グルテンフリーとは(11):スペクターさんと「週刊新潮」                   

 

 

グルテンフリーに関する文献、記事、続けて見ていきます。

2021年も、グルテンフリーへの疑問や注意点についての情報が多く見られました。

 

★ティム・スペクター『歪められた食の常識』(2021.3 白揚社)

ティム・スペクターさんは、ロンドン大学キングス・カレッジの遺伝疫学教授で、ガイズ・アンド・セントトーマス病院の名誉顧問医、同病院の双子児研究所の所長も務めておられます。1992年に英国で世界最大規模の双子研究(UK・ツイン・レジストリ)を立ち上げ、現在にいたるまで指揮されているほか、個別医療や腸内マイクロバイオームの専門家でもあります。多くの発表論文や著書があります。

 

スペクターさんのこの本、お麩じぃなりにポイントをまとめると、

・この10年、グルテンの評判は悪い。グルテンをめぐる誤った情報が大量に出回っているうえ、専門家からの優れたアドバイスがあまりないこともあり、グルテンフリー食の人気が上昇。食品業界にとって、グルテンフリー食品を有望な市場(世界で170億ドル、伸び率は毎年10%)で、莫大な利益が議論の行方に影響。
・著名人や健康専門家らもグルテンフリーのお薦め商品や情報を次々に宣伝。テニスのジョコビッチ選手は世界ランク1位の獲得をグルテンフリー食に切り替えたおかげと強調したが、それから数年にわたってランキングを下げた。個人の逸話を当てにするのは危険で、同様の疑わしい話はいくらでもある。
・セリアック病や小麦アレルギーといった気の毒な人にとって、症状を抑える方法はグルテンフリー食だけ。しかし、そういった人はまれ(アメリカで医学的にセリアック病の診断が確定した人は100人に1人未満)。
・最近の大規模な追跡研究(アメリカの10万人の医療従事者を対象に26年間)によれば、食事によるグルテンの長期的摂取と心疾患のリスク上昇には関連がない。逆に、グルテン摂取を制限すると、心臓の健康に良い全粒粉の摂取量が減り、心疾患のリスクが高くなる可能性。
・非セリアックグルテン過敏症の人もいるが、思われているよりはるかに少ない。2015年発表のイタリアの研究によると、グルテン不耐症と自己申告した392人を2年間追跡した結果、セリアック病が6%、非セリアックグルテン過敏症が7%、小麦アレルギーが0.5%だけ。
・グルテンが何なのかよく知らないで、グルテンフリー食で体調が良くなったと申告する人には、プラセボ効果(心理的な思い込みの影響)や、食べているものに気を遣うようになって健康的な食品を選んだり、間食をやめたりした効果が出ている人も少なくない。
・グルテンフリー食は、栄養上の問題につながる可能性。ビタミン、ミネラルなどが不足していることが多い。スペインでは、通常の食事より脂肪が多く、食物繊維が少なかったとの研究結果も。商業的に生産されたグルテンフリー食品は、グルテンの食感特性に近づけるために代替食材を用いて複雑な処理がなされており、加工度やカロリー密度が高いことも。グルテンフリー食品は値段が高い(通常の食品と比べて、5倍もするケースも)ので、財布にも響く可能性。
・セリアック病、小麦アレルギーだと医学的に診断確認されたのでない限り、グルテンを避けると、概して健康に良いのでなく悪い可能性がある。

ということになるでしょうか。

 

★「「大谷翔平」が好物オムレツを断った「グルテンフリー」のご利益(「はるかなる黄金伝説」12)」(「週刊新潮」2021.5.6・13)

代表的な週刊誌「週刊新潮」にも、グルテンフリーに関する短めの記事が掲載されました。

 

この記事、お麩じぃなりにポイントをまとめると、

・日本ハム時代から大谷翔平を取材するスポーツライターの小谷真弥さんによると、大谷選手は今季から“食事”を変えたそうで、「卵があっていないことが判明し、毎朝自ら調理して食べていたオムレツをやめたそうです。“グルテンも基本的に今は摂っていないです“とのこと」
・管理栄養士で公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんによると、「欧米のアスリートを対象にした研究では、41%のアスリートがグルテンフリーを実践し、うち81%が効果を実感」。“魔法の食事”のようだが、早計はご用心。「欧米は、グルテンを多く含む食材がエネルギー源。一方、日本はグルテンを含まない米が主食」「グルテンフリーを極端に行うと、エネルギー不足に陥るだけでなく、ビタミン、ミネラルの摂取量が不足するとの報告も。食べ物を制限するということは、何らかの栄養素の不足に繋がる」
・小谷さんによると、大谷選手は試合前後に球団が用意したビュッフェ形式の食事を摂っているそうだが、橋本さんによると、「グルテンフリーがアスリートのパフォーマンスに影響を及ぼす、というエビデンスはない」「8割のアスリートが効果を実感というのも、グルテンうんぬんではなく、食事に自然と気を遣うようになるからでは」

ということになるでしょうか。見出しと中身がちょっと・・・。週刊誌にはよくありますね。

 

どちらも、グルテンフリーの効果への疑問、マイナス面を強調している内容ですね。

 

数多くの図書館を巡って集めた、いろいろな文献、記事などを見てきました。

そろそろお麩じぃなりにまとめてみたいのですが、その前に食品やその安全性について関係省庁や機関の問題意識、見解などを確認しておこうと思います。

 

お麩じぃは、これからもお麩を食べ続けて大丈夫でしょうか?