僕にしか治せない!というか僕だからこそ治せる!と思えた患者さんがいらっしゃいましたので、ちょっと自慢げに紹介させてもらおうと思いました。
「痛みを自己消化できるかどうかが問題だ!」と前回のブログでお話ししましたが、今回の内容は痛みの自己消化とも関係してきます。
その方は両膝の痛みを訴える80歳の女性Kさんです。鍼治療を希望されて来院しました。印象的なのは自動ドアから院内に入ってくるとすぐにKさんは「軟骨がちびって困ってるけど治せるの!ここは予約がいるの!?」と大きな声で話してきたことでした。
少しお待ちいただいて、Kさんの番が来たので中に入ってもらい話を聞くと次の通りです。
5年ほど前から両ひざに痛みを感じてきた。それ以外には基本的に病院へは行くことがない。膝の痛みは動き始めが痛く、それ以外の痛みはない。以前に病院へ通っていたけど病院では薬をだしてくれるだけで他に何もしてくれない。病院ではもう治らないと言われた。それでは困る。なんとか軟骨も元に戻して完全に治るようにしたい!あんたはこの膝を治すことはできるの?
私は、Kさんが入ってくるなりいきなり放った言葉や痛みの訴え方からKさんの痛みに心理的な要因が関係しているのではないか?という直感を得ました。
そして、心理的な要因が関係しているのかどうかを確認するためにするべきことは、患者さんを現代医学的に診察して、身体的な痛みの要因を把握し、患者さんの痛みの訴え方がその要因にふさわしい程度かどうかを確認することです。
心理的に患者さんを診るために重要なことには、実は西洋医学に徹して患部を診察することなのです。
変形が進んでいて痛みが長引いている膝の多くは、滑膜という関節のなかの組織も腫れているために、膝の外観はぼんやりとしていて腫れぼったいです。そして、水が溜まっていることもよくあります。なにより、変形が進むと関節の動く範囲は狭くなります。ベッドの上で膝を伸ばすと膝の下とベッドの間にすき間ができるのです。
Kさんの膝は、西洋医学的に軽度から中等度の変形性膝関節症と見られました。動作開始時の痛みと内側の痛みがその特徴です。また外傷の経験もないとのことでしたのでそう考えられます。膝蓋骨(つまりひざのおさら)の形は非常にきれいにみられました。全く腫れぼったくはありません。膝はしっかりと伸びています。膝としてはきれいな膝であり、5年も前からずーっと痛みが続いているようには全く見えません。
ただ、問題が一つ。それは、膝が90度以上曲がらないということです。腫れもなく伸ばすことは十分にできるのに、90度しか曲がらない。???これはおかしいような気がしました。私はKさんに、急にバキバキと関節を動かすようなことはしないことをしっかりと約束してKさんの不安を和らげてからその膝を曲げていくことにしました。
Kさんの顔は歪みました。そして過剰な反応をします。まだ痛みがないであろう浅い角度ですでに痛みを訴えるのです。
Kさんに「大丈夫ですか?」と丁寧に声をかけながら少しずつ関節を曲げていきます。90度近くで、「これが限界!」という声がKさんから漏れました。
診察の結果、私の考えを次のようにKさんに伝えました。そして、興味深いのはKさんの反応でした。
Kさん、Kさんは膝を治したいのですね。わかりました。僕にはそれができるかもしれません。ただ、膝が治るとはどういうことなのかを前もって説明させてください。Kさんの膝は老化が原因で軟骨がすり減っているために痛みが出ています。正直言いますと、それを元通りにするためには若返るしかありません。そういう意味ではKさんの膝は治りません。誰も治すことができません。ただ治ることを、軟骨を元に戻すと考えるのではなく、今の膝で一生うまく使っていくことと捉えなおせば、これは治すことはできますよ。どうですか?
この会話の文脈のなかでKさんは、自分の考えをさらに話し出しました。「そうやねん、このまま軟骨が減っていったら手術をしなくてはいかないと医者に言われたけど、手術は絶対に嫌。だって何人も手術をした人の話を聞いたけど、どの人もまだ痛いって言ってるもん」
Kさんはどうも性格的にまっすぐな方のようです。感じたことをそのまま現実のレベルに引き上げるというか・・・・うまく説明できませんが。そして感じたことをすぐに言葉にする。受付でAさんが最初に放った大きな声もその性格のせいではないかと思いました。この性格のためにKさんは、自分の膝は手術をしないと元通りにならない、でも手術はしたくないという八方ふさがりの状況に置かれ、その抜け道として軟骨を増やして治すという思考に走ったのだと思われます。
Kさんのような性格の患者さんは説明に時間がかかります。説明を最後まで聞いてくれないことが多いですし、なにより自分なりの解釈が強く、私が行う説明をその通りに解釈してもらえている感じが全くしないからです。だから時間がかかるのです。
それでも私は、徹底的に説明しました。今考えると、忙しい時間帯だったので早く伝えて次の患者さんの治療を行いたいという気持ちが私には強かったのかもしれません。勢いがあるKさんの口調に負けないようにしていたのかもしれません。どちらも治療者としてはよくないことです。しかし、結果的に私の声はKさんに届いたと確信しました。
その確信の理由は、私が行った説明をKさんが受け入れてくれたと見える会話が成立したためです。
「Kさん、結論から言いますと、Kさんの膝の状態はKさんが思うほど悪くはないですよ、Kさんの膝の軟骨はKさんの年齢を考えると十分に寿命いっぱいもつと思います。ただ、問題なのは膝が90度以上曲がらないことです。これはもしかしたらKさんが膝を安静に保ちすぎて曲がらなくなってしまったのではないでしょうか?どうですか?」私は上のように話しました。
するとKさんは「そうです。だってこれ以上使うと軟骨はすり減っていくから。そうしないために正座なんかは一切しないようにしています。できるだけ曲げないようにしていました。でもそうかもしれまでん。本当に曲げないように意識していたから・・・・。じゃあ、これからは痛くてもできるだけ動かしていけばいいんですね」といいました。
上記のやり取りの中でKさんは膝に対する私の解釈を受け入れてくれました。Kさんは膝の痛みを過剰に評価しており、自分の膝が弱っているという強いイメージをお持ちのようです。
私は鍼灸治療と可動域訓練を用いて膝の可動域を可能な限り元に戻していくつもりです。そしてその治療の中で最も重要なことは可動域の回復ではなく、Kさんの膝に対する自信を回復させることとします。きっとKさんはある程度の可動域を獲得されるころには不安を乗り越えて膝に対する自信を取り戻せているのではないでしょうか。
ここに前回お話した痛みの自己消化が働くのですね。
Kさんの治療が私が思ったように運べばよいのですが、また報告しますね。
そうそう、僕にしか治せない!と思ったのは、膝の痛みの理論的な側面にのみ焦点を当てるのではなく患者さんの思考や背景までを考慮して治療を行うことが必要となる患者さんだと思われたためです!
(おわり)
写真はジョン万次郎です。日本人で初めて海外留学をした万次郎はその後、日本の外交に大活躍したそうです。彼は自分に襲い掛かる不幸をポジティブに方向転換させてきたように思います。私が尊敬する数少ない歴史上の人物です。
小川鍼灸整骨院
病院で診てもらったけど楽にならない!自分の痛みはだれにも分からない!心療内科でも診てもらっているけどよくならない!とお困りではないですか?そのような首、肩、背中、腰、ひざや足の痛み、手術後の痛みを当院は頑張って根気よく治療します。大阪市平野区加美北1-1-11です。
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南巽リハビリデイサービス たすく
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