(調査書点)は選考材料の対象ではない。

 

 【推薦入試】【併願優遇入試】にはそれぞれの私立高校が独自に “推薦基準”、“併願基準” を設定し、この基準を満たしていないと受験生の願書は受理してもらえないしくみになっている。

 【推薦入試】はその学校への進学を第一志望にしているもので、“推薦基準” を満たせば、筆記試験の代わりに面接と作文(小論文)を受けて合格に至る。

 一方、【併願優遇入試】とは「第一志望である他の学校に合格できなかった場合、第二志望としてこの学校に入学する」を条件に、一般受験者よりも優遇して合格を確約する制度。ただし、一般入試日に筆記試験は受けるのが一般的である。

 実は現在のボクは、フルタイムではないけれど、2つの異なる中学校で生徒たちと関わる仕事に就いている。そのうちの1つの学校でも、先週の水曜日(11月26日)に3年生たちに “仮内申” が伝えられた!

 この学校では終学活後に生徒一人一人を教室前の廊下に呼んで、普段より緊張した面持ちの担任が数字を伝え、すでに心の中は緊張から覚悟に変わっている生徒が真剣な表情でそれに聞き入ったアセアセ

 ボクは廊下の一番奥からその様子を見守っていた。例年、何人かの生徒は、期待していた“仮内申”に達していなかったり、1学期の内申点よりも下がった数字を伝えられたりで、動揺を隠せずに感情を抑えきれないこともあるため、そんなときは真っ先に声を掛けにいこうと準備していたのだキョロキョロ

 

 

 ところが今回は、ボクが活躍する場面はなかった。取り乱すような生徒は一人も現れず、皆がしっかりと現実を受け入れていたびっくり

 もちろん、ニコニコしながら教室に戻っていく子もいる一方で、左手で後頭部をさすりながら唇を噛みしめている子もいた。そんな子に対してボクができるのは、ドラえもんでもハリー・ポッターでもハクション大魔王でもないボクだからキミの内申点を書き換えることができなくてゴメン。でも、キミ自身がしっかり準備して蓄えた力を入試本番で発揮できるよう祈っておくからね。くれぐれも体調管理に気をつけるんだよ」と、心の中で静かに願うことだった。

 

 

 少しずつ 街の風も

冷たくなってきたから

風邪を ひきやすい

あなたの事が気になります

 

 毎年この時期、英語の単元が終わってひと区切りついたタイミングで、ボクは教室にギターを持ち込み、“ゆず” が歌うこの名曲を弾き語りするのが常だったカラオケ🎸。

「インフルエンザも流行るこの時期、キミたちの健康を祈って心を込めて歌うぞー、しっかり聴いてちょーだいねー」

 そんな恩着せがましい言葉を発したあとに、“ギターの弾き語り” という名の騒音公害を生徒たちに浴びせる暴挙は、ドラえもんにはなれない代わりにジャイアンを演じさせたらアカデミー賞確実のボクの得意技であるてへぺろ

 

 

 英語教師を引退してしまった今年は、恒例の “おがジャイアン独演会” を教室で開催することが叶わないから、この場を借りて、お届けさせてもらえれば…とキョロキョロ

 カワイイ教え子の皆さん、長らくお待たせしちゃってゴメンナサイ。懐かしいでしょう? ウレシイでしょう? ん? なんだかザワついているね。どうかしたかなびっくり⁉  

 あ、そこのキミ、耳栓は外すように。一番後ろの席のキミは、逃走しようなんて考えてないだろねえー

 じゃ始めよう。ワン、ツー、スリー、GO!

 

 

ううっ、やっぱりボクの歌声

ジャイアンみたいなものだなァ 

でもね・・・

 

♬  不安を抱き  悲しみに打たれ

信じる事に挫けそうになっても

あなたを想い  歌い続けてゆく

 

っていう気持ちは…本当なんだ

 ここのところ

中学校進路指導主任 の 視点 

期末試験  ESAT-J のことを

中心にして書いてきた鉛筆から 

今どきの高校の授業って

どんな感じなのだろう?

できれば見学したいな!

と 急に 思いついて電球 あちこち

高校 学校 の ホームページを開いて

学校見学会👀や 授業公開 👀

 参加可能なのか 調べてみた

 

 

 ところが既に終了していたり、開催前であっても「受験生本人とその保護者に限る」との条件付きだったり、なかなか見つからないえーんそれでも20校ほど探した末、予約不要見学者の制限もなくボクの予定が空いている日と合致する学校を発見した。よし、ここへ行こうウインクランニング。それが・・・

 創立88年目の 都立 西 高等学校 だ。

学校HPより: https://www.metro.ed.jp/nishi-h/ 


 都立高校の中で7校ある *進学指導重点校 の1つ。カリキュラム/進路指導ともに実にユニークで、今春の大学合格実績は東京大学に19名、京都大学に20名という都内でも有数の進学校である。この数字だけを見ても、生徒と教員の双方が高い目的意識をもって日々の活動に臨んでいるとの評判が、単なる噂や見掛け倒しではないことを証明している

*日比谷・西・国立・戸山・青山・立川・八王子東

 

 電車の最寄り駅は京王・井の頭線の久我山。そこから北東の方向へ歩いていくと10分少々で校舎にたどり着くあしあと

 道順を調べる際は、どの高校の場合も ホームページ のメニュー欄をタップして「アクセス」を選ぶと、地図や Google Map が示されるのが一般的。

 ところが西高のホームページには、おそらく美術部あたりの生徒による手描きのエリアマップも貼り付けられていた。しかも丁寧でわかりやすい、プロ級の腕前のもの飛び出すハート

(案の定、来校者配布用の「令和8年度入学生用スクールガイド」には、72期生Yさんの作品であると明記されていた)

「豊かな人間性の育成」や「自主・自律の精神の養成」を教育目標に掲げる学校はかなりの数にのぼる中、西高ではそれが理想だけでなく実践されていることが、こんなところからも伝わってくるニコニコ

 

イチョウ イチョウ イチョウ

 

 さて、Yさんのおかげで無事に校舎にたどり着いたボク。腕時計に目をやると、2本の針のうちの長いほうは「12」の数字の上に見事に重なり、短いほうも「11」の数字のド真ん中を指していた。

 11時ジャスト。いいぞ、3時間目の「情報Ⅰ」とその次の「論理・表現Ⅰ」(英語)を予定どおりに参観できる爆  笑

 

 これら2つの科目に狙いを定めた理由は2つ。

 英語はボクの専門教科。苦手とされているアウトプットの力をどう鍛えているのか見聞したかったから

 未来のデジタル社会を担う若者たちに、情報技術データ活用をどう教えているのか確認したかったから

 英語情報ヒト・モノ・カネのボーダーレス化がますます進む現代社会を生きていく若者たちにとって必要不可欠なツールこそ、英語情報なのだニコニコ

 

 ボクが教えてきた中学校からは例年1~3名ほどの生徒が西高に進学し、昨年度の卒業生のうち1名【仮名:S子】もお世話になっている。S子の学級担任だったボクは彼女英語も教えたし、進路指導もしたし、バドミントンも助言したし、時間内に給食を食べ終える方法も伝えたし、上履きを忘れてスリッパを用意したことさえ幾度もあったえー

 

 

 中学を卒業して8ヶ月、そんな教え子がどんな高校生に成長しているのか知りたくて、彼女の教室も覗いておきたいと考えていた。そうしたら偶然にも、3時間目の「情報Ⅰ」も次の「論理・表現Ⅰ」S子のクラスの授業だった!

 まさかこんな悪戯が仕組まれていたなんて。 英語の神さまの仕業なのかなてへぺろ

 

紅葉 紅葉 紅葉

 

 「情報Ⅰ」の授業はPC室で行なわれていた。

 ボクが室内に入ったとき、生徒たちはすでにパソコンPCの表計算ソフトに必要データを打ち込み終えて、先生の話に耳を傾けているところだった。

 単元「データサイエンスと問題解決」で、この日のテーマ『回帰分析』。先生からは「10000個のデータを excel を用いながら回帰分析し、決定係数を基に考察して自分の意見を述べる」との課題が示されていた。

 

 ボクには全く意味不明の内容。それなのに、高校生たちは黙々と作業を進め、疑問が出てきたらすぐに先生を呼んで問題解決を図ろうと努めた

 S子も隣の席の生徒と協力しながらキーボードに新たなデータを打ち込んでいた。すぐにボクの存在に気がついたものの、動揺するような素振りも見せず、再びパソコンと “にらめっこ” を続けた。

 机間巡視の途中でボクの近くまでやってきた先生にひと声掛けてから、ボクはS子の席に近づいていった。

ボク「よっ、授業を観に来たよ」

S子「うっ、あ、ありがとうございます」

ボク「難しいことやってるねェ」

S子「毎日、しがみつくだけで大変です」

 凄いなァ。時代は変わったなァ。回帰分析? 決定係数??ぇ~んじぇんついていけましぇ~ん、ボク・・・えーんアセアセ

 ということで「情報Ⅰ」の話はこれにて終了びっくり

 

PC PC PC

 

 さて、次はいよいよ英語。ワクワク・・・。

 

 授業の場所は “会議室”。本来の自分たちの教室とこの会議室を併用しながら、「1クラス2展開」の少人数授業を行なっているようだ。始業を告げるチャイムが鳴ったことを確認してからボクは室内に入っていったあし

 

 ホワイトボードの前に立っていたのは女性の外国人講師が1人だけだった。生徒たちは長テーブルをはさんで5人ずつが向かい合って座り、それが2列合計20人。ボクは生徒たちからは距離を保って、後方の席についた。

 

 ネイティブの先生は、ナチュラルスピードの英語で生徒に簡単に挨拶をした。発音と抑揚の様子から察するに、おそらく“Europe Origin(欧州出身者)” ではなかろうか。

 やがて彼女の視線がボクに一瞬向けられたとき、あることに気がついた。

「おやっ、“ノーランズ” に似てるなァ・・・

 ボクが中学3年生だった1980年にイギリスをはじめ欧州でで大ヒットし、日本でもオリコン洋楽シングルチャート年間1位に輝いた名曲『ダンシング・シスター』で一躍人気となったのが “ノーランズ”そのボーカルをつとめたバーニー・ノーランBernie Nolan)瓜二つだったのだびっくり

 

 えーと、話を授業に戻そう。もちろんバーニーは日本語を一切話さない。完全な “All English” の授業である。

 長机の右側に座る生徒には、対峙する生徒には、つまり記載内容の異なる紙片を1枚ずつ配ったバーニーは、ホワイトボードに次のように書き終えるとゆっくりとした口調で説明を始めた。

【※ 大きなホワイトボードに書いたのはこれだけ

 

=== 説 明 ===

 あなたは紙片に書かれた内容に従って、自分の意見とその理由を述べます【=1】。次に相手が反論します【=2】。それに対してあなたが再反論を行ないます【=3】。以上で4分。

 今度は攻守交代。相手が意見と理由を述べ【=1】あなたが反論します【=2】。最後は相手の再反論【=3】。4分。

 この8分間が1セットで、ディベートの相手を変えて3セットやるのが今日の取組です。これから配るワークシートにお互いの主張・持論を記録してくださいメモ

=== 終 了 ===

 

 参考として、バーニーが配った紙片の記載内容はこれ下矢印※実際には日本語訳はありません

 

 AFFIRMATIVE OPINION 

I agree that Japan needs to regulate fishing more because regulations will reduce bycatch and protect ocean animals.

肯定的意見:日本は漁業規制を強化すべきという意見に賛成です。規制は混獲を減らし、海洋生物の保護につながるからです】

 

 NEGATIVE OPINION

I disagree that Japan needs to regulate fishing more because more regulations will reduce fishermen’s income and jobs.

否定的意見:日本は漁業規制を強化すべきとの意見に反対です。規制の強化は漁師たちの収入と雇用の減少につながるからです】

 

 どうですか。この意見の裏側にある環境問題の知識が必要であるばかりでなく、それを英語で考え相手の反論を予測し、論破する方法まで思案しなくてはならない。極めて高度な技術が求められる課題なのだびっくり

 “4分×2名×3セット=24分” という時間は瞬く間に過ぎていった。会話力・表現力・交渉力それぞれの力量に個人差はあったものの、防戦一方の生徒は誰もいなかった。 

「ガンバッてるな、高校生!」

 ボクは思わず、心の中で大声を発した。

 

 相手の目をしっかりと見ながら立派に主張していたS子の姿勢も素晴らしかった。1年前はしょっちゅう上履きを忘れていた子が、よくぞここまで成長したものだ。

 そんなS子の横顔を見ていて、ハンカチを持っていなかったボクは、溢れ出るあせる鼻水汗を仕方なく上着スーツの袖口でぬぐい続けないといけなかったから、授業終了直前のボクのジャケットの両袖はもうグショグショ状態に・・・えーん

 バーニーS子たちに気付かれぬよう、ボクの席の背後のカーテンに手を伸ばしてあせる汗をこっそりなすり付けている最中に終了のチャイムが鳴ったキョロキョロ

 

地球 地球 地球

 

 S子50分しかない昼食&休憩時間ゆっくり過ごすこともなく、白衣に袖を通しながら廊下を駆け抜けて化学実験室に飛び込むと、他の生徒たちも加わって、前回の授業でやり残した実験の続きに精を出したサーチ

 おいおい、高校生って昼休みがないんかい⁉

 その後、ようやく10分間だけ時間を作ってくれたS子は、ボクを中庭のベンチへと連れ出した。

 

S子「今日はわざわざありがとうございました」

ボク「たまたま時間調整がうまくいったのさ」

S子「いきなり来たんでビックリです」

ボク「事前に言ったら『イヤだ~絶対来ないで~”』ってなるのはわかってるからね」

S子「間違いなく言ってましたね」

ボク「それな」

S子「そう言っても来ちゃうのが、オガT」

ボク「それな」

S子「うちの学校、制服ないじゃないですか」

ボク「知ってるよ。あなたのクラスも3~4人だけ、“なんちゃって制服” の子がいたね」

S子「私も今日、制服の格好をしてるんですけど、この上着は中学校の制服なんですよ、ほら

ボク「ホントだ、●中のエンブレムじゃん」

S子「この上着を着てきたのは今日が初めてなんですよ。そんなときにオガTが来るなんて、すごい偶然!」

ボク「そうなんだね。それも英語の神さまの仕業だな。ま、とにかく、あなたが元気でいるのがわかって安心したよ。次またいつ会えるかわからんが、高校時代なんてあっという間に終わっちゃうから、勉強も私生活もガンバりなさいね」

S子「は~い、ガンバりま~す!

 

 こうして約束の10分間は過ぎ、S子は小さなおにぎりおにぎりを1つだけ飲み込むように慌てて喉の奥に押し込むと、午後の授業に備えるため、校舎の中へと消えていったダッシュ

 

【 総 括 】 

約2時間に及んだ『高校授業見学』を振り返って

得られた成果を2つ 列挙しておきたい。

 

 1つめは、「現役中学校教員たちも、もっともっと高校へ赴いて授業を観るべきだ」という努力義務の発見

 中学校にいると “小中連携”という言葉は頻繁に耳にするものの、高校側との関わりは高校入試を前提としたものに限定されてしまうことがほとんど。

 中学の教員が高校の授業内容を知れば、自分自身の授業計画や授業改善に役立つことは間違いないし、それは自動的に有効な進路指導に直結することにもなるニコニコ

 2つめは、「間違いなくボクは世界一幸せな中学校教師だ」という事実を再認識した喜び

 在学中の3年間は親よりも長い時間を中学生たちと共に過ごす『中学校卒業式』という神聖な瞬間を共に喜び合える。その後の彼らの人生にさえも関わりをもつことができる

 そんな仕事、 “中学校教師” の他には ない!

 

 

ステキな卒業生を求めて東京中を巡る

ぶっつけ本番“突撃”高校訪問番組

オガTの卒業生に乾杯

次はキミの高校かも ⁉