「花とゆめ」(白泉社刊)で2013年から連載され、単行本総発行部数が200万部を突破する福山リョウコ原作の人気漫画を実写映画化した『覆面系ノイズ』は、歌うことが大好きな女子高生・ニノ(中条あやみ)が、幼い頃の初恋の相手・モモ(小関裕太)に自身の声を届けるため、幼なじみのユズ(志尊淳)とともに覆面バンド「in NO hurry to shout;」を組み、音楽活動に励みながら、それぞれの片恋を募らせていく姿を描いた物語。

 

本作で覆面バンド「in NO hurry to shout;」のリーダーであり、ベーシストのハルヨシを演じるのが俳優の杉野遥亮。映画『キセキ ―あの日のソビト―』に続き、今年2度目のメジャーデビューを果たした彼に、本作への思い、ブレイク後の環境の変化やプライベートなことまでたっぷりと聞いてきた。

 

 

■ハルヨシは、相手を思いやれる人

 

ーー杉野さんが演じられたハルヨシは、金髪にオネエ言葉という独特なキャラクターですよね。どのようなことを意識して演じられましたか?

 

杉野:ハルヨシは一見、エッジのきいたオネエのように見えてしまうんですけど、中身は普通の男の子。「じゃぁ、どうしてこういう口調なんだろう?」と考えたときに浮かんできたのは、彼の根本的な部分でした。ハルヨシは相手と調和したり、気遣いができたり、相手のことをちゃんと見て、話して、感じている人。相手を思いやれる気持ちの最終形態=この話し方なのかなと思ったんです。

 

©2017映画「覆面系ノイズ」製作委員会
 

ーーなるほど。

 

杉野:僕の周りのヘアメイクさんとかにもハルヨシのような口調の方がいらっしゃるんです。ご一緒すると、すごく感じが良いというか、悪い印象がまったくない。話している相手の心を開かせてくれるような柔らかい口調なんですよね。そういう方を参考にしながら、オネエ言葉だからといって変に声のトーンを上げるのではなく、地のトーンでどれだけ相手のことを優しく包みこめるかということを意識して演じるようにしました。

 

 

ーー単にオネエ言葉を発するのではなく、ハルヨシという人物の背景を考えたうえで演じられていたのですね。使い慣れていない口調で話すことに戸惑ったりしませんでしたか?

 

杉野:撮影に入る前から考えながら過ごしていたので、そこは大丈夫でした。とは言っても、アドリブになると難しかったです。「こういう時、ハルヨシならどういう風に言うんだろう?」と思ったり。

 

 

ーー咄嗟にでる言葉ですね。

 

杉野:誰かが言ったことに反応するようなシーンでは、「標準語とオネエ言葉と、どっちで言えば良いんだろう?」「どこまで(オネエ言葉で)いって良いんだろう?」みたいなことはありました。

 

 

ーー映画では、ハルヨシの恋愛模様についても描かれています。杉野さんは以前のインタビューで、女性に恋愛対象として見てもらえないとおっしゃっていたと思うのですが、ハルヨシも深桜(真野恵里菜)に本気にしてもらえない場面などがありましたよね。そういった部分は、共感できましたか?

 

杉野:共感しました。だけどハルヨシがすごいと思うのは、深桜がユズに片思いをしているときはそばで見守っていて、ユズの前にニノが現れて深桜が落ち込んだときに、初めて思いを伝えるところ。相手のことを思って、好きの気持ちを抑えられるってすごく大人ですよね。

 

 

ーー杉野さんは、好きの気持ちを抑えられないタイプ?

 

杉野:僕は好きだと思ったらすぐ言っちゃいます。振られると分かっていても、一縷の望みにかけちゃう(笑)。学生の頃、同じ人に2回告白したこともあるんです。(小声になって)振られましたけど…(笑)。

 

 

■2度目のメジャーデビューに「本当に自分のことかな?」

 

ーー映画の見どころの1つでもある劇中の覆面バンド「in NO hurry to shout;」(略称:イノハリ)が演奏するシーンは、とても迫力がありました。杉野さんは今回ベースに挑戦されていますが、もともと楽器の経験はありましたか?

 

杉野:ないです。リコーダーと鍵盤ハーモニカくらい(笑)。

 

©2017映画「覆面系ノイズ」製作委員会
 

ーーでは、ベースを演奏するのは難しかった?

 

杉野:すごく難しかったです。でも、練習をするにつれて徐々に楽しいという気持ちが生まれて……みんなで合わせたときの快感というのは、初めて味わう感覚でした。すごく良い経験になりましたし、役を通していろいろなことに挑戦できるのは、この仕事ならではの面白さだなと。改めて、こういった機会をいただけたこと、ありがたいなと感じています。

 

 

ーー「イノハリ」では「グリーンボーイズ」(映画『キセキ ―あの日のソビト―』から生まれた音楽ユニット)に続いて今年2度目のメジャーデビューとなりましたが。

 

杉野:こんな人いないんじゃないかなぁ(笑)。自分でもいまの状況がよく分かってないです。……だって、すごいことですよね(笑)?

 

 

ーーすごいことだと思います(笑)。

 

杉野:実は、あんまり実感が湧いていないんです。すごいことをしているというのは感覚的に分かっていても、本当に自分のことなのかな?と思ってしまう(笑)。それくらい僕にとって音楽というのは遠いところにあったものだったので。とはいえ、やるからには精一杯しがみつきたいと思います。

 

 

ーー「グリーンボーイズ」で「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)に出演されていたのも拝見させていただきました。

 

杉野:うわぁ、本当ですか!「Mステ」とCMみたって言われるのが一番恥ずかしい……(笑)。あのときカチコチでしたもん…(笑)。

 

 

ーー(笑)。また、音楽番組に出演される日を楽しみにしています。

 

杉野:今度は違うグループとして、音楽番組で菅田(将暉)さんと共演できたら面白いですね(笑)!

 

 

■目まぐるしい変化に戸惑うも「変わりたくない」

 

ーー映画『キセキ ―あの日のソビト―』から始まって、『兄に愛されすぎて困ってます』や現在配信中のウェブドラマ『東京アリス』(Amazonプライム・ビデオ)や『花にけだもの』(dTV×FOD)など、続々と話題作に出演されて2017年は杉野さんにとって飛躍の年になったかと思うのですが、ご自身で振り返ってみていかがですか?

 

杉野:うーん……いろいろなことがありすぎて追いつけてないです。思い出そうとすると、いろいろな気持ちが走馬灯のようにわーっと出てくるというか。その一つ一つが大切で、大好きで…。

 

 

ーー今はまだ整理しきれない?

 

杉野:あと何年か経ってから、しみじみと振り返りたいです(笑)。この先何年後かの人生においても、一番とんでもない年になったんじゃないかなと思います。

 

 

ーー環境が変わったなと感じることはありますか?

 

杉野:街中で気づかれることも多くなりました。だけど、どっちが良いんだろうって。

 

 

ーーというのは?

 

杉野:ジャージでちょっとそこまで…とかも、出来ないじゃないですか(笑)。コンビニ行って、カップラーメン買って、公園で食べたりとか…。

 

 

ーー公園で(笑)!?

 

杉野:はい(笑)。と言いつつ、今もたまにおでんとか食べてますけど(笑)。

 

 

ーー(笑)。お家で自炊したりすることは?

 

杉野:家には電子レンジもやかんも、食器類も全然ないんですよ。だからコンビニで温めてもらったり、お湯を注いだりするしかない(笑)。

 

 

ーー買ってください(笑)!

 

杉野:なくても生活できているから、ついつい後回しになっちゃうんですよね(笑)。でもこの間、大雨でどうしても家を出たくないのに家にあるカップラーメンすら食べられない…という状況に陥ったので、やかんくらいは買おうかなと思います(笑)。

 

 

ーーぜひ、お願いします(笑)。こうやってお話を聞いていると、活躍されている中でも杉野さんの根本の部分は変わっていないようで安心しました。

 

杉野:変わらないですよ!変わりたくもないです。こういうお仕事をしていて、考え方が変化していく理由ももちろん分かるんですけど、応援してくださる方々を悲しませたくないという気持ちが一番なので。

 

 

ーー素敵な考えですね。杉野さんのTwitterを見ていてもそういった一面が分かるというか、とても親近感が湧きます。

 

杉野:あはは!あれって親近感が湧くのかな(笑)?今は1日1ツイートするって決めているんです。やめられない、とめられないって感じですね(笑)。

 

 

ーーハッシュタグも独特で。

 

杉野:僕、ハッシュタグって手紙でいう「P.S.」みたいなものかと思っていたんです。その事柄を検索するときに使えるものだって知らなくて…。

 

 

ーーそうだったんですか!だからああいった使い方を…(笑)。

 

杉野:自分のタグをタッチしてみたら、やっぱり自分の投稿しか出てこない。そっか!そういうことか…!ってなりました(笑)。

 

 

ーー杉野さんらしいですね(笑)。

 

杉野:……(苦笑)。

 

 

ーー褒め言葉で言っています(笑)。

 

杉野:はい、大丈夫です(笑)。

 

 

ーー最後に、ゆっくりできるオフがあったら何をしたいか教えてください。

 

杉野:そうですね…遠出がしたいです。夕日が綺麗なところに行って、泣きたい!デトックスしたいなって(笑)。オフの日に家にこもって寝てばかりいると「今日は何もできなかったな」とか「寝すぎちゃったな」とか、どんどん気持ちがインに入っちゃうんです。だから遠くに行って、良い景色を見て、良い涙を流して、温泉に入ってサーッと帰る。そんなオフを過ごしたいですね!

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

【作品情報】

 

 

<STORY>

6年ぶりの再会が、初恋をもう一度奏でる―――。

高校2年生の有栖川仁乃(中条あやみ)は一度聴いたら忘れられない、人を虜にする歌声の持ち主。6年前に、幼馴染の男の子・モモが突然姿を消して以来、マスクが手放せないのは、感情が高ぶると叫び出してしまうから。幼い頃、何をするにも一緒だったニノとモモ。由比ヶ浜の浜辺で、「きらきら星」を歌ったとき、モモは「もしも会えなくなっても、お前の歌声を目印に会えたらいいよな」とつぶやいた。モモがそう言ってくれたから、ニノは歌うことを止めずにいる。いつか、その声がモモに届くと信じて―。

 

 

出演:中条あやみ 志尊淳 小関裕太 真野恵里菜 磯村勇斗 杉野遥亮

監督:三木康一郎 

 

脚本:横田理恵 三木康一郎

原作:福山 リョウコ「覆面系ノイズ」(白泉社「花とゆめ」連載)

主題歌:in No hurry to shout;「Close to me」(ソニー・ミュージックレコーズ)

エンディングテーマ:MAN WITH A MISSION「Find You」(ソニー・ミュージックレコーズ)

 

 

映画『覆面系ノイズ』は11月25日(土)より全国ロードショー。