をかし。
 古文に出てくる美的理念のひとつ。

 ってことで予想されている方もいらっしゃったでしょう。
 五十音の「を」だと、をかし、がまず頭に浮かびますよねぇ。
 古文の授業でさくっと覚える「いとをかし」。
 それこそまさに、いとをかし。

 さて、「をかし」の意味で真っ先に出てくるのは「趣がある」かと思います。
 もちろん他にもいろいろありまして。

 1)滑稽だ おかしい 変だ 
 2)興味深い 心が引かれる おもしろい
 3)趣がある 風情がある
 4)美しい 優美だ 愛らしい
 5)すぐれている 見事だ 素晴らしい

 趣きがある、は3ですね。
 あと似たのに「あはれ」もありますが、それぞれ使い分けがございます。
「をかし」が直感的であれば、「あはれ」は情緒的という感じ……っすかね?

 この「をかし」の前に「いと」がくっつくと強調になります。
 例えば「いとをかし」であれば、非常に趣がある、や、凄く可笑しい、すんげえ興味深い、ごっつい美しい、めっさ優れとるばい! とか?(途中変なのがあるな)
 それと「いと」には、打ち消しの用法もあります。
 それほど、たいしてー、って、否定の意味ですね。

 普段の生活で、「いとをかし」を思うことが多々あります。
 四季それぞれであったり、毎日の空模様だったり。
 或いは、目にした物や、耳にした物。味わい。感触。
 そして、周りにいてくれる人々。または出会う人。
 美的理念としての「をかし」を抱くことは沢山あります。
 とある機器に隠された機能。
 使っている金属スケールの少し便利な表記。
 デザインから生じるペン本体の滑らかなライン。
 見上げた空の高さ。
 寒い朝に遠くから聞こえる烏の声。
 いくらでも「をかし」が身の回りにありますよね。
 だから以外と毎日新鮮に生きていたりするのです。
 幸せな脳みそ構造のなせるワザ! ってことかもしれませんが。
 いや、どっちかというと何も考えていないだけか……?
 どっちだ!?
 ともかく、皆様も身の回りの「いとをかし」を探してみては如何でしょうか?
「をかし」探し、とっても楽しいの。うふふふ。ふふふふ。

 おっと。我に返った。
 物書きという仕事をしていると、常々思うのです。
「をかし なものを送り出したい。出来れば、いと が付くような」と。
 それは名文や美文を書きたい、表現したい、というものではありません。
 読んで頂いた人の心に「いとをかし」が届けばどうあってもいいのだ、と思うのです。
 極論を言えば、文章になっていなくとも、読む人に「をかし」と自然に感じて貰えればいい。感じて貰えればいい。
 そう考えています。
 道は遠く険しくとも、そのうち何とかなるだろう!
 楽天的ではありますが、それもまた「をかし」な道です。

 いつになるか分かりませんが、ゆったりと見護って貰えたら幸いです。