お麩の研究(1):                                  『焼麩膨化現象の科学的解析と製造方法の確立に関する研究』

 

 

これまでお麩じぃが見たことがあるお麩に関する研究がいくつかあります。この機会に整理してみたいと思います。小難しい内容で恐縮ですが・・・。

 

★村瀬誠さん『焼麩膨化現象の科学的解析と製造方法の確立に関する研究』(2008.2.4 岐阜大学・博士論文)

https://gifu-u.repo.nii.ac.jp/records/73526

 

1.論文内容(要旨):

お麩じぃなりにまとめると、
「麩は古代中国に起源を発する小麦粉加工食品であるが、現在では、中国や東南アジア諸国でもみられず、名実共に我国固有の伝統食品」「江戸時代後半になって、焼麩の製造技術が我国で開発」

「麩は小麦粉でん粉を採取した残渣であるグルテンを主原料とし、これに小麦粉を混ぜ、よく混ねりしたものを加熱して加工」「製造方法は伝統的な技術に基づいた経験と勘によったもの」

「焼麩の膨化現象を科学的に解析し、その成果に基づいて製造方法を確立することを目的として検討し、以下に述べるような成果」
 

①焼麩の膨化とその機構、②グルテンドウの構造、③グルテンドウの熟成と膨化、④小麦タンパク質の膨化に対する役割、⑤膨化に対するでん粉の役割について検討した結果、

「焼成時の温度と散水量が膨化を左右し、膨化に直接関係するタンパク質はグリアジンであり、グルテニンは組織固定に関与」「でん粉は焼成中に糊化するものでなければ膨化せず、グルテンに混ぜることによって適性なグルテンドウを調製すること、及びアミロース含量が低いでん粉ほど大きい比容積を得ることができる」「グルテンドウの熟成や酸性領域へのpHの調整が効果的」「焼成温度を200℃、天板温度をそれより30℃高く設定し、焼成窯に供給自在型の水蒸気導入システムを構築することなどの焼麩の製造方法を確立」
 

論文の審査結果(要旨)では、村瀬さんは「伝統的な技術に基づいた経験と勘によっている焼麩の製造に関して、焼麩の膨化現象を科学的に解析し、その成果に基づいて製造方法を確立することに成功」「これらの成果は学術上も応用上も寄与するところが大であり、よって審査長全員一致で岐阜大学大学院農学研究科の学位論文として十分価値あるものと認めた」とされています。

 

この分野に素養のないお麩じぃには難しすぎるのですが、このような地道にコツコツと重ねられた研究の成果が、現在のお麩産業を支えているのだと思います。村瀬さんに感謝ですね。

 

本文とは直接関係ありませんが、参考画像のサービス(笑)です。

1月と3月のお麩旅で購入した、㈱マルヨネさん(1874年創業、新潟県三条市のお麩屋さん)と大舘屋さん(1920年創業、富山県氷見市のお麩屋さん)の焼麩の例です。ただし、「すだれ麩」は焼麩ではなく、生麩を干したものだそうです。

順次、美味しくいただいているところです。

 

各種の焼麩(例)