スタッフが久田にインタビューするシリーズです。
 久田がチェックしたあと、blogに載せています。

本と資料と記憶の話
ス  :緊急事態宣言が延長になりました。

久田 :なったねー。

ス  :できる限り外に出ない生活を心がける、ですがいかがお過ごしですか?
久田 :んー。本棚の一部整理とか、勉強とか?
ス  :本棚は資料の?
久田 :うん。資料の本って、一冊買うと関連書籍まで増やさざる得ないから。
    とんでもなく増えていくので、ある程度図書館とか電子書籍も利用して。
    それに読んだりコピー取ったりしていると、デスクとか床に置くわけです。

ス  :はいはい。それで困らせられます。
久田 :(無視して)ある程度読み終えたりしたものを棚へ戻す。
    できるだけ著者別や種別にしているので、それに合わせるんです。
    それがまた面倒で……。

ス  :本棚も当人にしか分からないルールとかありますもんね。
久田 :そうそう。無秩序に見えても、そこに法則性がある。
ス  :おかしいな、と思ったことに答えが分かったような気がします。
久田 :ん?
ス  :「あれに関する資料は、ここのこの本で、だいたいここらのページあったはず」
    なんて言うことが多いですよね?
久田 :うん。(内容と掲載位置は)おおまかに覚えているから。
ス  :それって普通なんですか? 周りにそんな人がいないんですけど。
久田 :普通だと思うよ? みんなしてるだろうし。そもそも所蔵している冊数が少ない。
ス  :そうなんですね。いや、ほら。訊くと「あ、それはあの本に」って。
    そこが不思議だなぁと思っていたので。
久田 :ははあ。いや、ほら。考え方を変えてみてよ。
ス  :考え方。
久田 :コミックで……そうだなぁ、例えばドラゴンボール。
ス  :ドラゴンボール。
久田 :単行本版の最終巻はラスト、覚えているでしょ。
    でも、完全版は書き下ろしがあって変更されている。
    それぞれ記憶にあるんだよね。
    で、例えば「ウーブに○○○をあげるシーンがあるのは?」
    そんな風に訊かれたら「完全版の最終巻だよ」って答えられる。
    感覚としてはそれと同じなんだと思うよ。
    もうひとつ言うと(資料の)数字とかグラフとか覚えていない。
    自分の記憶なんてそんな些末なものであって、特別でもなんでもないのよ。

ス  :記憶の整理と関連づけみたいですね。
久田 :それに近いかもしれない。
ス  :その割に仕事で大事なことは忘れますよね。
久田 :……ぼんやりさんだから仕方ない。
ス  :興味がないことは一切合切、欠落していますもんね。
久田 :脳の使い方が上手くないから仕方がない。

 

 

音楽理論知らずの話
ス  :いいわけはそれくらいにして。
    他は勉強?
久田 :うん。いろいろとね。あとアプリケーションの使い方とか。
ス  :アプリ?
久田 :ギタープロセッサのLINE6とか、あと作曲ソフトとか。
ス  :それは趣味のほう!
久田 :趣味の勉強だけでもないんだけど!
    元々音楽理論は全くないので、だいたいアプリの扱い方の勉強、かな。

ス  :作曲をするわけではなく?
久田 :そー。
ス  :じゃあ、何をするために?
久田 :作曲ソフトはドラムの打ち込みとベースラインを作りたくて。
ス  :既存曲の?
久田 :既存曲ではなくて。
    エイトビートのドラムパターンを打ち込んで。
    その上にルート(根音)を刻むベースを入れて、って感じ。

ス  :それはどうして?
久田 :ギターのアドリブをやるときのバッキングトラックとして使うの。
ス  :ばっきんぐ……?
久田 :ボーカルとかリード楽器の後ろでなっている演奏と思って。
ス  :ああ、カラオケみたいな?
久田 :まあそんなものです。
    そんなバッキングトラックを流しながらギターを弾こうかと、勉強。

ス  :……ギター、弾けないじゃないですか。
久田 :正論は人を傷つける。
ス  :はあ。
久田 :弾けなくても、弾けた感じに聞こえるのよ、バックに合わせると。
    おまけに一度打ち込めば、機械は絶対にミスらないから、安心。

ス  :音楽理論とか分からなくても大丈夫なんですか?
久田 :うん。大丈夫。体当たりと直感で打ち込むし。
    ベースラインも、例えば3コード進行のルートだけ繰り返せばいい。

ス  :楽器に触ったことがなくてもいけるんですか?
久田 :だと思うよ。MIDIキーボードなくても、マウスで入力できるし。
    でもほら、テレビとか「楽譜が読めません」って作曲家いるでしょ。

ス  :あ、いらっしゃいますね。
久田 :楽譜が読めなくても、音楽理論は身についていると思うんだよね。
    「このコード進行なら、この音階をあえて使う。リズムもこうして」みたいに。

ス  :理解してやっている、と?
久田 :そうそう。あとそういう人は圧倒的に耳がいい。
    リズム、メロディ、ハーモニーを自信の耳で判断できる。
    理論的に外れているけれど、かっこいいとか判断もできる。
    だから作曲をする人は特殊なスキルを持っているのよ。

 

 

「好き」の幅を広げる話
ス  :確かにそうですよね。
    今は、誰でもネットで公開できるから。
    そういうスキルがある人が埋もれずにすんでいると思います。
久田 :プロの音楽家も同じこと言っていたなぁ。ネットの重要性。
ス  :今はそうですよね。
    でも、見方を変えると、我々の審美眼も鍛えられていると思うんです。
久田 :うん。判断するのはリスナーやユーザーのセンスに負う部分が大きい。
ス  :選ぶのは自分ですからね。これがよい、苦手、とか。
    そういう判断力って、どう鍛えるべきでしょう?
久田 :あー。難しい話だね。
    そこは単に好みでいいと思う。だって好みはその人の経験値に比例するから。
    苦手な曲調のものでも、他の人にはいいものかもしれない。
    それは自身の趣味と経験値のよる差だと思うんだ-。
    クラシックとか苦手だったけど、あるきっかけで変わることもある。
    それが経験値であり、そこから趣味が変わる。
    だからまず〈今、自分が好きだ!〉っていうのを信じていいと思う。

ス  :ふんふん。
久田 :その「好き」からどんどん範囲も広がるし、経験値も増えるよ。
    好きな音楽をやっている人がお勧めするとか、影響を受けたものを聴くとかね。
    そのとき、新しい音楽に目覚めるかもしれない。

ス  :ともかく、聴け! ですね。
久田 :うん、そうそう。恐れずに、楽しむ。
    あとは好きなアーティストが「曲と歌唱力、演奏能力を売りにしている」のか
    「作曲・アレンジ力を売りにしているのか」も見極めてね。

ス  :っていうと?
久田 :ネットの演奏動画って、何度でも撮り直せる。
    あと映像は残して、音源だけ差し替えたりね。
    そのとき「曲が好き」なら演奏力は別に気にしないで良い。
    でも演奏力含めて好き、なら注意しておいた方が良い。

ス  :はあ。
久田 :ライブとかで一発演奏だとボロボロな人もいたのよ。
    凄い流麗なフィンガリングとかで綺麗に弾くのが売りのギタリストがいてね。
    でも、一発演奏だと弾けていない。
    多分、いつもは差し替えしていたんだと思う。短いフレーズごとに、とか。
    プラス、音作りの問題。
    自宅だと楽に弾けるセッティングをしていたようで……。
    でも人前の演奏ではそれが使えなかったんじゃないかな。

ス  :演奏技術込み(で好き)なら、ちょっとつらいですね。
久田 :練習したら技術は上がるから問題ではないんだけどね。
    だからそこを含めて温かく見守る、そんな応援もある。

ス  :推しを応援!
久田 :うん! って何か上から目線っぽくなってきたなぁ。やだわあ。
ス  :あははは。
    ギター弾けない人に「ライブでボロボロ」って言われたくないですよね。
久田 :正論は人を傷つける。