新しい自分になる~TO DOとTO BE(2)~
こんにちは。カウンセリングサービス
のみずがきひろみ
です。
岡崎陽子
と交替で水曜日にキャリアアップのテーマを担当しています。
前回(2月10日UP)、「新しい自分になる」ことをめざすとき、「何を」「どう」「変えたらいいの?」というTO DO(やることを変える、行動価値)というアプローチと、自分のあり方や心の態度を変えるというTO BE(態度価値)のアプローチがあります、とお話ししました。
今日は、TO DO(行動価値)の変容をめざすとき、「何をやるか(WHAT)」以上に、「どうやるか(HOW)」を変える勇気をもちましょう、という提案です。
カウンセリングの現場で、「『未知な領域』『新しい才能』を開花させましょう」とお話しすると、新しい仕事や職種、全く違う業界に転向する、あるいは違う国や地域に行くことを考えた方がいいかしら、と思われる方が多いようです。確かに、人生の岐路に立ち、そういう大胆な決断を余儀なくされることも一生のうちに何度かはありますが、実は、もっと頻繁に、数年単位で何度も訪れる、小波のような「変容」のチャンスを上手にモノにして、自分を進化させていくというテもあります。
A子さんは、おおらかな上司の下で、自分で仕事の優先順位や時間配分を決めて、のびのびと明るく仕事をこなし、そのことでいい評価がついてきていました。ところが、一月前の人事異動でその上司はよその部署へ。代わりにきた新しい上司は、神経質で、細かい仕事の手順まで自分が指図し、そのとおりにやらないといい顔をしてくれない人です。A子さんにしてみれば、これまでのやり方でさしさわりはなかった(はずだ)し、評価もついてきていたので「変える」必然性が理解できません。が、日を追うにつれ、上司のA子さんを見る目が冷たくなるように感じられます。
「私的には、これまでのやり方で何がまずいのかわからないのです。いちいちどうでもいいことにケチをつけられるのがすごいストレスで、会社に行くのが憂鬱で、転職を考えたくなるくらいです」と訴えるA子さん。
人事異動ではよくあることですが、これまで「よし」とされてきたことが、ある日急に「よくない」に変わってしまう。それは、まじめな人であればあるほど、理不尽なことに感じられて、到底受け容れられないと思ってしまいます。そんなことを言う新しい上司のほうが「神経質すぎて」、「おかしい」、というのがどちらかといえば普通のリアクションでしょう。
人は、「変わりたい」と頭で思うほどには、心は「変わりたくない」もののようです。
「変わる」ことは、これまでの自分を支えてきた態度や考え方を捨てることになるので、自己保存の本能に逆らうから、強い不安が伴います。だから、「変わる」必要性を頭で理解していても、気持ちがついていかないことはとても多いのです。
特に、A子さんのように、自分から望んだ「変化」でない場合、それを受け容れるのはさらに難しくなります。
でも、仮にA子さんの「これまでOKだったのだからOKなはず」という主張が正しいとしても、その主張を通すことがA子さんの職場での「幸せ」、楽しさや評価も含めた「やりがい」につながるでしょうか?
「私は『正しい』」かもしれない。でも、それで『幸せ』だろうか?」
これは、私自身が「こうであるべきなのに、どうして○○はそうしないの!」という「やり方(HOW)」の葛藤を抱えたとき、繰り返し自分の心に投げかける問いです。
上の例でも、A子さんの、自分の「正しさ」を証明したい、という気持ちが強くなればなるほど、上司と「やり方(HOW)」の闘いに突入してしまいます。
残念なことに、この「やり方(HOW)」の闘いを始めてしまうと、つい感情的に譲れなくなってしまい、「目的」を見失いがちになります。いうまでもなく、「手段」は「目的」のためにあるものです。でも、自分の慣れ親しんだ、好きで得意な「やり方」にこだわると、へたをすると「やり方」の方が目的よりも大事に感じられてきてしまうことがあります。
目的を見失った闘いは、消耗戦になりがちです。
「やり方(HOW)」の正しさを主張することに疲れきってしまい、本来の目的である「何を達成したいのか(WHAT)」を見失ってしまうとしたら、せっかく頑張ったのに、結果がついてこなかった、という疲弊感だけが残ります。
「やり方」の変化を求められていると感じたとき、これまでの自分の「やり方」も有効だったけれど、そろそろ「新しいやり方」を身につけるべきときがきたというメッセージかもしれない、そうポジティブに解釈できると、これまでは「自分にはムリ」と決めつけていた限界を一つ超えることができるのではないでしょうか。
実際、「やり方」を変えることで、今までの自分には持ち得なかった「考え方」や「方法論」を学ぶチャンスにすることもできます。「何故、そんな細かいところにこだわるのだろう?」とあきれていたようなことの意味や大切さが見えてくることもあります。
ひととおり「新しいやり方」にも対応できるようになる頃には、上司からの「信頼」を勝ち取り、かつて自分が慣れ親しんでいた臨機応変に対応するやり方の「いいところ」を、細かく丁寧につぶしていく「新しい上司のやり方」の中に持ち込むことができるようになり、こなせる仕事の幅はグンと広がっているはず。
時として、「やり方(HOW)」を変えるという小さな変化は、仕事を変えるといった大きなWHATの変化より難しく感じられます。実際、HOWを変えるのが辛くてWHATを変えることを選び、仕事を転々としてしまう人も少なくないようです。
でも、もし「新しいやり方(HOW)」に対しても、心を開くことができたなら、それが「新しい自分の才能」を開花させるきっかけになるでしょう。地味かもしれませんが、確実にあなたの才能の引き出しを増やしていくことで、次のチャンスの扉が見えてきます。
「新しいやり方」への挑戦をくりかえす、小さな「変容」の積み重ねが、振り返ってみると大きな変化、否、成長と感じられるのも、また、とても豊かな経験です。
次回は、「あり方(TO BE)」を変える、を考えてみます。
おしらせ
みずがきひろみのワークショップ
『お金と豊かさの心理学~あなたの人生のヴィジョンとつながる120分~』
日時:2010年3月6日(土) 18:30~20:30
場所:ゆうぽうと(東京・五反田)・会場案内>
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