【キビヤック】アザラシと海鳥の料理について



小学生の時、家族旅行で岩手県滝沢村のとある宿泊施設に泊まった。
今思えば、その施設で呼んだ営業仕事の人だったと思うが、夜、ゲームコーナーの脇にそのおじさんはいた。
「オーロラを見たことあるかい?」
と声をかけられた。
『なんじゃこの口髭のおっさんは?』と、人見知りの僕は拒否反応を起こしながらも、当時からガンガン特攻系の姉に手を引かれ、気が付けば体育座りで兄弟3人おじさんの話を聞いていた。

写真やパネルを使っておじさんは話す。話す話す。口唾飛ばしては話すのだ。
オーロラを見るまでの苦労話(自慢話)、北極の話(自慢話)、白夜の話(自慢話)。
夏休みで訪れた岩手の滝沢村でさえ僕にとっては未知であり、非現実の世界に突如放り込まれた興奮から奇声を発していたレベルなのだから、おじさんの話は心底エキゾチックで、
「いやぁ~あのとき死にかけたわ~」
とおじさんがいう度に、鼻の穴を大きくする竹森少年であった。
「北極の人って食べ物どうするの?」
という質問に、
「草も野菜もとれない。だから生肉を食べるんだ。焼いてしまうとビタミンが飛んじゃうから、生肉でビタミンをとるんだ。」
という、生肉話は特に覚えている。
「血抜きはどうするの?ねぇ、血は抜くの?抜かないの?」
と、血抜きの有無に対して異常な執着を示した姉の発言も何故か覚えている。
「北極で生き血は大事なビタミンなんだ。」
というおじさんの話に、カルチャーショックを受けながらも、口髭を真っ赤に染めながら生肉にむしゃぶりつくおじさんを頭の中で妄想し、若干のトラウマを覚えた。


さて、仕事の調べものをしていたら、【キビヤック】という料理を初めて知った。イヌイット族の保存食として知られる発酵食品だ。
①アザラシの腹をかっさばき、内臓と肉を取り除く。
②その皮下脂肪の筒の中に、捕らえた海鳥アバリアスを大量に詰め込みアザラシの腹を縫合する。
③地中に埋め込み、3~18ヶ月寝かせ、発酵させる。
④できあがり。

中のアバリアスを取りだし、羽と皮を剥がしたら、後は全てありがたくいただきます。
その食べ方がすごい。
肛門に口をつけダイレクトにチューチュー吸う。
発酵し液状になった肉をジュースにして飲んじゃうんだ。
頭の骨も割り、脳味噌も余さず食べます。
発酵させることでビタミンが豊富になるのだ。

いきる知恵。僕は知らない事ばかりだ。
ちなみに味は、くさやとか、シュールストレミング系のあれらしい。

キビヤックをすすりながらオーロラを見てみたいな。


キビヤック動画
衝撃的なので苦手な方はご遠慮ください。
https://www.youtube.com/watch?v=3OPRJL9UFuA