皆さん、日記ではお久しぶりです。

すっかり秋めいて肌寒いくらいの日が続きましたが、数日前から一転、また汗ばむ陽気が続いていますね。

季節の変わり目は体調を崩しやすいので皆さんもお気をつけ下さい!

お陰さまで8月末には無事「Dark fairy tale」のファイナルを迎えることができた(本当にありがとうございました!)わけですが、そこからは瞬く間に時が過ぎ、気がつけば10月も半ばとなっていました。

ご存知のようにDとしては今月末にミニアルバム「愚かしい竜の夢」をリリース、また1月末には浅葱ソロとしてフルアルバム「斑(まだら)」をリリースすることが決まりました。

立て続けに嬉しい発表ができたことは僕にとっても非常に喜ばしいことでもあります。

「斑」の方は絶賛製作中でして、Dの冬ツアーが始まるまでは毎日が戦いになりそうです。

“和”と”東欧の竜"それぞれ異なる世界ではありますが、今僕が最も表現したい二つの世界になります。

どちらも僕が長年描いてきた世界観でありつつ、新たな世界の幕開けでもあるので、是非両作品を楽しみにしてくれると嬉しいです。

まもなくツアーも始まりますが、各地で皆さんと共に「竜の伝説」を創りあげられることを心待ちに、日々頑張って行こうと思います。

またこここ10年ほどはセルフライナーノーツはパンフレットに載せることが多かったのですが、誰もが気軽に世界観を知ることができる、また知るきっかけになってほしいという気持ちを込めて、表題曲でもある「愚かしい竜の夢」のセルフライナーノーツを開示したいと思います。

全曲分は勿論、ツアーパンフレットに記載しますので、より深く世界を楽しみたい方は是非、会場で手に取っていただければと幸いです。

いざ、新しき世界へ…

(ASAGI)

 

 

◆「愚かしい竜の夢」

この物語は遠い昔、竜と人が共に在った世界のお話になります。人は竜を讃え、また竜も人を信じ、竜が民を護ることでこの国は栄えていました。この竜がこの地の民を護ることになったきっかけは一人の人間の娘を愛し、子が生まれ、やがて子孫が繁栄していったからでした。(僕の中の世界観では竜は竜人でもあるので、普段は人に近い姿になることができます。)それまでは度々近隣諸国から攻め入られることがありましたが、守護竜の存在により平和な日々が続いていました。それから約百年の歳月が経ち、竜と人との始まりを実際に目にした者がいなくなると、人々の竜への敬意は薄れ、その加護はさも当たり前であるようになっていくのでした。また竜がいれば戦いにも絶対に負けないと思い上がるようになり、竜の忠告も聞かずに今度は他国に攻め入るようになってしまいます。竜の血を引く子孫やその地に住む多くの人を護る為に竜は来る日も来る日も護り続けてきましたが、度重なる愚行に呆れ果て、ついには人々を見放してしまいます。やがて戦は劣勢になりますが、その地を離れた竜が戻ることは決してありませんでした。そして勝手な人間達は、自らの愚かさを忘れ、守護竜でありながら民を護ることもせず、命惜しさに逃げたのだと、竜を悪者にしてしまうのでした。それから更に長い年月が流れました。竜の血を引き、竜との絆を持った女しか竜を呼ぶことはできない(竜石(竜の血の結晶)も必要)のですが、女達もいつしか歌を捨ててしまうのでした。(元々は竜族の子孫へ伝わる歌と竜石です)やがて人々を震撼させる恐ろしい狂竜(この部分が「Cannibal morph」にあたります)が現れると、恐怖がこの地を襲います。竜の血を引く者らは次々に命を奪われ、また誰一人としてその強大な力に抗うことはできませんでした。人々が逃げ惑う中、自身にも流れる竜の血が熱く鼓動する少女がいました。祖母から母へ、母から少女へ伝えられてきた守護竜の話を聞き、少女はずっと信じ続けてきたのです。少女は竜の姿を心に浮かべ、受け継いだ歌(この歌が「竜哭の叙事詩」になります)を歌います(この少女は幼い頃に空を飛ぶ竜の姿を一度だけ見たことがありました)薄くなりながらも、竜の血が流れている者は多く存在していますが、竜を信じる想いと竜石がなければ呼ぶことはできないのです。この少女は「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」主人公の孫に当たります。戦を憎んでいた女性が“花摘みの乙女”ですが、竜石を代々受け継いでいた家系ということになります。東欧に伝わるズメイという竜がモデルになっているのですが、伝承の中ではオスのズメイは人を愛し、メスのズメイは人を嫌うとされています。故に、このオスのズメイは人と共に在りましたが、後に人間に裏切られてしまいました。ズメイは三つ首とも言われていますが、これは実際に三つの頭というよりも、三つの思考(自我を中心にイド、超自我)が入り乱れている、というイメージにしました。わかりやすい感情で言うと本能のままの憤怒のイドと、良心である慈悲の超自我、その中央で均衡を保つ自我ということになります。(玉座のデザインにも三つのドラゴンフェイスに拘っているのはそういった理由もあってのことです。)人々から離れた竜は山で暮らしていました。ブルガリアのヴィトシャ山には金の橋(苔でできています)があり、またその峰は黒き峰と呼ばれています。所謂、RPGなどのファンタジー世界では必ずと言っていいほどドラゴンが登場しますが、それらの多くは悪者として描かれます。ですがこれらは人間目線で書かれたものがほとんどであり、実際のところ竜が何をしたのか?となると疑問符がつく場合も少なくありません。理由としては竜を殺そうとしたり、卵や金を盗もうとした為に怒りを買った場合が多いのではないでしょうか。人間が自然を破壊し、生き物の居場所を奪うことによって、人と野生動物が接触して襲われるということは日本でも珍しくありません。人は自分こそ正義であると信じ、こぞって剣を掲げ勇者を名乗ります。(この辺りは歌詞の「矛を掲げて男は発つ」であったり、MVでも表現しています)手柄と名声を上げる為に、男達は度々竜の住む山へやってくるのでした。ヴィトシャ山に辿り着き、竜の忠告を受け入れた者や逃げ失せた者を竜が追うことはありませんでしたが、敵意をもって襲いかかってきた者に対しては容赦なく炎の餌食とします。かつての幸せだった頃を思い出しながら、人と共に暮らしていけることを夢見た竜。人を愛し、人を信じてしまったが為に心は傷つけられ、やがては己自身の愚かさを悔い続けることになるのです。