『百円の恋』で2016年日本アカデミー賞優秀作品賞・最優秀脚本賞を受賞した武正晴監督と脚本家・足立紳が再びタッグを組み、更にNHK連続テレビ小説「てっぱん」などで活躍する今井雅子が共同脚本で加わった映画『嘘八百』は、空振りばかりの目利き古物商・小池則夫(中井貴一)と落ちぶれた腕利き陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)が、“幻”の利休の茶器という<真っ赤なウソ>で仕掛ける一発逆転の大勝負を描く、年初めにぴったりな開運エンターテインメント。

 

本作で、小池の娘・いまりを演じるのが森川葵、野田の息子・誠治を演じるのが前野朋哉だ。劇中だけではなく、インタビュー中も息ぴったりのトークを繰り広げる2人に、お互いの印象、2人の父を演じた中井貴一と佐々木蔵之介の男前エピソード、そして本作の見どころなどを聞いてきた。

 

 

■「葵ちゃんにガッツリ心を奪われました(笑)」(前野)

 

ーー本作でお2人は初共演ということですが、お互いの第一印象を教えていただけますか?

 

森川:全然目が合わないな、です(笑)。

 

前野:僕ね、挙動不審なんですよ……。10個下っていうだけで、「僕なんかが喋ってもいいのかな?」って思っちゃって。いつもそうなんですけど(笑)。

 

森川:そういう気持ちがダダ漏れていました(笑)。

 

前野:でも森川さんから話しかけてくれて、しかも自然に話してくれたので、現場に入ってからは緊張もすっかり解けました。「最近何をやっている時が一番楽しいですか?」と聞いたら「う〜ん、貯金ですかね」って回答が返ってきたときは、ガッツリ心を奪われましたね(笑)。

 

 

森川:あはは(笑)。やっぱり社会人として大事なことですからね、貯金は。

 

前野:それを聞いて、この子と仲良くなれそうって思いました。

 

森川:この『嘘八百』もお金が無くて色々なトラブルが起こる映画ですから。お金は大切です。

 

前野:すごい、ちゃんと映画の宣伝につなげてる!

 

 

ーー若いのにしっかりしている森川さんの一面が、今の瞬間だけでもよく分かりました(笑)。撮影の合間にはどんなお話をされていたんですか?

 

前野:僕らは待ち時間が長かったので、将棋をやったり。僕も将棋をやったのは久しぶりだったんですけど、将棋盤の横に羽生名人の本もあったので、それを見ながら。

 

 

森川:私は駒の動かし方くらいしか知らなかったので、教えてもらいながら。

 

前野:色んな人が集まってきて、僕らの将棋をやいのやいの言いながら見ていました。

 

 

■「貴一さんは本当のパパみたいな大切な存在」(森川)

 

ーーお2人は映画の中で若いキャラクターということもあり、先輩方に囲まれての撮影だったと思います。現場では、そういった緊張感はありましたか?

 

前野:そうですね。とくに佐々木(蔵之介)さんの集中力というか、醸し出す緊張感が素敵だなと思っていました。撮影が進むにつれて、何人かの方とは飲みに行かせてもらったので慣れてきたんですけど。でも、そういう緊張感も含めてすごく楽しかった。

 

(C)2018「嘘八百」製作委員会

 

ーー森川さんは中井さんの娘役、前野さんは佐々木さんの息子役ですが、あんな格好良いお父さんがいたら……。

 

森川:いやあ、うらやましいですね。今回の撮影が終わって少し時間が経ってから、(中井)貴一さんに焼肉に連れて行っていただいたんです。その時に、私が受けているオーディションの話をしたら「お前なら大丈夫だよ!」って言ってくださって、実際にオーディションの結果が出たあとに連絡させていただいていても、その励まし方が本当に優しくて、本当のパパみたいな大切な存在になりました。

 

(C)2018「嘘八百」製作委員会

 

前野:僕は何か直接アドバイスをもらったわけでは無いのですが、佐々木さんの醸す雰囲気が「しっかりやれよ」って無言の励ましをしてくれているような気がして。それは僕が勝手に思っているだけかもしれないのですが。例えば、映画の中での関西弁も、僕は関西人じゃないのでイントネーションがちょっと違ったら、すぐに教えてくださって。素敵なお父さんでした。

 

 

■森川&前野は占いを信じるほう!?

 

 

ーー本作は新年に観るのにピッタリな、笑えて家族愛も感じられる作品だと思いました。完成した映画をご覧になっていかがでしたか?

 

前野:骨董を扱うお話なので、「セリ」や「骨董品集め」ってこういう風にやるんだ!と初めて知ることが多くて。そういう部分を知れたことが僕の中で一番面白かったです。蔵を訪ねて器とかを見せてもらうんだ、とか、陶芸家の仕事ってこういう感じなんだ、とか。

 

森川:私も最初に台本を読んだ時に、陶芸や骨董の事を知らなすぎて読めない漢字がたくさんあったんです。だから、台本の印象は堅い感じというか、「自分とは全然違う世界のお話だな」と思う部分があったんですけど、実際に役者さんが演じると柔らかい雰囲気になっていて。私と同世代の10代20代の方でも楽しめる映画だなと思いました。

 

(C)2018「嘘八百」製作委員会

 

ーー映画の中でお2人が特に気に入っているシーンを教えてください。

 

前野:僕は佐々木さんの陶芸シーンです。あそこにジャズがかかっているのもすごく素敵で、その中でずっと無言で陶芸を作り続けるっていう。あとは、工事現場のシーン。

 

森川:あそこ、私も大好き!木下ほうかさんのある一言で、それまでの作品の緊張感がスルスルスルってほどけていくシーンも本当に好きで。何気無いシーンが面白いっていうのが、コメディ作品の醍醐味だと思いますし、笑わせるぞって気合が入りすぎてしまうとそれは面白くないと思うので、ほうかさんや、皆さんの演技がすごいなって思いました。

 

 

ーーちなみに、占いによって思いもよらない展開になっていく物語でもありますが、お2人は占いを信じるほうですか?

 

前野:自分からは調べないんですけど、聞いちゃうと気になっちゃいますよね。僕、2017年の10月まで運気が昇り調子で、11月でめちゃくちゃ下がりますよってゲッターズ飯田さんの本に書いてあったらしく…。朝ドラでの自分の出番がちょうど11月からだったので、「どんだけ叩かれるんだろう」って恐くて恐くて(笑)。映画の公開もあったし、自分の中で11月が来るのが本当に恐かったんですよ。ソワソワしていました。

 

森川:私も実は2ヶ月くらい前にゲッターズ飯田さんに仕事でお会いして、「3年後に人生の転機がある」と言われて、今すごく気になっちゃってます。それから、自分でも星座占いとかよく見るようになっちゃって。もしかして今後ハマっちゃうかも…(笑)。

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

【作品情報】

 

 

<STORY>

大阪・堺。千利休を生んだ茶の湯の聖地に、目利きだが大物狙いで空振りばかりの古物商・小池則夫(中井貴一)が娘のいまり(森川葵)を連れてやって来た。「西に吉あり」。ラジオの占いに導かれるように車を走らせていると、蔵のある屋敷にたどり着く。門から様子を伺うと、主らしい男・野田佐輔(佐々木蔵之介)が帰ってきた。蔵の中を見せてくれると言う。庭にはジオラマ作りに夢中の息子・誠治(前野朋哉)がいた。

佐輔は「骨董の事は分からない。これ一つでも車一台は買えると聞いている」と言って茶器を差し出す。則夫は名物に似せた贋物だと見抜き、売りつけた古美術店の名を聞くと、茶器を譲り受けた。

則夫は早速、その店を訪ねる。素人に贋物をつかませた証拠をネタに高額で引き取らせる魂胆だ。ところが、店主の樋渡(芦屋小雁)と大御所鑑定士の棚橋(近藤正臣)に軽くあしらわれてしまう。くさっていると佐輔からの電話。屋敷に再び呼ばれた則夫は、書状を見せられ、絶句する。利休直筆の譲り状だ。「お宝でっか?」と尋ねる佐輔にしらばくれる則夫。譲り状があれば茶器があるはず。はやる心をおさえながら蔵の中を探すと、ついに利休の形見の茶器が現れた。国宝級だ。「蔵のもの全部、百万円で引き取りましょう」。すました顔で申し出ると、佐輔は快く応じた。

翌朝、支払いを終え、お宝を積んだ車を上機嫌で走らせていると、ラジオから「油断大敵」の声。不安になって箱を開けると、茶器は真っ赤なニセモノだったーー

 

 

映画『嘘八百』は、1月5日(金)より全国ロードショー。