10月2日(月)より放送がスタートしたNHK連続テレビ小説『わろてんか』は、明治後期から昭和初めの大阪を舞台に、主人公・藤岡てん(葵わかな)が小さな寄席経営を夫婦ではじめ、日本で初めて「笑い」をビジネスにした女性と言われるまでになる姿を描いた物語。

 

Ameba Official Pressでは、出演者のインタビューを掲載。第2回は、てんの母親・藤岡しず役を演じる鈴木保奈美に話を聞いた。

 

 

ーー今回『わろてんか』に出演することが決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

 

鈴木:ずっと現代劇ではないものに出演してみたかったのと、京ことばを話す役を演じてみたかったので、とてもうれしかったです!以前『ノンちゃんの夢』に出演したときには、まだこの仕事を始めたばかりでプロデュ ーサーとディレクターの違いすら分かっておらず、とにかく夢中だったせいか実はあまりよく覚えていないので、今回は撮影が始まるのがとても楽しみでした。

 

 

ーーご自身の役柄について、どのように捉えて演じていますか?

 

鈴木:しずは、とにかく朗らかで前向きな人。京都のいいとこのお嬢様で、きっと、そんなに苦労せず育っているんじゃないでしょうか。お店のこともお家のことも、母親のハツさん(竹下景子)にきっちり仕込まれており、自分自身にも、生家の藤岡家にも誇りを持っていて、誰に対しても分け隔てなく接し愛情を持てる人なんだと思います。ある意味では、怖いもの知らずで、何が起きても動じないし、笑顔で受け止めて笑顔で返すような、とてもまっすぐなキャラクターだと思います。

 

 

ーー演じるうえで、とくに意識していることなどはありますか?

 

鈴木:実は、自分のなかで台本には書かれていない、しずの“裏設定”のようなものを決めているんです。たとえば、娘のてん(葵わかな)と同じ女学校に、しずも昔通っていたんだろうなとか。てんが女学校の校長先生に 叱られるシーンがあるのですが、「しずがいるころから、この先生は怖かったんだよね」なんて、みんなで話していました(笑)。しずは、きっと叱られるタイプではないと思いますが、内心「私、この校長先生知ってる。あのころから怖かった」って思いながら、母親として謝るシーンを演じました。

 

 

ーー鈴木さんの"裏設定"を知ったうえでドラマを観ると、とても面白そうです。

 

鈴木:夫の儀兵衛(遠藤憲一)さんのことも勝手に“裏設定”を作っています。脚本の吉田智子さんは「全然違う」とおっしゃるかもしれませんが(笑)、しずは儀兵衛さんのことを、結構気に入っているんじゃないでしょうか。周りの人は「あんな無口な人、どこがいいの?」と思っているんだけど、しずの男性の好みはちょっと変わっていて、「え? 結構いいと思うけどな」と娘時代から思っていたんです。だから、ハツさんに「この人を婿に」と言われたときも嫌じゃなかった…と勝手に決めています(笑)。

 

 

ーーそんな儀兵衛との夫婦関係は、鈴木さんからみていかがでしょう?

 

鈴木:何度もセリフを聴いているうちに、「しずは、とても柔らかい言い回しだけど、実は、言いたいことをしっかりと言ってるんだなぁ」と感じました。相手の言い分をちゃんと聞きながらも、自分の考えは絶対に譲らないという印象で、柔らかいけれど、決してくずれないし、折れない。それが儀兵衛さんが折れるときにも、しずさんは折れていないんですよ(笑)。 二人は、ちょっと面白い力関係なのかもしれませんね。

あと、儀兵衛さんって、しずさんに対して強く言うセリフが出てこないんです。一回だけ、儀兵衛さんがしずさんに「お前がそれをやれ!」ってきつくいうシーンがあるんですが、しずさんはそれもちょっとうれしかった……という“裏設定” にしています(笑)。 

 

 

ーーなんだか可愛らしい夫婦ですね。撮影現場の雰囲気はいかがですか?

 

鈴木:明るくて朗らかな現場だと感じています。ヒロインの葵わかなちゃんは、天然なんだか真面目なんだか、ちょっとわからないんです(笑)。たぶんすごく真面目な人なんだと思うんですけど、飄々と現場に馴染んでいらっしゃいます。変な気負いがないんですよね。自分の娘と、ほぼ同世代でしゃべりやすさはありますが、一人の女優さんとして、対等に接し、尊重したいと思っています。

 

 

ーー現場で印象的だったエピソードなどはありますか?

 

鈴木:みんなで大爆笑したのは、伊能 (高橋一生)さんが初めて藤岡屋にいらして、長男の新一(千葉雄大)の書いた論文について話をするシーン。前半すごくしんみりした空気なのですが、後半からは大どんでん返しになるシーンで、テストで私が吹き出してしまった事をきっかけに撮影が続けられないほど皆で笑ってしまいました(笑)。

 

 

ーーどんなシーンになっているのか、楽しみにしています。

 

鈴木:あと感じたのは、当時の家族って言葉遣いや作法を重んじているせいか、少し他人行儀な印象があるということです。でも一方で、家族で何かひとつの問題について、みんなが心配するという意味では、むしろ関係が近いのかもしれません。家業のことや娘の嫁入りなど、家族みんなで共有するような問題があって、みんながそれぞれ悩んだりするので。現代はデジタル化されていて、家族のお互いが知らない世界でのやり取りがあったりしますよね。親は子どもが誰とチャットしているかわからないし……なんていうことに比べると、藤岡家のほうが家族の距離が近いのかなと思います。例えば、風太(濱田岳)くんや、おトキ(徳永えり)ちゃんを 通じて、てんの行動は筒抜けなんですよね(笑)。 

 

 

ーー家族の距離感というのも、1つの見所ですね。最後に、放送を楽しみにしている視聴者の方々へのメッセージをお願いします。

 

鈴木:ドラマ序盤の京都編では、藤岡屋の仲がよくて朗らかなところを観ていただけると思います。この先、てんちゃんは茨の道を歩んでいくことになるのですが、どんなときにも笑って乗り切っていける心の基盤を築いたのは、この家なんだなということを表現できたらいいなと思います。ぜひ、朝から笑ってください。あと、私たち女性陣の着物や美しい刺繍の入った半えりなど、とても華やかでさらに毎回着替えてたりするので、そこにも注目していただきたいですし、楽しみにご覧ください。

 

 

画像提供:NHK

 

■『わろてんか』公式サイト

■葵わかなインタビュー

■松坂桃李インタビュー