トンパ文化が栄えた母系社会
 一妻多夫制の納西族(ナシ族)


図1.ナシ族の夫人アルカディアを求めて-図1.ナシ族の夫人


26.ナシ族

--トンパ教を信仰し、トンパ象形文字で多くの詩歌、宗教経典などを記録してきた。
トンパ経は民族学の資料として価値が高い。
また、ナシ古楽を伝承しており、多種多様な楽器を持つ。麗江市で簡単に観光できる。
居住地の中心は雲南省北部と麗江市の古城区である。


ナシ族の団体写真アルカディアを求めて-ナシ族の団体写真


  中国語名 :納西族(ナシ族)
  英 語 名 :Naxi
  人  口 : 308,839 人(2000年)→ ?人(2010年)
  代表的姓 :木氏。和氏。この2つしかない。
  居 住 地 :雲南省北部。麗江市中心部の古城区に多く居住。
 ----------- 四川省南部。チベット自治区東部の茫康県。


ナシ族3アルカディアを求めて-ナシ族3


モンゴル遊牧民父系一夫多妻婚である。男が威張っている社会なので、大相撲で有名な
元横綱・朝青龍、ドルゴルスレン・ダグワドルジ氏(29)を輩出できた(笑)。


半農半牧の定住民チベット族父系の一妻多夫婚で、一見女性の地位が高そうだが、
制度の背景には貧困があり、社会全体がギクシャクしている様に見える(偏見ゴメン)。


一方、ナシ族母系一妻多夫制で、女性の地位が高い。喩えれば、蜜蜂の社会と同じで
1匹の女王蜂のもとに、雄蜂や働き蜂が群がっている形で最も安定しており、世界で唯一の
社会組織として学問的にも注目されている。その理由が2、3調べられている。
 
1.女性が働き者で、野菜を入れた大きなカゴを背負った民族衣装姿の女性をよく見かける。


2.一例として『祖母部屋』がある。一家の長である最年長の女性が住む部屋で、
  ここに先祖の祭壇などがあり、家内の未成年は皆ここに住む。


3.賨(ソウ、宗の下に貝の字を書く)組織=日本の頼母子講がある。10人の夫人でする貯金会。
  女性が家庭経済を担うには、冠婚葬祭、罹病災害など経済管理と支配人の重要な役割
 果たす必要がある。


ナシ族5乗馬姿アルカディアを求めて-ナシ族5乗馬姿
-------------これは四方街の観光用です。


女主人は老若男女から慕われる魅力が必要になる。男達は狩り等に出て危険に晒されるが、
大怪我をしても女主人の元に戻りたい一心で帰還する。男手が多いので家庭が豊になる。


ナシ族6アルカディアを求めて-ナシ族6
-------日本にもある風景ですが、労働は厳しい。


若い男が新しい妻と結婚することも出来るが、分家して独立しなければならない。
財産が減るので、「たわけ者=田分け者」と笑われる。日本でも聴く言葉だな?偶然か?


ナシ族7アルカディアを求めて-ナシ族7
-------渓谷の丸太橋、ジープは日本の探検隊用のもの。WEB借用m(u_u)m


一妻多夫制には欠点もある。生涯に亘り男を知らない女性が増える。
男達は、兄弟、叔父、友人などだが、子供の父親が誰かは解らない。


女性側からは、3人兄弟の一人を愛していれば受け入れられるのだが、叔父、友人まで
平等にするのは、上手く行かない場合もある。

最近は経済の発展で、一夫一婦制を採る若者も増えて来たので、いずれは消える制度だが、
例えば老舗の女将さんとか、ビジネス界での女社長として残り、力は発揮されるだろう。


ナシ族1アルカディアを求めて-ナシ族1
------左は既婚の白襷、右は未婚の白襷(結び方が違う)

女性の民族衣装は、前で交差した白い紐が特徴。

交差している部分で結び目ありは既婚者、結び目がなく単純に交差は未婚を表す。
北斗七星を表す丸い飾りのついた「七星羊皮」という背当があるのも特徴。


ナシ族2アルカディアを求めて-ナシ族2
-------全て未婚者


ナシ族4アルカディアを求めて-ナシ族4
------背中に「七星羊皮」の丸いボタン状が見える

さらに、注意深く女性の衣装を見てみると、若い女性と年配の婦人の衣装には生地の色合い
などの点で若干の違いもあるのは世界共通だろう。


トンパ文化は、ナシ族固有の宗教であるトンパ教を中心に発達した文化である。
トンパ教は、2000を超える神々を祀る。


ナシ族は基本的に自然崇拝であるが、チベット仏教の影響も多く受けている。
組織化された信徒集団や寺院はない。
経典は、シャーマンのトンパによって「トンパ文字」で描かれる。


トンパ文字1アルカディアを求めて-トンパ文字1


トンパ文字(日本人はtonpa と発音・表記するが、本当はtonba が正しい)
--トンバ同士の間で代々継承されてきたため、社会全体での標準化がなされておらず、
異体字も多い。

また、口語をそのまま書き記すものではなく、内容も宗教や伝承に関するものが多いため、

真の意味で理解するのはとても難しいとされる。僕もテキストを現地で買い求めて、
少し勉強したが、入り安いけど難しくて投げてしまった。難しさの一例を示す


1.絵文字に近い独特の象形文字で、古代中国の甲骨文字に類似する点もあるが、
  同じ意味の文字でも異なる場合が多い。


 トンパ文字の「女」は同時に「大きい」という意味を持ち、「男」は同時に「小さい」
 という意味を持つ。これはナシ族文化が伝統的に母系社会であることに由来する

 「天」の文字は、甲骨文字の天は下界とは切り離され、いかなる感情も持たないが
 しかしトンパ文字の天は、優しく力強く世界を覆うといった意味を持っている


2.主に毛筆で書かれる。世界の文字の中でも唯一、色によって意味が変わる文字だ
 黄色はお金(金持ち)、黒は悪などの意味合いを既存の文字に色をつけて

字の意味を広げていく。


3.複数の部品を組み合わせて、会意字を作ったり、音を表す部品を付記する構成法も
 用いられるが、漢字のように明確な部首を持つまでには発展していない
 また、象形文字を作りにくい形容詞などは、他の同音の文字で代用することが多くの
 文字で行われている。



トンパ文字2アルカディアを求めて-トンパ文字2
-----------健康、快哉(カイサイ)、幸福、平安を示す置物。take out どうぞ。


→全体としてイラストレータ等の芸術家には参考になると思う


ナシ族の活動範囲の特に重要な地名やナシ族と古来からの交流のある民族などには独自の
文字が作られている。麗江・玉龍雪山・金沙江などは独自の文字を持つ地名である。


トンパ文字で書かれた古代ナシ族の百科事典である宗教典籍「トンバ経」が残されており、
2003年にはユネスコの世界の記憶事業に登録され、デジタル保存が進められている。

更に、深く広い研究が期待される。