「理想」と「がっかり」のはざまで、、、
こんにちは。カウンセリングサービス
のみずがきひろみ
です。
水曜日のキャリアアップのテーマを山田耕治
、秋葉秀海
とともに担当しています。
前回は、「期待に応えたくない」心理に潜む「怖れ」は、子供が大人になろうと「自立する」ときの「怖さ」に似ているという話でした。「成功する」ことが気恥ずかしかったり、「素晴らしい私」になることにテレを感じてしまう気持ちがあると書きました。
きょうは、リーダーになると叩かれる、という「怖さ」についてです。
あなたはリーダーになりたいですか?
それとも、なりたくないですか?
もし、なりたくない、としたら、それは何故でしょう?
リーダーは叩かれるし、引きずりおろされる、と感じていて、その「怖さ」から目立ちたくない、兵隊でいたい、隠れていたい、という気持ちが強く働いてしまう、という経験をされている方は少なくないでしょう。
私はそうかな、と思われた方は、もしかしたら今日お話しする、「理想化」と「失望」の間を行ったり来たりするパターンがあるかもしれません。
私たちは、皆、子供のときに親を「すごい!」と感じていました。
自分の面倒を見てくれる母親が世界の全てだったこともありました。
自分よりも力が強くて、何でも知っている父親がとても偉く感じられて、「お父さんの言葉は絶対」だったこともありました。
自分を育ててくれている親に絶対的な権威を認めていた時代があったのです。
そのとき、お父さんやお母さんは、私たちにとって、まるで「神様」のような存在だったと言えます。
ところが、思春期にさしかかる頃には、お友達の○○ちゃんのお母さんはいつも笑顔でおやつにお菓子を作って待っていてくれるのに、自分のお母さんは怒ってテレビばかり見ていてかまってくれない、とか、父母参観の時に△△くんのお父さんは、パリッとスーツを着ていて恰好いいのに、自分の父親は来てくれないどころか、きっとウチでまたお酒を飲んで社会の悪口を言っているのだろう、とか、親のダメでみっともないところがだんだんに見えてくるものです。
女神のようだと思ったはずのお母さんは、トドのようにテレビの前に横たわり、神様だったはずのお父さんは、ただの酒飲みのオヤジだったりする、という現実をつきつけられます。
それでも、そんなみっともない親のどこかに、神や女神だった頃の片りんはないかと探してみたり、これは何かの間違いで、自分が何か悪いことをしたから、本当は素晴らしいはずの親がこうなってしまったのか、と自分を責める気持ちが生まれることもあります。自分が努力すれば、かつて感じたはずの完璧な親が戻ってくるのではないか、という切なる願いをもつこともあります。
本当は、慈愛にあふれた親も、だらしがない親も同じひとりの人間で、どちらの性質も持ち合わせているのですが、親を愛する子供たるもの、最初の、親を全知全能の神と感じた幻想の方を真実と思いたいのです。
ところが自分が成長すればするほど、この期待は裏切られます。自分が大きくなるにつれ、親を「ちっぽけ」な人間に感じるようになるのが自然だからです。
そして、親を理想化した分だけ、自分が成長して気づいた親の欠点にがっかりする度合いが大きくなります。この落差があまりに大きいとその傷つきが、大人になってからも、権威ある人に投影されることがあります。
A子さんは、いつもどこに配属されてもスタートは順調です。お友達にも「今度の部署の部長はすごく面倒見のいい人なの。いろいろと教えてくれて、すごく頼りがいがあるからラッキー。部下一人一人をよく見てるって感じ。この人についていけば大丈夫って思える、もう、上司の鏡みたいな人よ」と大喜びで話していました。
ところが3カ月ほどして廊下ですれ違うと、A子さんは浮かない顔です。
「どうしたの?あんなに今度の異動を喜んでいたみたいなのに元気がないわね」と声をかけると、
「もう疲れちゃって。部長がウザいのよね。すごく細かいことまで指示するし、なんだか監視されているみたいで、最低。息がつまってしょうがないわ。そんなに私は信頼されていないのかしら?」と不満をぶちまけます。
「私、最初はいい上司の下で働けて嬉しいって思うのに、しばらくするとなんだかアラがいっぱい見えてきて、もう許せないって感じになるの。完璧な人間はいない、って頭ではわかっているけれど、やっぱり上に立つ人はそれなりに人間ができていてほしい、って思うのよね」、とひとしきり部長に対する不満を言うと、今度は、期待が裏切られてしまった悲しみが出てきます。
期待が大きかった分、そぐわないところが見つかると裏切られた悲しみが一気に怒りとして噴出したようです。
このような理想化と失望を繰り返しているうちに、がっかりするのがいやで、心の中に「この人はいいかしら?」という期待の芽が出ると、すぐに「いやいや、ああいう人に限って自分勝手かも」と、転ばぬ先の杖、とばかりにアラさがしに走ってしまうようになることもあります。
でも、残念ながら、このタイプの方の「理想」の上司は、スーパーマンに近い人なので、そうそう見つかるものではありません。そして、上司に出したダメは、全部、自分がキャリアアップするときにクリアしなければならないハードルに変わってしまうのです。スーパーマンしか上司になることを許さないとしたら、自分もスーパーマンでなければ上司になれない、と思うものだからです。
自分にはリーダーになれる能力がなさそう、資格がなさそう、と思っている方の中には、多くの上司にたくさんのダメ出しをしてこられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
どうか、心の中で、そっとあなたの期待に応えられなかったお父さんやお母さん、そして大勢の上司たちを許してあげてくださいね。きっと普通の人間だっただけなのです。
いよいよ今週末です!
みずがきひろみの心理学ワークショップのお知らせ
7月4日の18:30-20:30に、五反田のゆうぽーとで、心理学ワークショップを開催します。
テーマは、「魂の声を聴く~そのままの『自分』と出会うために~」です。
私たちはどうも「自分」のことあ一番わからないのではないでしょうか。
社会で生きていくために、周りに気を使いながら、たくさんの「○○すべき」と「××してはいけない」に縛られて、自分は本当は何が好きで、何をしたい人なのかもわからなくなるようです。
でも、私たちはみな、心の奥底に「愛したい」という深い慈愛の気持ちをもっています。それを表現したいという欲求があります。この気持ちにしたがうとき、あなたはどう生きたいと願うのでしょう。
人が期待する「あなた」ではなく、あなたが期待する「あなた」でもない。あなた本来の「そのままの自分」はどう生きたがっているのでしょうか。
夏の夜、しばしの時間、自分の心の奥底の声に耳を傾けてみませんか?
ちょうど7月に入ったばかりで2010年も折り返し地点になりますので、心をリセットして、生まれ変わった気持ちで、今年の後半、皆さんがさらに先に進めるように応援したい、と思っています。
どうぞ楽しみにしていてください。 みずがきひろみのワークショップの詳細はこちら>>>