夕方6時になると夕食が運ばれてきた。

思っていた通り少ない味薄い

食事だった。

30年前に虫垂炎で一度だけ入院したことがある。

結婚式の4日前に急性で虫垂炎の手術をした。

癒着を起こしていて

手術中暴れて看護士さん数人に押さえつけられ縛られての手術だったという。

おかげで翌日全身筋肉痛で動けなかった。頭も上げられなかった。

結婚式はもうキャンセルできないので2日後から根性で起き上がり

歩行訓練をした。

主治医には結婚式はNGといわれる。

しかし、当日は日曜日だったので医師不在、そしてタクシーで

結婚式場まで行き披露宴までおこなった。

もちろん水も料理も口にしなかった。

 

そんなことを思い出しながらipadでダンス動画を見つめていた。

もしガンなら右肺全摘かー

 

40代後半から始めたペアダンス、コツコツと12年やってきた。

海外のイベントも4か国参加してきた。

パフォーマンスの向上ために筋トレもして体つくりもした。

パンデミックがなければ今頃海外のイベントでコレオを披露していたはずだ。

何かの間違いであってくれー

40年前のことが原因なんて

まだ17,8歳のころの大工見習のころのことだ。

今でも覚えているのは耐火被覆工事中(アスベスト入りの石綿を鉄骨に吹き付ける作業)

の職人さんに

「あんちゃん、これは発ガン性だから下に来ちゃだめだよ」

と言われたことは覚えている、

このころはマスクもせずに吸い放題で鼻の中口の中喉がチリチリいがらっぽかったのを

も覚えている。

それだけでなく建材にはアスベストが使われていたというのだ。

そんなこと知らずに一所懸命作業した建材粉まみれになりながら....

 

涙が出てきた、汗水たらして頑張ってきた結果がこれか、

なんなんだよ、もう数年で還暦だよ

 

就寝時間で女性看護士さんがまわってきた。

私の顔を見てはっとしていた。

泣いてしまったのがばれたようだ。

私の顔を見ないように体温計を差し出し、血圧計を腕に巻く。

「明日オペ室には私が連れていきます。しっかり寝てくださいね。」

私は涙声を悟られたくないので

小さく返事をした。

消灯してイヤホンでipadを見ながら寝落ちした。