また、当ブログは、理由のない「暴力行為」を肯定するものでは
ありません。
あくまでも一個人の「妄想」としてお楽しみください。
5月2日(木)23:30 群馬県美滝原市 美滝原中学 地下室内プール
とうに、市から委託されたプールの管理人は、帰宅して
地下室内プールを維持する機械は、停止しており
室内は静寂を保っている。
四隅の暗い水面(みなも)には、炎の邪悪とも思える揺らめきが
不規則な形を映し、これから始まる”狂宴の宴”に花を添えようと
でもしているかのようだった。
プールサイドの四隅それぞれには、古(いにし)えの儀式を思わせる
「篝火(かがりび)」が配置され、
時折、パチパチと古木の爆(は)ぜる音が太古からの記憶を呼び起こして
いるようにも思う。
時に、炎は、”神聖”であり、”邪悪”だ。
炎は、その両面を持って人の”本性”を呼び戻すという....

しかし、室内の灯りも薄暗いため、プールの中心部の底は
見えずにまるでどこまでもどこまでも
底のない深海を思わせた。
「何も見えないな」
独り言のように僕は呟く。
日中は、体育の水泳の授業で嬉々たる声が
満ちている楽しい場所なのだろう。
しかし、今は、違う。
まるでぼくの暗鬱な心を象徴しているような場所...
彼女の心の中もこんな”世界”なのだろうか。
僕は、”狂っている”
こんなことをして本当に解決するのか?
鯰チャンと「地震発生」の関連性は、本当に
あるのだろうか?
科学的根拠は皆無であり、それを立証することは
現段階で不可能だ。
あくまでも、”推測”、いや”思い込み”でそれを
解決しようとしていることは、ものすごく”危険”な
ことではないのだろうか。
しかし、今の僕には、もう”手立て”がなく、時間も限られている。
本当に可哀想なのは、鯰ちゃんだ。
彼女は、「自分のせい」だと信じており、深い自己嫌悪に苛まされて
いる。
彼女は、僕に付き添い、従い、僕の”狂気”に取り込まれて”戻りたくても
戻れない”のかも知れない。
それは、本当に”罪深い”ことじゃないのか?
僕は、彼女を救うことが本当にできるのか?
僕は、女子更衣室のドアを軽くノックする。
ゴモラ「準備は整ったよ」
鯰チャンは、おずおずとドアから恥ずかしげに
よたよたとよろけながら出てくる。
衣装に「着せられている」といった感を受ける。
あどけなさが残る”女子中学生”が職場体験
で着せられたといった感である。

彼女の出で立ちは、「日本古来の海女(あま)装束」
である。
僕が、NHK衣装部に問い合わせて”例の番組の広報”を
海のない群馬で実施するという企画書を送り、企画が通って
海女装束一式を借り受けることができたのだ。
しかし、この、伝統衣装の美しさときたらどうだ。
実用的な絣の上着とその華やかな真紅の帯との
コントラストの妙...
海女は、古来より”神聖な”職、つまり、神々に海産物を
”奉納”するという役目をおっていたという。
つまり、海女衣装とは、それ自体が”神聖”な加護を
受けているといっても差し支えないだろう。
僕は、衣装を着装するときには、「手順書」を渡しているので
着る順番等については、間違いがないようで...着けていない?
肝心の「ハチマキ」を着けていないのだ。
白地に赤く「北限の海女」と記してある、あの「ハチマキ」を!
ゴモラ「ハチマキは?」
そういうと、彼女は後手に隠し持っていた二本の「ハチマキ」を
おずおずと僕の目の前に差し出した。