3月10日(土)より公開となる「教団X」で知られる芥川賞作家・中村文則による美しくも切ない傑作同名小説を映画化した『去年の冬、きみと別れ』は、全ての人が罠にハマる、予測不能なサスペンス。

主演の岩田剛典(三代目J Soul Brothers、EXILE)は、普段の柔らかな笑顔を封印し、不可解な事件の真実に挑む執念の記者・耶雲恭介役を熱演している。そんな耶雲の婚約者であり、耶雲と対峙する
事件の容疑者で天才カメラマンの木原坂(斎藤工)の標的にされる百合子を演じたのは山本美月。美しき優しい婚約者であり、物語を大きく展開させる重要なキャラクターだ。「監督の厳しさに応えれば新しい自分が見える気がする」と話す山本に、映画への想いを聞いてきた。




■厳しい監督の指導に「自分で一人反省会を開きました」

ーー本作で山本さんは岩田さん演じる耶雲の婚約者、百合子を演じられています。この役を演じるにあたって工夫したことを教えてください。

山本:監督の演出が表情からセリフの言い回し、指の動きにいたるまで、とても細かくて。監督に作り上げていただいたキャラクターだなと思います。自分だったらこう動かないけど、百合子だったらこうするんだなって自分で演じているのに新鮮でした。


ーーそこまで細かく演出が入っていたのですね。

山本:本当に微妙な表情だったりとか、ちょっとした差なんですけど、何度も何度もやってチェックしてもらって。1つのお芝居にじっくり時間をかけて撮影していました。重要なシーンでは、その撮影が近づくにつれてすごく不安を感じていて(笑)。厳しい監督で、自分で一人反省会したり、ショックを受けたり…。でも、この役を私が演じられると思ってオファーをくださっているのだし、監督の要望にちゃんと応えられたら新しい自分が引き出されるのかなと思って一生懸命やっていました。この映画での山本美月の新しい一面と聞かれたら、全部だと思います。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

ーー厳しいからこそ山本さんも演技しがいがあったと。

山本:そうですね。常に厳しいからこそ、褒めてくださった時はうれしいですし、OKは心からOKだと思ってくれているんだと、信頼することができました。またいつか瀧本組で演じさせていただきたいです。すごく勉強になったのですが、時間的にはあまり長くなかったので。岩田さんは監督と長い時間一緒にいて、もう魂は通じ合っていると思うので、私もそのくらい、がっつりご一緒させていただきたいです。

 

 

 

■切なくて叶わないラブストーリーが好き

ーー完成した映画をご覧になっていかがでしたか?

山本:残酷で美しい物語だと思いました。この映画で描かれている恋愛って、綺麗と言えば綺麗だし、怖いと言えば怖いし、観た人によって捉え方が全く違うと思います。でも、私はすごく美しいと思いました。映像もすごく綺麗で、表情がほとんど映っていないのに、光と影で表現していたり、そういうカットが好きでした。



ーー予測不能なサスペンスというジャンル名がぴったりの作品ですよね。そして、観た人が罠にかけられる、心理的トリック演出も素晴らしかったです。

山本:私は原作を読むと混乱するので、読まないでいいと言われ、何も情報をいれないまま台本を読ませていただいたのですが、やっぱり騙されました。私は演じている側だからかもしれませんが、サスペンス要素だけでなく、恋愛映画の要素もある映画だと思っています。


ーー確かに人によって感想が違って面白そうです。山本さんはこのお話をラブストーリーだと捉えたということですよね。

山本:自分はもちろんこんなことしないですけれども、理解はできますし、そうしたい気持ちは分かるんです。あとは、切ないお話が好きなので、叶わない恋を描いたラブストーリーが好きで。『人魚姫』とか。恋愛映画好きの方も絶対に楽しめると思うので、ミステリーを普段観ない方も期待してほしいです。



ーーちなみに山本さんは罠にかけるのとかけられるの、どちらが自分っぽいと思いますか?

山本:かけられる方がいいです……!嘘をつけなくて、人をすぐに信用してしまうので(笑)。でも映画の中では登場人物それぞれの罠があるので、百合子の罠も楽しみにしていてください。


■岩田剛典の印象は「優しいお兄さん。だけどすごくストイック」

ーー初共演された岩田さんの印象はいかがですか? 

山本:私は音楽をもともとあまり聴かないので、岩田さんが踊っている映像やライブを観たことがなくて、今回映画でご一緒させていただいた俳優の岩田さんのイメージが強いです。すごく優しいお兄さん、それでいて、とてもストイックで真面目。台本を読んだとき、「岩田さんの役って本当に難しいな」と思ったのですが、表情の変化が見事で感動しました。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

ーーその他、印象に残っている共演者の方はいらっしゃいますか?

山本:岩田さん以外では、(斎藤)工さんとMommy-Dさんとのシーンだったのですが、Dさんと一緒の撮影は癒されました。Dさんはまだ演技の経験が少ないと言って、私のことを褒めてくれたり、現場をなごませてくれて。たわいのない話もたくさんしてリラックス出来る時間でした。工さんは、これまでも色々共演させていただいているのですが、この木原坂という役はピッタリだと思いました。


■山本美月が「お別れしたいこと」とは?

ーー木原坂は歪んだ方向にストイックになってしまったわけですが、それでも惹きつけられる魅力がありますよね。山本さんご自身は自分のストイックな部分ってどんなところだと思いますか?

山本:絵を描き始めると飲み食いを忘れます。ついつい集中してしまい、時間も忘れ、お腹も空かないんです。そういう追求するという部分では木原坂さんのことを少しは理解出来るかな。

 



ーー絵は昔からお好きだったんですか?

山本:母が美術の先生の資格を持っているということもあって、子どもの頃から好きでした。昔から外でアクティブに動くタイプではなかったので、何か作ることが好きで、絵もその一つです。2018年の年賀状も、家の犬の後ろ姿を自分で描きました。


ーー素敵な趣味ですね。山本さんは漫画・アニメ好きとして知られていますが、最近面白かった作品はありますか?

山本:なんだろう〜!たくさんあって選べません(笑)。『このマンガがすごい!』2018年版のオトコ版1位だった『約束のネバーランド』はやっぱり面白いですよね。私もハマりました。あと、『宝石の国』がアニメ化しましたが、もともと市川春子先生の作品が大好きなので楽しみました。でも、本当に個人的には、市川先生の美しい線が好きなので、3DCGはキレイだけれど、ちょっと物足りなかったんです。ってこんなこと言ったら怒られちゃうかな。漫画とアニメどちらも素晴らしいですが、私は漫画の方が好きです。



ーーご自身で絵を描く、山本さんらしい観点なのだと思います。最後に『去年の冬、きみと別れ』のタイトルにちなみ、山本さんが“別れたいこと”を教えてください。

山本:インドアな自分と…ですかね(笑)。オフの時間とか放っておいたらずーっと家にいて漫画を読んだり絵を描いているので、今年はもうちょっとアクティブに色々おでかけしたいなって思っています。


Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

【作品情報】

 

 

<STORY>

彼女を奪われた。猟奇殺人事件の容疑者に――。 結婚を間近に控える記者、耶雲(岩田剛典)が「最後の冒険」としてスクープを狙うのは、猟奇殺人事件の容疑者である天才カメラマン、木原坂(斎藤 工)。世間を騒がせたその事件は、謎に満ちたまま事故扱いとされ迷宮入りとなっていたのだ。真相を暴くため取材にのめり込む耶雲。 そして、木原坂の次なるターゲットは愛する婚約者(山本美月)に――!木原坂の巧妙な罠にハマる婚約者、そして耶雲までも……。だがそれは、危険な罠の始まりに過ぎなかった――。 木原坂の本当の正体とは?耶雲の担当編集者(北村一輝)、木原坂の姉(浅見れいな)の秘密とは? 果たして、耶雲と婚約者の運命は!? すべての真実を目撃したとき、あなた自身が巨大な罠にハマっていることに気づく!予測不能!サスペンス、誕生!