肘。

 腕の関節の外側部を指す。

 

 はい。肘です。

 ずーっと以前に〈十回クイズ〉ってあったじゃないですか。

「みりん、って十回言ってみて」

「みりんみりんみりんみりん……」

「鼻の長い動物は?」

「きり……あ、象! 象!」

 みたいなやつです。

 この十回クイズの中で「ピザって十回言ってみて。はい、これは(と言いつつ、肘を指す)?」バージョンがあります。答えは肘ですが、引っかかるとヒザと答える奴です。

 えー、私ね。これやられてですね。こう答えましたよ。

「……ピザピザピザピザ」

「これは?(肘を指す)」

「(自信満々に)ピジッ!」

 ピジて。ピザでもヒザでもなくて、ピジて。

 それ以来、肘と口に出す度、脳内に「ピジ」って言葉が浮かぶようになったのです。

 

 さて、肘と言えばこんなものもあります。

「テケテケ」。

 学校の怪談的な妖怪の類いです。

 下半身の内人間が、廊下や道路の上を肘だけで〈テケテケ〉と追いかけてくる……ってパターンのもの。

 結構なスピードが出るらしく、車やバイクに追いついてくる話もあります。

 でも、肘だけでそこまで加速できるのは凄いですよね。

 匍匐前進をやってみて頂きたいのですが、あれは肘だけではなく、他の部位も使います。柔道だと腹ばいになって、手はグー、手首から肘までを畳に付けた状態で腕を曲げる力で前進する〈絞り〉という進み方がありますが、これも速度が出ません。

 ってことは、テケテケの身体能力スゲー! ってことになります。

 

 しかしながら、不肖・久田樹生。

 妖怪さんへの対策に抜かりはありません。

 このテケテケならば、向かってきたところを迎え撃ちます。

 肘を使って移動しているってことは、両手が上手く仕えないはず。なので、その顔面に向かって蹴りをぶち込みます。はい。サッカーボールキック、ってやつです。

 ノーガードで顔面に蹴りを叩き込まれたら、テケテケでも大ダメージでしょう。

「でも、車やバイクに匹敵するスピードだと、こっちの足が壊れちゃうんじゃね?」

 はい。そんなときは、これ。

 超絶速度でやって来たテケテケの上を飛び越え、後ろから攻撃、です。

 腹ばいの人間はさほど高さがありません。

 相手がやって来るのに合わせて、上空を飛び越えます。ほら、映画「地上最強のカラテ」でやっていたでしょ? 走ってくる乗用車を横跳び蹴りで飛び越えるの。あの要領でオッケーです。あそこまで高くないので楽ちん。

 飛び越えたところ、向こうが方向変換する瞬間を狙って近づき、その顔面に蹴りを打ち込むのです。隙だらけ&止まっているので狙い撃つのは簡単でしょう。

 或いは、飛び越える際、上方から肘を突き出し落下しても効果的ではないでしょうか。

 プロレス技のエルボー・ドロップですね。

 

 これであなたもテケテケは怖くない!

 単なる、肘で進んでくる上半身だけの人です!

 さあ、レッツ! テケテケ狩り!