映画公開まであと少し&「樹海村〈小説版〉」発売記念!


 ということで、樹海とはなにか、をまとめてみました。
 多分、諸兄姉の抱かれるイメージは
「自殺の名所」
「一度入ると迷って出てこられない」
「自殺者の遺体がある」
「心霊スポット」
 が真っ先に浮かんでくるかと思います。

 果たして、樹海とはそれだけなのか?
 樹海のもうひとつの姿を御覧下さい。


Q・樹海の正式名称は?

A・青木ヶ原樹海
  別名「富士の樹海」とも言われます。



Q・青木ヶ原樹海は何処にあるの?

A・山梨県富士河口湖町の鳴沢村にまたがって広がる原生林です。
  位置は富士山の北西麓。
  地図上では富士山を中心に見て、左上に広がる森の一部になります。
  大室山展望台からなら南西方向(地図上だと左下)に望める、お椀型の山から本栖湖にかけた一帯が青木ヶ原樹海、と覚えるのもお薦めです。



Q・どうして青木ヶ原(富士の)樹海と呼ばれるの?

A・富士山頂から眺めた際、広大な森の木々が海原でうねる波のように見えたことが「樹海」と呼称されるきっかけになった、とか。
  樹海の歴史は1200年程度。まだ浅く、若い森です。



Q・青木ヶ原樹海って、国の天然記念物に指定されているって本当?

A・本当です。
  富士箱根伊豆国立公園に属したこの森は〈富士山原始林 及び 青木ヶ原樹海〉という名称です。
  国の天然記念物に指定されています。
  他、国立公園の特別保護地区にも指定されており、世界文化遺産の富士山域に含まれています。凄い!



Q・若い森っていうけれど、青木ヶ原樹海はどうやってできたの?

A・西暦864年(貞観6年)に起こった富士山の大噴火が始まりです。
  1157年前なので、約1200年前のこと。
  噴火は富士山の北西山麓で起こりました(これが貞観大噴火です)。これにより流れ出た溶岩が大室山を迂回するように流れる際、元からあった森林地帯を焼き払ってしまいます。
  更に溶岩流は北部の麓にあった広大な湖まで到達し、その大半を埋め尽くしました。
  この溶岩地帯に長い時間を掛けて、ツガ・ヒノキやハリモミ・ヒメコマツ・アカマツなどの針葉樹が根付き、原生林となります。
 これが青木ヶ原樹海誕生の経緯です。
 因みに、原生林とは、災害や伐採がなく、人が殆ど手を入れていない林のことです。
 溶岩流が分岐した大室山の麓では、噴火で燃えなかった広葉樹が山側に、溶岩でできた樹海側に針葉樹が主に生えています。
 広葉樹は明るいグリーン、樹海側の針葉樹は暗いグリーンでですので、意外と境目がクッキリと確認できるでしょう。
 もちろん樹海内にも広葉樹は存在しておりますので、「針葉樹と広葉樹の混合林」ともいえます。当然、樹海には樹木伐採などの目的で過去に人の手が入ったこともありますが、規模などから考えて基本的に原生林と言って差し支えないようです。



Q・青木ヶ原樹海には洞窟が多いって本当?

A・マジです。ホンマです。
  溶岩流によってできた溶岩地帯に樹海ができたのは、すでにご存じと思います。
  この「溶岩が流れ込んで形成された土壌」には溶岩洞窟というものが多数見られるのです。
  有名なところだと、富岳風穴、鳴沢氷穴、西湖蝙蝠穴などの大きな洞窟があります。
  それ以外にも大量に溶岩洞窟は存在していると考えても差し支えありません。

  溶岩洞が掲載されるパターンは以下の通り。
1・溶岩の表面が固まった後、内部にあるまだ柔らかい溶岩が流れ出たことで生じた空洞
2・流れ出た溶岩内に生じた、高圧の火山ガスが抜けた空洞

  なので、樹海内部は多数の空洞が生じています。
  また、固まった溶岩は冷えていく過程で、その表面が皺が寄るように固まります。
  更に風雨の浸食に弱いのです。

  だから、樹海内部の地表は凹凸が激しい、と。
  めっさ歩きにくい理由はこれ。
  更に凝固した溶岩で形成された土質はガラス質を多く含むため、スッテンコロリと転倒などをしたときに怪我をしやすいので、できるだけ気をつけましょう。
  でも転びやすいんですけれどね。
  ともかく、樹海内部を歩く際は、皮膚が出ないような服や頑丈な靴を準備することが肝要だと思います。肌が出た軽装で突っ込むと痛い目に遭います。物理的に。

 

 あ。あと富士の麓の洞窟と言えば、聖闘士星矢ですよね!

 今も、洞穴の底に天馬座のマスクは眠っているのでしょうか?



Q・樹海の中に道路があるって本当?

A・本当っす。
 〈国道139号〉〈県道71号線〉などが通っています。
  車での通行が可能です。
  ドライブにいかが?



Q・青木ヶ原樹海内部は、コンパスとGPSが効かないって聞くけど?

A・効きます。
  コンパスも使えますし、GPS・地球全域測位システムも拾えます。
  これに関して否定側からの意見がございまして。
  「磁性体の岩、磁鉄鉱があるからコンパスを狂わせるんだ!」
  確かに、マグマが冷えると鉄を沢山含んだ結晶ができます。
  これを磁鉄鉱と言います。
  磁鉄鉱は磁力を持っています。
  当然、樹海内にも磁鉄鉱がありますが、それは地表に近いところです。
  手に持ったコンパスへの影響は微々たるものと考えて差し支えありません。
  またGPSのロストもないようです。
  普通にビル群の合間を歩いているときですらGPSを拾わずエラーになることもありますから、条件か機器の不具合を疑った方がベターかと思います。

  とはいえ、人知を越えた何かが世界には存在しています。
  だから、何があっても不思議ではありません。
  回答者である私も、身をもって体験しています。



Q・なら、青木ヶ原樹海で迷わないの?

A・迷うときは迷います。
  何故なら、登山でも街中の散歩でも何でも、人は道に迷うからです。
  原因は「過信と判断の失敗」ではないでしょうか?
  慣れているから大丈夫、や、こんなところで、の油断が道迷い遭難を引き起こします。
  また、途中で引き返す、或いはまともな行動を取れば迷わなかったのに、それすらせずに突き進んでしまうという判断の失敗が原因でもあります。

  樹海のみならず、街中を歩くときも「自分が今どこにいるか」「自分が進んできた方向はどっちか」を確認しながら歩けば、迷うことは激減します。


 ということで、「樹海ってなに?」いかがだったでしょうか?
 青木ヶ原樹海は自然豊かで、とても貴重な、面白い原生林です。
 足を運べるようになったら、是非!

 でも夜とか、天候不順のときは避けましょう。
 何故かって?
 それは……ほら、ねぇ……。