「グランドジャンプ」で連載中の同名漫画を実写化した映画『不能犯』は、思い込みやマインドコントロールで相手を死に追いやる主人公・宇相吹正(松坂桃李)と、彼に翻弄され、人生を変えられる人々の運命を描いた【立証不可能犯罪】スリラーエンターテインメント。 

 

本作で、更生した元不良少年・川端タケル役を演じているのが俳優の間宮祥太朗。ドラマや映画だけではなく、バラエティでも活躍の場を広げている間宮に、本作への思い、共演の松坂桃李や沢尻エリカの印象、そして今後の目標について話を聞いてきた。

 

 

■簡単に人を殺めることができる…映画『不能犯』の魅力

 

ーー完成した作品をご覧になってどんな印象を受けましたか?

 

間宮:白石監督の今までやってきたような細かいCG、傷などの描写がすごく魅力的だなと思いました。刺激してくるような、挑発してくるような危険なものなのに、それを魅力的に映す。技術的なところで言うと、そこがすごく印象に残りました。

 

 

ーーなるほど。間宮さんは原作漫画も読まれていたとのことですが、「殺人を立証できない」、「殺人を委託する」という設定については、どのような印象を抱いていましたか?

 

間宮:この作品は、そこがキーポイントですよね。リスクをあまり背負わずに済む殺人という"手間のかからなさ"がひとつのキーになっていると思っていて。

 

(C)宮月新・神崎裕也/集英社  2018「不能犯」製作委員会

 

ーーというと?

 

間宮:変な言い方ですけど、殺したいと思った欲求とそれだけの怒りを実際の殺人という行為に持っていくことって、すごく労力もいるし、いろいろなことを考えなきゃいけないし、自分の人生をかけるような自分の身を切る部分も出てくる。でも、ここで描かれている宇相吹に依頼して人を殺してもらう、しかも立証も出来ず罪に問われることもない、という殺人は、本来の殺人に比べると簡単に踏み入れることができてしまうというか…。しかも、自分が殺したという実感を持たずに済みますし。

 

 

ーー昨年、主演を務められた『全員死刑』も、死をテーマにしている作品でしたよね。

 

間宮:『全員死刑』で、殺人がいかに疲れる労力のいることかというのを実感した後だったので、より、電話ボックスの裏に依頼を貼って「あいつを殺したい」って理由を話すだけで、死神みたいな人が何も自分にたどり着くことなく殺人を遂行してくれるという手軽さは怖いなと思いました。

 

 

ーー取っ掛かりのハードルが低いと、思いがそこまで強くなくても…ということもありそうです。

 

間宮:依頼した人たちは、「本当に殺人まで踏み切れるだけの思いだったのか」という…。そこがこの作品で考えさせられる部分だと思います。

 

 

■沢尻エリカは「すごく気持ちの良い方」

 

ーー間宮さんが演じられた川端タケルは、物語の鍵を握るような役柄ですね。ここ最近は個性の強い役も多いですが、今回の役作りで意識したことはどんなことでしょうか。

 

間宮:一貫するというのは意識しました。前半と後半で立ち位置が変わる。それを急に変わりすぎないように、前半からの流れが滑らかになるように演じました。

 

(C)宮月新・神崎裕也/集英社  2018「不能犯」製作委員会

 

ーータケルは、元不良で逮捕歴があって少年院に入っていたという設定ながら全体的にスマートな印象でしたね。

 

間宮:そうですね。私服もけっこうキレイめな服装を好む。白のタートルネックにシャツで几帳面な印象を受けたので、そのあたりは、こだわりとか人となりを想像するひとつのアイテムでした。

 

 

ーー演技の面で、監督から細かい指導などはありましたか?

 

間宮:後半に、多田さん(沢尻エリカ)に対しての執着と信用の強さ、それからタケルの言葉で言うと、ひとつ「キレイ」というワードが重要になってくる。そこは台本を読んだ時に服装となんとなく几帳面さとかリンクしているのかなと思っていました。“キレイなもの”がタケルの中でのこだわりで、美しさみたいなものに、すごく惹かれるのかなと。アーティストっぽいのとはちょっと違うのかもしれないですけど、少し固執した感じを出せればいいなというのがあって。監督にも指導していただきながら、目線の演技で表すように意識していました。

 

 

ーー松坂桃李さん演じる宇相吹とのシーンもありますが、松坂さんの現場での印象を教えてください。

 

間宮:松坂さんはほとんど宇相吹としてしか会っていないんですよ。現場に行ったときにはもう、劇中のスーツ姿でぬぼーっと存在していらっしゃって。僕は割りと宇相吹にしか見えなかったというか(笑)。すごい妖気をまとっていらっしゃいました。

 

 

ーー劇中のような映像演出がなくても、松坂さんは宇相吹の怪しさが出されていたんですね。

 

間宮:そうですね。髪も目にかかっていて、身体からそういったオーラがにじみ出ていました。

 

(C)宮月新・神崎裕也/集英社  2018「不能犯」製作委員会

 

ーー沢尻さんはいかがでしたか?

 

間宮:沢尻さんはすごく気持ちの良い方で。タケルが女性の多田さんを恩師と慕っている関係もそうですけど、女性の先輩のポジションでいるとことろがすごく自然になる存在感を持っている。(新田)真剣佑の百々瀬も後輩という役で出ていますが、男の後輩と女の先輩であることが居心地がいい雰囲気を沢尻さんは持っていらっしゃるなと思いました。

 

(C)宮月新・神崎裕也/集英社  2018「不能犯」製作委員会

 

ーー現場でも姉御的な存在だったんですね。

 

間宮:だから、タケルとして、沢尻さん演じる多田さんに「偉くなっちゃって」みたいに言われるやりとりは、とても自然にできたという印象があります。やっぱり話していても気さくですし、すごく楽しかったです。あと僕はすごく沢尻さんの声が好きだなと思いましたね。

 

 

 

■間宮祥太朗が求める"特殊能力"は…?

 

ーー今年は1月ドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)に出演され、『不能犯』も2月公開で昨年に引き続き勢いを増していらっしゃいますが、昨年末は『女芸人No.1決定戦THE W』で初の番組MCにも挑戦されて。

 

間宮:MCは挑戦というか、なぜ自分にあの話が来たかわからない中でわからないままやって、わからないまま終わった感じでした(笑)。

 

 

ーー初めて経験されていかがでしたか?

 

間宮:楽しかったです。芸人さんたちのネタを見て、笑って。MCと言いつつ別に僕は進行していないので、徳井さんと水卜さんが進行してくれている中にいるっていう。だからただ単純に楽しませていただいたなと思います(笑)。

 

 

ーー活躍の幅を広げられていますが、2018年はどんなことに挑戦したいですか?

 

間宮:うーん、趣味は増やしたいなぁと思います。

 

 

ーー例えば?

 

間宮:釣りとか…?わからないですけど(笑)。あと、挑戦ではないですが、旅行をたくさんしたいなって思います。けっこう宿とか好きなんで。自分がいいなぁと思う宿を見つけたいですね。

 

 

ーー最後に、宇相吹は人をコントロール出来てしまう特殊能力を持っていますが、間宮さんはどんな特殊能力がほしいかを教えてください。

 

間宮:ファーストインプレッションを味わえる能力(笑)。食べ物とか人と会ったときとか、そのファーストインプレッションってもう二度と味わえないじゃないですか。

 

 

ーー美味しいものを食べたときの「こんなに美味しいものがあったんだ…!」といった感動とか?

 

間宮:もちろんそれ以上の美味しいお寿司を食べたら、また新たに「わあ!」ってなるかもしれないけど(笑)。映画とかだったら、自分の本当に好きな映画に出会ったときの衝撃と喜びみたいなものって、どうしても一度しか味わえない。次にもう1回観ても、それをどこか追いかけてしまうというか。一番最初に自分が本当に心から「うわ、これ好きだな!」って思うものを見つけたときの喜びってなかなか他のものに代えがたいと思うので、それが追体験出来るような能力が欲しいです。

 

 

ーーその能力があったら、何度も素敵な経験ができそうですね。

 

間宮:初めて衝撃を受けた部分の記憶だけ消して、初めてをもう1度味わえるような都合のいい能力があったらいいなと思います(笑)。

 

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

【作品情報】

 

 

<STORY>

都会で次々と起きる変死事件。いずれの被害者も、検死をしても、何一つとして証拠が出てこない不可解な状況で、唯一の共通点は事件現場で必ず目撃される黒スーツの男。その名は宇相吹正(松坂桃李)。彼こそがSNSで噂の〈電話ボックスの男〉だった。とある電話ボックスに、殺人の依頼を残しておくと、どこからともなく彼が現れ、ターゲットを確実に死に至らしめるという。その死因はどれも病死や自殺に事故――

宇相吹の犯行は、すべて立件不可能な犯罪、〈不能犯〉だった。今日も、愛憎や嫉妬、欲望に塗れた人々が彼のもとにやってくる。そんな中、警察はようやく宇相吹の身柄を確保し、任意で取り調べを始める。

多田(沢尻エリカ)と部下の百々瀬(新田真剣佑)が見守る中、宇相吹を前に上司の夜目(矢田亜希子)が取り調べを始めるが、次第に夜目の様子がおかしくなり、最終的に宇相吹は解放される。

彼の正体とは一体―。そして、真の目的とは―。