讃えよ! Caparison Guitars。

 

 Caparison Guitars。

 ギターデザイナー・菅野到氏が設立したギターメーカー。

 キャパリソンと読みまして、中世的な馬衣。馬飾り。動詞なら、飾り立てる。他、人や馬の正装などの意味があります。

 

 

 沿革としてJackson/Charvelを日本国内で展開していた共和商会が1995年に菅野到氏と設立したギターメーカー。ここより送り出される〈楽器〉はJackson/Charvelで研鑽を積んだ菅野氏のアイデア、技術が詰まったものであり、国内外からの評価が高まっていく。しかし、2011年に協和商会が倒産。同年、イギリスの販売会社代理店に買収され『Caparison Guitar Company』として再出発を切った。以降イギリスに本社、日本の東京に『Caparison Guitar Design』というオフィスを構えている。楽器の製造は現在名古屋市の加藤楽器によって月産30本程度となっている。現在も国内外のプレイヤーに愛されるGuitarメーカーである

 

 さて、せっかく2026年丙午の節分なので!

 ここからは個人的な妄想を含めた「Caparison Guitars」の説明を書きます。個人的な、ってところがポイントでして。機材知らずの知識なしがやることですので温かい目でご覧頂けたら、と思います。あと讃えまくり。

 ……単なるCaparisonいちファンの妄言だと捉えて下さい。ええ。

 調子に乗って書いていたら、結構な文字数に。お許しを。

 

 

讃える前に、ネガティブな発言。

 

「Caparison Guitars(以後Caparison表記)」ですが……。

 超ぶっちゃけると、イギリス資本が入ったところで「この先、Caparisonらしい楽器デザインが何処まで続いてくれるのだろうか?」と思ってしまいました。

 資本主義の世の中、親会社の意向ってかなり反映されてしまうんですよ。それがどのような業界であれ。この辺りは良い悪いではなくて、会社の舵取りは経営者側に或る、という意味です。

 だから「Caparisonの菅野氏が拘っているギターデザインそのものに、経営側が口出しをしてしまうのでは?」という恐れを抱いたのです。

 例えば「世界で売れているギターメーカーの真似をしろ!」「Caparisonらしさなど要らない」なんて言われたら中々逆らえない訳。それに異を唱えれば現デザイナー・菅野氏をトバして、他の〈何でも言うことをきく、御用聞き的なデザイナー〉を雇える権限がありますから。

 しかしそれも杞憂に終わりました。親会社はCaparisonと菅野氏を大切にしてくれた模様ですので。ほっと胸を撫で下ろしている……のですが、イギリス資本になった後の値上げと同時に、一部を除きハードケースの廃止が行われました。あのハードケース好きだったのに……。

 コスト削減、また世相を鑑みた値上げだったのでしょう。致し方なし。

 でもなー。ねぇ?

 

 もちろん単なるコストカットや値上げだけしているわけじゃありません。

 CaparisonはC2モデルを開発し、その後日本国内での取引先を増やしました。

 沢山のプレイヤーがCaparisonを手に取るために購入のハードルを下げる、という目的があったと思います。企業として当然の動きです。

 楽器や関連機材の価格が一時期の倍以上になっていて、おいそれと新規プレイヤーが参入するには厳しい状況ですから。ここは世界中同じ状況だと思います。

 と同時に、どの楽器メーカーも顧客である「プレイヤー」を増やすため、様々な企業努力を行っています。例えば初心者へ向けた商品と同時に、楽器演奏のHowToやQ&Aをネットですぐ見られるようにする。或いは製品の使い方セミナーを無料開催するのなどの展開もあります。Caparisonだと無料調整会とか、小回りの効くケアとかでしょうか。これにより新規プレイヤーは安心して楽器を……と言いたいところですが。それもなかなか厳しいのが現状です。

 やはり世界的な楽器高騰が足を引っ張っているのが現状です。

 

 とはいえ、Caparisonは今もきちんと評価され続けています。

 ああ。よかった。でも海外だったかな? 「Caparisonに憧れるが、価格の点で手が出ない」って声もありました。やはりここでも価格問題。うーん。

 対策としてのC2シリーズも結局「(国内外問わず)レギュラーシリーズでえええんちゃいますか?」ってなったっぽく。結果、生産完了になりました。まあC2ってCaparisonらしさがやや薄いので、気合いを入れてレギュラーシリーズやカスタムラインを、って考えるプレイヤーも多かったでしょうしね。あ。Caparisonのシリーズ説明は後ほど。

 

 もうひとつネガティブ情報を言えば、Caparisonのギターはネックがオイルフィニッシュのせいか結構動く……個体もあるようです。高温多湿な日本だとね。でも全く動かないのもあれば、動いていても数年で安定するものもあります。あんまり深く考えなくて良いかも。

 

 あとひとつ。

 Caparisonは日本ではややマイナーなギターメーカーらしい。

 何でや! あ。生産数か……。

 日本国内10から15本、海外10から15本。月出荷台数はこんなもんで。

 でもそのおかげで小回りの効くアフターケアも充実しているのです。ここ大事。

 

 

 

Caparisonとわたくし。

 

 最初にCaparisonとわたくしについて。

 先ほど書いたことや後から出てくる話と重複することが多いですがご容赦を。

 

 Les Paulコピーモデルで始まったわたくしのエレクトリック・ギター生活。

 ソッコー挫折した後、長い期間ギター演奏から離れた訳……ですが!

 いろいろなきっかけ(ホントいろいろ。小説を書くためにとかね)でギターを再開しました。

 再びギターを弾き始めてから、Les Paulコピーモデルとは違うタイプに興味を引かれ、新たなコをお迎えしようかと考えたのです。せっかくだからStratocaster! なんて思っていたのですが気がつくとIbanez……。

 テクニカル系ギタリストがよく使っていたこともですが、我がパイセンがIbanezとFenderを持っており「Ibanezええで」と勧めてきたこともあります。

 で、SRG420FMZを新古品で導入した訳です。詳しくは下のリンク先より。

 

 

 確かにIbanezはよいギターでした。

 ここから次に様々な安ギター、Jackson、再びIbanezなどへ行くのです。

 演奏スキルは上がらぬままに。

 

 そして、ある日渋谷へ出掛けたとき、Caparison実機を手に取る機会がありました。

 当時、Caparisonを扱うギターショップが渋谷に……っていうか、Caparisonを調べていたら、見つけたというか。

 その途端、「あ。これだ」と直感したんですよね。

 コイツは凄い。なんだこれ――JacksonもIbanezも吹っ飛んだ瞬間でした。

 もちろんこのお陰でJacksonとIbanezの良いところも再認識するわけですけれど。

 しかし、こんな機材知らずのド下手くそでも分かる凄み。

 それだけでも特別なことなのデスよ。

 

 その後、いろいろあってCaparisonをお迎えしました。

 その後、C2とかも導入して「ああ、レギュラーラインとC2は違うのね。でもこれはこれで汎用ギターだよね」という展開も待っていましたけれど。

 

 そのままCaparisonスゲエやのまま今に到ります。

 何故スゲエのか理解していませんでしたけど。そもそも機材知らずの人間ですからね。理屈より自分の感覚だけで判断していただけなのです。

 

 今回、このエントリを書くにあたって、ちょいちょい調べました。

 その結果、改めてCaparisonスゲエって思いましたよ。

 その程度の知識量の人間が書くCaparison情報。

 緩く目を通して頂けたら、と思います。

 

 

Caparisonの特徴。

 

 Caparisonの特徴。

 メーカーサイトで説明されておりますので、ここからは個人的見解となります。

 呆れずにお読み下さい。

 

 まず、前提として。

 CaparisonはJackson/Charvelの流れを汲む楽器です。

 Jacksonの創始者であり、Charvel社を購入したグローバー・ジャクソンはデザインを数式で表したと言います。そして求める音を優先したデザインをしていたようです。極論ですがトーンありきという、ある種逆算的なデザイン方式であったと言えるでしょう。だからグローバー・ジャクソンの楽器は「こうしたらこういう音が出る」という明確な指針を持って構成されているのです。

 そのグローバー・ジャクソンのデザイン理念を菅野氏は学びました。

 ですから、CaparisonはそのJackson/Charvelのデザイン論を更に進化させたもの、と言い換えてもよいでしょう。

 

 そのCaparisonの代表的なモデルは

「TAT(スルーネック。所謂Soloist。Through And Through)」

「Orbit(Vシェイプ)」

「Dellinger(所謂Dinkyタイプ)」

「Horus(Dinkyタイプだが、ネックがミディアムの27F)」

「Angelus(セットネック、ダブルカッタウェイ)」

 ですが、ここにもJackson/Charvelのデザイン理念が息づいています。

 例えばコニカル・フィンガーボード/コンパウンドラディアス。

 ナット側からボディ側へ向けて指板のRが緩やかになっていくことで運指がし易くなる構造は、Caparisonにも受け継がれています。またネック材をヘッド近くで一旦カットし、角度を受けて再接合したスカーフ・ジョイントなども継続です。

 CaparisonにはJackson/Charvelで学んできたものを菅野氏が惜しみなく投入されていると言っても過言ではないはず。

 

 ただ、それだけでは終わりません。

 更にCaparison独自の「ナット近くでは握りが台形(Dシェイプ)だが、ボディに近づくほど滑らかな弧を描いて(Cシェイプ)変化、プレイアビリティを向上させる」「指板上のインレイはクロックインレイで、ポジションごとに指す時刻が違う。例えば1フレットなら1時。12フレットなら12時である。当然、ネック剛性によってはインレイを入れない決断も行う」、「ヘッド角度、ネック仕込み部などへの拘り」「小ぶりかつ、様々なボディ構造」「自社開発ピックアップ」「特徴的な塗装理論」「2:4ペグのデビルズテイルヘッド」などの特徴的なデザインが採用されています。

 

 ※デビルズテイルヘッド。基本的なCaparisonのペグ配列とクロックインレイが確認出来る。

 

 その後もモデルごとに新アイデアが採用され続けていますが、どれも「求めるトーンのためのデザインである」ことが分かります。

 このCaparison特有のポイントが、Jackson/Charvelとは違う弾き心地と特有のトーンを生んでいるのです。

 

 では、Caparison特有のトーンとはなんでしょうか?

 一般的に「ミッドローが強い、メタルトーン」であると言われています。

 菅野氏曰く「Jackson/Charvelがハイミッドに寄っていたので、独自性を出すためにCaparisonはミッドローへ舵を切った。更にTATなどはブースターを入れて普通の音が出ないギターを打ち出した」とのこと。

 

 

 確かにその通りの部分もあります。でもそれだけでもないんだなー、これが。

 まあそれは後からとして。

 

 さて。Caparisonが採用している仕様。

 その中でトーンやプレイアビリティに関係する部分をざっと簡単に書いてみました。お急ぎの方はこれだけでもお読み頂けたら、と存じます。

 

「ヘッド角度、ネック仕込み部などへの拘り」

 ヘッドに角度を付けることで、ストリングテンションバーを用いなくともゲージに最適なテンションを掛けられることで、張りのあるトーンを生む。その角度は15度。ネックの仕込み部はシムを挟まず密着させることでネックの剛性や安定度を増し、弦振動を逃がさない。

 

「ナット近くでは握りが台形(Dシェイプ)だが、ボディに近づくほど滑らかな弧を描いて(Cシェイプ)変化」

 ネックに近いローポジションでは台形でコードワークなどがプレイし易く、ボディに近いハイポジションへ移動すればするほど滑らかでスピーディな運指がし易くなる独特の可変シェイプ。長時間のプレイでも疲れにくい。

 

「2:4ペグのデビルズテイルヘッド」

 5、6弦と4~1弦で2:4のペグ配列は、ゲージテンションをコントロールするため。ゲージテンションは音に無関係ではない。またペグはGotoh製でポストを上げ下げして更に細かい張力調整が可能となっている。

 

「スカーフジョイントを採用する」

 ネック材をヘッド周辺でカットし、角度を付けて再接着するスカーフジョイントは一部プレイヤーから敬遠される。が、このスカーフジョイント接続部・接着面は伝わって来た音を再びボディ側へ反射して無駄にしない。また、ヘッド部へ余分な振動を逃がさないことで余計な共振を制御できる(粒子入り塗料「Pro. Black」を塗ることで、更に振動を抑えるモデルも存在する)。

 当然だが、多弦ギターのような弦の張力が強いものには剛性の問題でスカーフジョイントは採用されていない。

 

「小ぶりかつ様々なボディ構造」

 日本人でも収まりの良い小ぶりのボディは、最終フレット周辺でもプレイアビリティを得られるようなシェイプになっている。

 またギターごとに各種トーンウッドの使い分け、M3などの〈中心と左右で異なるトーンウッドを組み合わせる〉などのボディ構造を含め、様々な理論で全体が構築されている。更にその体積にも拘りをみせる。ロウアーホーン付け根を弾き易さ優先で削り取った場合、その分を他へ移動させる。これにより左右非対称ボディになるが、それは理想とするトーンを実現するためである。

 そして各キャビティは落とし込みとなっており、丁寧に仕上げられている。

 更にギターケーブル差し込み口、ジャック部はボディエンド側面に斜め上を向いており、ケーブルが抜けにくくなるようにしてあるのもポイントだろう。

 

「FRTユニット部のリセス加工を安易によしとしない」

 Dinkyなどのスーパーストラト系には〈FRTユニットをボディに落とし込んでプレイアビリティを上げる方式〉がある。ただし、それを行うとミッドローが削られる。そこで敢えてFRTユニットを設置するためのスタッドをボディ表面に設けることでミッドローをスポイルさせないようにした。プレイアビリティよりもトーンを優先した結果である。

 またフィクスドブリッジの場合も、ユニットを厳選し、ボディにきちんと密着させることで意図したトーンを出せるようにしてある。

 

「特徴的な塗装理念」

 塗装は基本的にポリウレタンだが、その塗膜は必要な分だけに留めている。また、前述のPro.Black塗料で全体の振動を抑制、必要な周波数帯を強調するなど、トーンを制御させるファクターとして活用しているのも特筆すべき点だろう。加えて、個性的な塗装/グラフィカルなデザインにも注力している。

 また一部を除き、ネック裏はオイルフィニッシュを採用している。これもまたトーンへ影響する箇所である。

 

「自社開発ピックアップ」

 ギターデザインはピックアップまで及ぶのが当然だ。

 Jackson/Charvelでもそうだったが、Caparisonでは各モデル及び求められるトーンにより自社開発のピックアップを組み合わせて搭載している。

 また、その搭載方法も求めるトーンによりダイレクトマウント、エスカッションマウントを使い分ける。

 このピックアップ群は異様なまでピーキーな設計・構造であるが、それも全てはトーンのためにある。

 Caparisonの配線はプロプレイヤーの使うものと同じ方法/プロユース仕様で行われていることもポイントだ(2006年以降)。またピックアップに合わせて配線材などをチョイスしている。導電塗料及び配線、キャビティカバー含めてローノイズを実現するための対策も打っていることで、クリアな電気信号をアンプなどへ送り込むことが出来る=大音量での演奏の際、際だった音が出せるということである。

 以前は個別販売をしていなかったこれらピックアップだが、現在は単体で入手することが出来る。その際樹脂カバーを付けたものへ変更されたモデルも登場した。そのカバードタイプは型式の末尾にCoverの「C」が付く。例えば、SH-27FCである。また、取り付けビスの本数を指定する「2S(ビスが片側に1本ずつ)」と「3S(ビスが片側に2本、逆側に1本。これによりベースプレートの足部分のサイズが大幅に変わる。Caparisonのギターはこの計3本の取り付けになっている)」があるので購入時には注意が必要であることを留意して頂きたい。

 

「ギターデザイン=トーンデザイン」

 楽器本体そのものの音(生鳴り)の時点で高レベルを実現している。

 整った弦振動は正しいピッチやロングサステインに繋がり、プレイヤー自身が心地よく演奏するための素地を与えてくれる。

 ここにプロユースな電装系、自社開発ピックアップが載ることにより、電気楽器としてのトーンデザインが完成する。

 

 纏めてみて驚いた。

 Caparison、やっぱ凄いじゃん!

 

 そして、菅野氏のデザイン論には他にもいろいろあるんですよ。

「ボディ形状による音の伝達方向を見極める。そしてそれをボディ形状を変えずにコントロールするための方法をとる」とか。

 そして氏曰く「音と弾きやすさのバランスを取ってデザインしている」。

 プレイアビリティのみを追い求めず、ギタートーンも追求する。

 それがCaparisonのデザイン理念なのです。

 研究者的な視点と共にプレイヤー目線でギターデザインを行っている。

 それが菅野至氏という希有なデザイナーなんですよね。

 

 それにCaparisonはミッドローが強いだけのメタルギターなのかと言えば、そうでもありません。十分トレブルも出ています。これがCaparison特有の「太く重心が低いトーンなのに、バンドアンサンブルから抜ける音」の理由なのでしょう。

 この音の理由はきっと「プロユース配線」+「独自開発ピックアップ」も大いに寄与しているはずです。

 そのピックアップの詳細は下に。

 

 

 Caparisonのピックアップは結構無茶で特殊な構造なんですよね。

 一例を挙げると、Caparisonの代表的ピックアップ・PH-R。

 このピックアップは内部マグネットが〈異方性セラミックマグネット〉となっていて、弦振動をきっちり拾うようになっています。加えて、幅広い音域とハーモニックス/サステインの拡充にも寄与しているのです。

 まあ平たく言うと超ハイパワー・ピックアップ。なのに繊細なタッチも拾います。ってことはミスも目立つピックアップなのでわたくしのような下手糞には厳しいものなのですが、それよりこの素晴らしいトーンを生み出す魅力には抗えません。

 他のピックアップも独特のアイデアが満載ですので、是非公式HPをご覧下さい。

 

 異方性マグネット/磁石とは、磁化方向・N/S極の向きを一定方向へ揃えている磁石。これにより特定方向へ強い磁力を発生させる(等方性磁石はあらゆる方向へ磁力を発生させるので、異方性磁石より磁力が弱くなる)。PH-Rにはこの異方性セラミック/フェライト磁石が三つ、直列配置してある。具体的に言えば、ピックアップボビン中央に長方形マグネット/棒磁石、それよりも短いものを左右に、である。この配置で強力な磁場/マグネティック・フィールドを発生させている可能性がある……と思うのですが、これが正しいかは分かりません。そもそもCaparisonサイトに記載されている異方性セラミックマグネット以外のセラミックマグネットは〈一般的セラミック〉とわざわざ記載しているので、磁石そのものが特殊なものなのかも知れません。基本的にギター用の磁石は異方性であるような気もするのですが……。もしかすると、特殊異方性セラミックマグネット+PH-Rのマグネット配列がポイントなのか。はたまた三つのマグネットそれぞれの磁力を発生させる方向が特殊な仕様なのか。この辺りは技術資料が公開されないと分かりません。

 

 そんな訳でCaparisonのピックアップたちはとてもピーキーなチューニングをされているのですが、それは「自社デザインの楽器に合わせ、欲しいトーンをコントロールしている」からという証左でもあります。

 

 そしてCaparisonのギターはハイゲインアンプで歪ませて弾く前に、まず「生音」。そして「どクリーン」に設定したアンプやギタープロセッサで鳴らしてチェックしてみた方が魅力が伝わりやすいと思います。生音で楽器本体の素性を知り、クリーンアンプで電気楽器としてのトーンを体感し、最後にハイゲインの凄まじさを認識する。

 どのパターンでもギターらしさ満載の美味しいトーンを生み出しています。ボリュームの反応もよいですよ。クリーンからハイゲインまで変えられますし。

 単なるメタルギターじゃないよねCaparison、って感じ。

 

 そんなクリーン系は下のXにて。

 本当に「ギタープロセッサのアンプ+キャビをそのまま置いて、リバーブブロックを置いたのみ」です。

 Caparison Dellingerを繋いで弾いただけでこれか! と驚きました。

 上手い人がジャズを弾いても合うんじゃないかなあ。

 

 

 今度はLine6 Helix/HX Stompにあるファクトリープリセット。

 コイルタップしたヘッド側ピックアップ/SH-N(ノンカバード)で鳴らしています。プロが作っていていろいろ手を加えられているプリセットですが、なんとなく「いなたい」感じを受けます。

 

 

 そして下のはXにポストしていた音源ですが、改めて。

 全部Caparisonの音です。PH-Rを主に使っていて、何本くらいギターを重ねたかな? ボリュームペダルによる歪み調整でクリーン~クランチ~ハイゲインを使い分けていたはずです。サステインがありすぎて(!)、意図して出音の伸びをコントロールしないといけなかった記憶があります。

 

 

 更にノリ一発で重ねていく手法で録ったのが下のポスト。

 フルピッキング、スウィープ、タッピングなどが随所に出てきます。凄く軽いタッチで弾いているのに、ガッツリ拾ってくれるからこそ、こんなドヘタでもそんなことがある程度出来ている、ように聞こえるのでしょう、きっと。出来てないけど。

 Caparisonは生音でも凄まじいサステインがあるのですが、ピックアップやアンプセッティングでそれが更に伸びます。ギター全体で弦振動が増幅される感じがありますなあ。その上で、クッキリしているというか(わたくしの演奏ではそれが伝わらないのが歯がゆい)。

 

 

 ……と、これまで上げた音源ばかりで申し訳ないところ。

 気が向いたら新録で何か追加するかも知れません。

 

 このCaparisonトーンは、是非ショップ店頭で体感下さい。

 その際のお薦めアンプは上にも書いていますが、クリーンセッティングアンプです。

 クリーンで各ピックアップポジションとノブ調整でどれだけ多彩なトーンが出せるかをお試し下さい。結構驚くはずです。

 あ。そして密度ある生音も要チェック。ギターがキチンと鳴っているぜぇ~! って気持ちになってテンション上がります。もちろん弦振動を無駄にしている感がないのがまた凄いよね。

 

 まあ、ぶっちゃけ、音がええんでね。Caparison全般。

 そうそう。わたくしの場合、

・Marshall+12インチ×4発キャビ

・Roland JC120

・Laney IRT-Studio+12インチ×2発(或いは1発)キャビ

・BOSS KATANA- Head MK2+12インチ×2発(或いは1発)

・BOSS KATANA- Head MK2+12インチ×4発キャビ

・BOSSのKATANAMini

・Line6 Helix/HX Stomp+モニタースピーカー

・Line6 Helix/HX Stomp+リターン刺し

・Line6 Helix/HX Stomp+パワーアンプイン

 etc.……

 などで大音量から消音量まで散々Caparisonをテストしましたが、フルチューブ/トランジスタ/ギタープロセッサ+様々な出力先のどれでも強力に気持ちの良いトーンをぶちかましてきます。クリーンセッティングでもハイゲインセッティングでも何でも「お!」と驚きがありましたしね。楽器としての解像度が高いです。

 Caparisonは基本はアンプで音作りを完結させ、味付けでエフェクトやブースターをカマす方が、楽器の素性と美味しいところが出るように思います。

 

 ここまでやった結果「やはりCaparisonはスゲエ」と。
 ていうか、それよりシンプルに前述の「抱えてみた瞬間、これやんけ!」と直感したことは間違いではない、Caparisonが最高だぜ! って感じ。

 当然周りに「最強ですわ、Caparison」「Caparisonええで、ええで」を連呼しましたもの。

 

 いちCaparisonファンの妄言と思わず、一度お試し下さい、Caparison。

 

 

Caparisonと個体差。

 

 楽器というのは個体差があります。

 エントリーモデルのギターでもそれぞれの個体が持つトーンは千差万別です。

 Caparisonのようなハンドメイド的な部分が多いギターメーカーの楽器だと、それが顕著に現れます。……ネックが動くかどうかもね。

 

 現在のCaparisonは「レギュラーライン」「カスタムライン」「シグネチャー」の3系統のラインで分けられています。

 レギュラーラインはCaparison定番モデル。

 カスタムラインはレギュラーラインとは違う仕様にチャレンジングしたモデルです。また、限定生産であることも手伝って、レギュラーラインより手が込んだ作りになっています。

 シグネチャーは勿論エンドーサーのプレイヤー独自のモデル。

 

 会社が発足した1995年(実売開始が1996年)当初は「パフォーマンスモデル(共和商会のブランド・Chatting Bird。1999年。その後一旦消滅し、2009年頃復活……と言いつつ、実は1995年の協和商会カタログにChatting Bird by Caparisonモデル記載あり)」と「ハイエンドモデル」の2つで展開していたみたいですが、パフォーマンスモデルは即打ち切られ、基本ハイエンドとなったようです。ということはレギュラーラインはクラス的にハイエンドなのでしょう。

 なにッ!?

 

 

 そして余談開始。

『Chatting Bird by Caparison』について。

 ここからは記憶だけで書きます。

 

『Chatting Bird by Caparison』は共和商会独自ブランドで、スーパーストラトの廉価版。ロック式(FRT搭載)、ノンロック式などを販売しています。シリーズ型式がCAS、だったかな? Caparisonの名が冠されているのに、ヘッドデザインなどは別物です。

 多分これが菅野氏の言う「コストパフォーマンス」モデル。

 他、アンプなども生産しておりました。

 

 ブランド消滅の後に復活という情報もありますが、『Chatting Bird by Caparison Guitars Design』期を指すのでしょう。

 この『Chatting Bird by Caparison Guitars Design』は『Chatting Bird by Caparison』とは趣を変えたブランドです。

 誤解を怖れずに書くならば、本気でCaparisonの廉価版ブランドとして確立させようという気概が随所に現れていました。

 例を出せば、DellingerタイプならかなりCaparisonのDellinger風……のデザインになっていましたから。ヘッドもデビルズテイルヘッドを模したシェイプでしたもの(ただ、加工精度が低いすら通り越して、先端が丸い)。

 

 その後、共和商会が消滅してから、ネットに謎のモデルが現れます。

『Chatting Bird by Caparison Guitars Design』のロゴ入りなのですが、カタログなどに記載されていない仕様の個体でした。

 中にはHorusを模しつつ何故か24F仕様のものも。これは今もネットのフリマ系のサイトで確認出来ます。指板がメイプルで赤いものです。

 この謎のモデルの生産国はC国で、各部は流石にコストカットの余波が見受けられます。前述の「丸い先端のデビルズテイルヘッド風」な部分も引き継がれていました。

 

 この謎の『Chatting Bird by Caparison Guitars Design』。

「実はCaparisonの菅野氏が監修した、新規コストパフォーマンスモデル企画で制作されたプロトタイプだ」という情報がまことしやかに囁かれます。

 エンドーサーの海外ギタリストにテストで渡した分、或いは協和商会に残っていたプロトが流出したものだ、とも(受け取った海外ギタリストが何らかの理由で売り飛ばしたとの話も)。

 その本数は10~20本くらいだったと見たのを覚えています。シリアルから逆算だった、かな? プロトタイプ生産ロット数が10本くらいで一区切りだった可能性がありますね。

 

 現物を確認すると、材や一部加工はコストカットの対象となっておりました。

 ボディ材とか集積材か合板じゃないのか? という感じでしたし。

 ただ面白いのは、ネックがヘッド側のDからCシェイプへの変化をそれなりにしていること。そしてペグがグローバー(!)でピックアップが多分ゴトー製であることです。ここでいうゴトーはペグやブリッジのGotohではなく、Caparisonの自社ピックアップをOEMで作っている方のゴトー。ピックアップの型番はCaparison風の付け方をされていましたから、コストパフォーマンスモデル用ピックアップも試作されていたのでしょう。ある意味、激レアパーツです。

 FRTはGotoh。ややこしいですが、こちらはペグやブリッジを製造している方。

 プロトタイプだから、ある程度コストを掛けたのかも知れません。それに菅野氏も結構関わっていたんじゃないかなー?

 もし市販品/プロダクトモデルとして出すならC国で大量に生産可能なように、単純なネックシェイプになっているでしょう。そして各パーツももっと安く質を落としたものを採用しているはずです。

 

 ここまで作っても『Chatting Bird by Caparison Guitars Design』名義のプロトタイプがプロダクトモデルとして販売されることがなかったことに、諸行無常を感じます。でも、出して売れたかどうかは分からないところ。

 

 この『Chatting Bird by Caparison Guitars Design』を再設計したかのようなモデルがあります。そう。『Caparison C2』。

 こちらは完全日本製ですが、各パーツはかなりコストカットされたものがチョイスされています。そしてCaparisonらしさは薄いです。

 とはいえヘッド、ボディ、ネックは日本産(フジゲン)だからこそ製作できる精度にまとまっています。多分、国外産だと実現できないやつ。ただ、そのレベルをキープしたことで単価がやや上がってしまったのが痛し痒し。日本国内などレギュラーラインの価格帯にやや近い価格付けだったので、プレイヤーはC2に対しあまり食指を動かさなかったのでしょう。結果的にC2ブランドは崩壊しました。

 Caparisonにパフォーマンスモデルは必要ない、ということなのか。

 悩ましい問題です。

 

 ※後日調べたところ、倒産前の共和商会は更にパフォーマンスモデルの拡充を狙っていた模様。DellingerタイプとAngelusタイプを発売後には「HorusやTATを元にしたモデル」の話も出ており、予約を開始していたが結局倒産により頓挫した。そのプロトタイプは存在していたようである。またHorusは「Horus+Dellinger」としていたようだが、27F仕様だとそれだけコストが掛かるという証拠かも知れない。

 また海外のエンドーサーが売り払ったものはブランド名が「Rebellion」で、各部の仕様も国内Chatting Birdと違っていた。例えば、GotohのFRTがFloyd RoseのSpecialになっているなど。この辺りはC2への布石だったように思える。この海外版のシリアルは16から19で、生産数が計4本だった可能性があるらしい(このシリアルは末尾の一部のみで、生産数を表す)。

 国内のChatting Birdプロトだと10から15で、6本。計10本のプロトタイプが存在していたことになる(だとすれば、国内海外全て含めてプロトタイプの1本目はシリアル10。そこから11、12、13、14、15の順)。

 またプロトタイプなので通常のChatting Birdより各部の作りは良かったという発言も残っている。

 

 余談終わり。そんで、それぞれのラインのクラス説明を改めて。

 分かり易いように他社のクラスと比較してみましょう。あんまりやりたくない手法ですし心苦しいですが、多分これが伝わりやすいかなと。おっと。価格的な部分は加味しておりませんので、ご了承を。

 

「カスタムライン」はIbanezのJCustomクラスよりやや上。

 かなり特殊な作りをふくむこともありますが、全体的に丁寧な仕上がりです。

 また美しい材を使っています。

 菅野氏の新アイデアがここに投入されることも。

 また過去のモデルをオマージュしつつ最新仕様へのアップデートしたモデルが含まれることもあります。

 

「レギュラーライン」はIbanezのPrestige以上、JCustom未満が同程度。

 基本的に日本製で、このクラスでも菅野氏の最終チェックしています。

 これがレギュラーだというのですから、Caparisonが目指すレベルの高さが垣間見えるラインでしょう。

 

 こんな感じでしょうか。

 C2はPrestigeクラスだと思います。国産でフジゲンだし。ただし、FRTなど一部金属パーツはやや質が劣るものが採用されていることがあるので、そこだけがネックというか何と言うか。でもコストカットには必要なのでしょう。

 

 シグネチャーは当然各メーカーのシグネチャー……より上かも。

 何故ならプロ・プレイヤーに渡すものとそっくりそのまま同じだから。

 他メーカーだとエンドーサーへ手渡す際、いろいろ弄くっていたり、組み込みから何からをシグネチャーモデル責任者が直接やっていたりするんですよね。インタビューなんかで公言していますので、探してご参照下さい。

 だから市場に出回るシグネチャーと、プロが使うものは違うのです。マジで。

 でも、恐ろしいことにCaparisonのシグネチャーはプロのと同じだと聞いた事があります。マジでそのまんまとかなんとか。いやはや、スゲエことッスよ。これ。

 流石にデザイナー自ら組み込みはしていないにせよ、名古屋の加藤楽器で製作されたものを菅野氏が他のラインと同じように最終チェックを行っています(確か。でももしかすると菅野氏が組み込みしている可能性もあります。そこは明言を避けますが……。でも基本的にプロと同じものを、がCaparisonの大原則だったはず)ので。って、これはシグネチャー含む全モデルか。月産30本前後だからこそ出来ることなのでしょうが、逆にCaparisonの高品質さの証明にもなっていますね。

 

 その「まんまシグネチャー」を含め、どのラインも、個体差という個性が強く出ています。それはそうですよね。木材というファクターがあるのですから。とても楽器らしいと物語っている部分でもあるのですが……。

 

 これはわたくしの個人的な体験談としてお読み下さい。

 Caparisonの代表的モデル「Dellinger」と「Horus」それぞれ同型モデルを複数(と言っても、どちらも2本くらい)比較しましたが、全く同じトーンではありませんでした。生音とアンプを通した音、両方です。

 方や「伸びやかで艶のあるトーン」。

 方や「図太くヘヴィなトーン」。

 とか、そんな感じです。全く違うんですよ。ここまで差があるとは、と驚いたことを覚えています。クリーンでも「滑らかなモダンクリーン」とか「アルペジオを弾くと心地よく重なり合って響く」とかありましたけれども。

 ただし、この差は「Caparisonらしい高品質なギタートーン」の上で成立していることに注意が必要です。役に立ちましたか?

 ……じゃなくて。
 ああ、そうだ。ネックを握った感触も違いました。 Caparisonの楽器製作が如何に多くの部分を人の手で行っているのかがこれだけで伝わってきます。NCルーター(コンピューター制御切削加工機)すら使わない完全ハンドメイド、とはいきませんが、確実に職人が手がけたものであるからこそ。 もう一度書きますがCaparisonは「プロユース」クラスのハイエンドであり、「シグネチャーはプロが使っているものと全く同じもの」を我々に提供しています。 そのための品質管理も行われており、結果、拘りの楽器が生み出されるのです。……そりゃ、月産30本程度になりますわね。
 あなたが持つCaparisonは、他の人が持つCaparisonと違う。 唯一無二の個体である――と言えます。

 

 もういっちょ余談。

 うちのCaparison Dellingerは一度リペアショップでトータルセットアップをして頂いたことが御座います。実によい仕上がりでした……。

 

 その後弾いているときに「あれれ~? 少し思てたんとちゃうなー」ということが出てきたので、またまたDo it your Self. DIY! 的にいろいろ弄くりました。はい。自己責任です。いつもそう。

 そして、まあまあかなーという感じに落ち着きました。

 

 で。その後に「思てたんとちゃうなー」が再発。ひとしきり悩んで……「あ。これか?」と二つの部分をチョチョイ(内容はナイショ)。そうしたらズバッと決まりました。だから上の音源の一部はその「チョチョイ」の前の音です。

 正直言うと、ここもプロに任せるべきなんでしょうけどねぇ。結構微妙なところだから。DIY!  してもうたけど。

 

 ※ミラーレスのテスト用で撮ったクロックインレイ。やはりいい!

 

 で、今に到ります。いやー、もしかすると「FRTのスプリングの張り方、弦高、そして残りの二つ」だけ弄くれば良かったのかも知れません。それを弦交換含めて組み付けやり直しとか……。不器用もののわたくしがやっちゃいけないことオンパレードでしたよ。皆様はプロにお任せ下さい。それが一番いいっす。プロはきちんとこちらの言葉に耳を傾けてからちゃんと意見して下さいますし。プレイヤーと楽器ごとにベストな提案もして下さいますからね。

 

 ってことで、余談終わり。

 

 

Caparisonは進化、深化する。

 

 現在もCaparisonファンなわたくし。

 

 しかし。ええと。

 実は、正直な話イギリス資本が入る前のデザインや仕様で好きなモデルが多かった時期があります。

 例えば、Horusの「プッシュープッシュ ボリュームノブによるピックアップセレクター」仕様が好きだったのですが、途中から3Wayセレクターが増設されました。ここが少しヤだなあと。

 でも同時に、この時期採用されたHorusの左右非対称ボディは大好きなデザインなんですよ。おまけにM3ボディ(中央がメイプル、左右がマホガニーという違うトーンウッドで構成された構造)には興味津々でしたし。

 しかし、3Wayセレクターがなー、と。全体デザイン好き! セレクターはうーん? そんなアンビバレンス(相反する感情)っぷり。

 こうなってしまうと、どちらを優先するか悩んでしまいます。

 大好きなメーカーなのに! 面倒臭い自分の性格。

 あ。でも時間が経つにつれ「これ好き!」っていうのも沢山見つけました。

 そして現物を目にすると、やはり「ええなあ」って。

 そもそもC2で3Wayセレクターを導入しているじゃん。

 これが功を奏したのか、現行品の「TATSpecial」「Horus」「Dellinger」に好きなモデルがドンドコ増えました。うーん。いつかは!

 

 最近のCaparisonは電装系やピックアップ、他諸々がかなりアップデートされています。公式HPなどでチェックしてみて下さい。

 

 

 最新デザインこそ、菅野氏が理想とするもの……なのかも知れません。

 以前と同じ事をやっていても仕方がない訳ですしね。

 常に進化を止めないギターメーカーとそのデザイン。

 

 だからいつまでもCaparisonが大好きなのです。おほほほ。

 讃えよ! Caparison Guitars!

 

五穀 ―― 豊穣の女神 大気都比売神。

 

 二月は旧暦では年の初めになります。

 極個人的には「一月は新暦の正月、二月は旧暦の正月」としてそれぞれを年の初めとしております。やれめでたや、ことほぎ、言祝ぎ。

 

 そんな二月の新年ですので、我々日本人に大切なもののひとつについて。

 それは五穀です。

 米(稲)、粟、小豆、麦、大豆。

 今回の古事記の話は、この五穀に深く関係する女神の話を書きましょう。

 

 女神のお名前は大宜都比売神

 おほげつひめのかみ/おおげつひめのかみ、と読みます。

 

 古事記では「大宜都比売神が建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)を御馳走で歓待した。建速須佐之男命はそれらの御馳走の材料が〈大宜都比売神の鼻、口、尻から出てくる〉のを目の当たりにし、怒り心頭に達し斬り殺してしまう。その後、大宜都比売神の頭から蚕、目から稲、耳から粟、鼻から小豆、陰部から麦、尻から大豆が〈生じ〉た。神産巣日御祖命がこれらの種を取らせた」となっています。

 

 蚕の絹糸を含め、これらは古代の重要な物です。

 このような大事な蚕、五穀を身体から生じさせた女神・大宜都比売神。

 以前も書きましたが、改めて説明していきましょう。

 

 

 

 

大宜都比売神のお名前。

 

 改めて書きますが「大宜都比売神」の大は美称。宜の〈げ〉は食べ物です。例えば御食/みけ、の〈け〉が濁って〈げ〉になったもの。都のつは連体助詞で下の体言を修飾するものです。

 平たく言うと「大いなる食べ物の女神」ってところでしょうか。

 建速須佐之男命に御馳走を供し、斬り殺されても尚五穀を生じさせる。

 徹頭徹尾「食の女神」であるわけです。

 また、口や鼻、尻から出した食物を御馳走として整えるという辺り、料理/調理の女神でもあった、とわたくしは妄想します。

 またその料理は素晴らしい味で、神力を備えたものだったに違いありません。

 もしかしたら、この後の建速須佐之男命が英雄神となったのも、大宜都比売神の食事の効果だったのでしょうか。そんなことを考えてしまいます。

 

 頭の蚕は別として、大宜都比売神から生じる五穀は動物性食品がひとつも含まれていません。そして今も神々に供され、尊ばれているものです。

 では、この五穀に関してもう少し考えてみましょう。

 

 

 

五穀。

 

 古事記では頭の蚕に続いて

・二つの目に稲種生り
・二つの耳に粟生り
・鼻に小豆生り
・陰(ほと。女陰)に麦生り
・尻に大豆(まめ)生りき

 とあります。

 この順番は格式の高い物から、ということでしょうか。

 後の時代、古事記が編纂される前から(!)米の重要性が高まっていた、と読み取ることも出来ます。

 

 稲/米、粟、小豆、麦、大豆。

 粟が2番目に来ているのは、稲作が行われる前だと粟が主要な穀物だったということを表しているのかも知れません。

 そう言えば阿波国=今の徳島県の阿波は粟から来ている説もあります。〈伊予之二名島のうち、粟国(阿波国)を「大宜都比売」と称する〉という話を鑑みるに、やはり米の前には粟が尊ばれていた……と言いたいところですが、単に「阿波国と粟の音が同じ〈あは・あわ〉であるから後付けで国名がそうなったに過ぎず、そこへ食物神・大宜都比売神の名を付けた」という説もあるのです。

 とはいえ、粟も小豆も麦も大豆も日本人にとって大事な穀物である事に変わりはありません。そもそも皇室で行われる大嘗祭では新しく穫れた五穀(新穀)他を神々に備え、五穀豊穣、国家と国民の安寧を願います。

 そう。この五穀豊穣という言葉にも五穀の重要性が垣間見えるのです。

 

 そのように重んじられている穀物、五穀。

 これら五穀が生じた場所が身体の穴という穴であることに気付くでしょう。

 目、鼻、耳、女陰、尻、全てが穴です。唯一、口だけが入っていません――とここまで書いてきましたが、唯一目だけが穴と言うには少々問題があります。眼球があるからです。しかし、多分このようなことが考えられます。

〈死した後の腐敗する部位の順番として目はかなり早く、眼球が腐り落ちるとポッカリ穴が開くから、殺された大宜都比売神の目が穴になった〉

 考えてみれば、古代は殯(死者を埋葬するまでの間、遺体を仮安置する葬送儀礼)を行っています。その遺体の状況を鑑みると、目を両の穴として認識していてもおかしくはない、のかも知れません。

 また、亡くなると開いてしまう穴もあります。

 これらを総じて見てみると、大宜都比売神の死により〈開いた穴から五穀が生る〉という状況だとすれば極々自然な描写になるような気がします。

 

 また、目と言えば伊邪那岐神が黄泉国から戻った後に行った禊で、「左目から天照大御神、右目から月読命」が生まれています。これから考え得るに、古代の両の眼は特別なものであった、と推察されます。

 その特別な部位の穴から稲/米が生まれるのも必然でしょう。

 

 また、五穀が生じた穴全てがある種「呪力を持った」部位と言い換えることができるかも知れません。というのも、伊邪那美神の身体からも同じく様々な神が成りますが、糞を出す尻と尿を放つ女陰、この二つは大宜都比売神の穀物を生じさせた場所と重なります。

 

 ここまで書いてきて思いましたが、五穀を生じさせた穴は、基本的に「出す」場所でもあります。目は涙など、鼻は鼻水などを、耳は耳垢などを、女陰は尿などを、尻は糞などを……ですから。

 ここから考えると、口のように「唾や吐瀉物などを出すと同時に、食物や飲み物を取り入れる」部位はやや特殊であるように感じます。また、日本酒の原型である口噛み酒は神々へ献げるものですが、これは「目から生った米を口に含み、吐き出した物」。ということは、口はある種〈貴いものを作る場所〉です。

 古事記では大宜都比売神も口から食べ物を出していましたが、五穀を生じさせていません。だとすれば、建速須佐之男命が見た〈口から出てきたもの〉は口噛み酒や他の口中加工された料理だった、と飛躍した想像が浮かびます。

 また、五穀の生じた部位とそれぞれの作物を……とここまでにしましょう。

 

 

 

五穀を食べる。

 

 さて、このように重要な五穀ですが、我々は日常的に口にしています

 

 米……は言うに及ばず、麦や大豆は加工品としてほぼ毎日食しているはずです。

 例えば、麦はパンや麺、粉モンなど多岐に渡りますし、大豆は加工品の原料で口にしています。醤油や味噌などの調味料、豆腐、油揚げ、湯葉、納豆、きな粉などです。前述の麦も醤油や味噌に使いますし、焼酎などには麦焼酎があります。

 小豆は餡などの御菓子類で食しますが、時々甘くないように煮て食べる海外のメニューでも出てきますよね。

 粟のみ意識をしないとなかなか出会いませんが、ときどき粟ご飯や粟餅などを目にする機会があるはずです。

 

 これら五穀を体内に取り入れることが気力体力を充実させることになるのだと思います。そもそも医食同源のような考え方にも「五味、五穀、五薬」と出てくるくらいですから。そして小豆や大豆には厄払いの力もあるのです。小豆の赤もですが、大豆は節分に撒くことからも厄を打ち払うとご存じの方も多いでしょう(今年、2026年の恵方は南南東でやや南よりです)。

 

 出来れば、意識をして普段から五穀を食したいものです。

 そう言えば、粟に関していえば上野の「みはし」で冬季限定の粟ぜんざいが食べられます。粟と小豆を同時に摂ることが可能である凄いものです。

 他には時々「粟餅」「粟ご飯」など粟を使ったメニューを出すお店もいろいろあります。道の駅などでも粟の御菓子も見かけることも多いですしね。これら粟を使ったものを近場で探してみるのも一興ですよ。

 

 また、以外と楽ちんに「米、小豆、大豆」が摂れます。

 上新粉や白玉粉で作った茹で団子(蒸す工程は面倒なので)に、炊いた小豆餡を乗せ、きな粉を振ると……もの凄く美味しい。小豆餡を作るのはさほど難しくありません。時間が少々掛かるくらいです。だから、ある程度の量を纏めて炊いておいて、冷凍しておくと便利。

 

 

 

 因みに、炊いた餡を冷まし、バニラアイスに添えると旨し。

 また薄焼きホットケーキやクレープなどでシンプルに巻いても。もちろん果物や生クリーム、チョコソースなどを足してみるのも手です。

 トーストにバターを塗って餡を乗せるのもあり。名古屋名物あんバタートーストになります。これには淹れ立ての珈琲がとても相性よいです。

 

 麦や粟を混ぜて焚いたご飯でおにぎりを作り、味噌や醤油を付けて焼くのもいいですね。焼くと言えば豆腐田楽などの焼いた豆腐料理を添えるとベストマッチかも。

 当然、お豆腐の味噌汁に油揚げを加えたものでもよいでしょう。

 或いは椎茸(カツオと昆布出汁を加えても)出汁でさいの目に刻んだ人参、干し椎茸、豆腐を煮て、酒と塩で調味。ごく少量の醤油で味を調えた汁もアッサリしていて滋味深いものです。『美味しんぼ』のうずめ飯に出来る汁ですから、ご飯にかけて、もみ海苔、わさびを添えて供してもいいですね。ポイントは「醤油を使いすぎない」こと。醤油が味と香りが立ちすぎるとよろしくない、と覚えておきましょう。

 

 お豆腐の味噌漬けを作っておき、切って炙るのも香ばしくて食欲をそそります。

 熊本県などで「山うに豆腐」とされているものが通販で購入できますが、自分の好きな豆腐を好みの味噌で漬け込むのも楽しい物です。

 また練った納豆を潰した豆腐に混ぜるのも見た目は悪いですが、お薦めです。

 納豆は油揚げに詰めて醤油で炙ってもよいですし、同じく潰した豆腐にヒジキや人参を調理したものを混ぜ込み、焼くか煮るかしてみるのも一興ですよ。

 このように「同じ素材のものを掛け合わせることで味わいを深くする手法」もいろいろありますので、お試し下さい。

 

 もしお餅が余っているのなら揚げるor少量のごま油で焼いて、そこに大根おろし+ポン酢少々+納豆(たれを混ぜたもの)を添える〈おろし納豆餅〉もお試し下さい。お餅はレンジで加熱し、中心が柔らかくなったところで揚げるかフライパンで焼くかすると早く火が通ります。オススメはごま油少量でカリッと焼くやつ。ごま油のコク味が加わるのです。

 

 動物性タンパク質を加えて良いなら(上ですでに加えてますが)、キーマカレーに水煮大豆を混ぜ込み、ご飯で頂くのも美味しいですし、ボークビーンズやチリコンカルネに小麦の香り豊かなバゲットなどを添えるのもいいですよね。

 クリームチーズなどを味噌漬けにして、クラッカーに塗るのも。乳製品と日本の発酵調味料の相性は抜群なんです。

 

 ……と言う風に、五穀はこんなにも豊かで美味しい食と繋がっています。

 食事の度に意識して五穀を探し、見つけたら大宜都比売神のことを思い出してみて下さい。きっと古事記や神話が身近に感じられるようになります。

 

 

二月も神社へ行こう。

 

 正味の話、五穀もアレルギーが原因で食べられない方もいらっしゃると思います。

 もしひとつでも食べられるものがあれば、それを食べて神社さんへ。

 ひとつもなかったとしても、日本の皇室行事に国民の安寧を五穀と共に祈り、願う行事「大嘗祭」があることを思い出して、神社さんへ足を運んでみて下さい。

 

 五穀が生った女神・大宜都比売神は、農業守護/ 漁業守護/養蚕守護らしいのですが、他に「生命力や成長、健康」のご利益もあります。

 だからこそ、五穀を口に出来なくても、祈り願うために訪ねてもよいのです。

 

 大宜都比売神を主祭神として祀っている神社さん、或いは御祭神のひとはしらとして祀っている神社さんは多数あります。

 下調べをして行くも良し、偶然の出会いを楽しむもよし。

 もしそこに大宜都比売神のお名前があったら、五穀豊穣、生命力、成長、健康を願いつつ、五穀や食に思いを馳せてみては如何でしょうか?

 そして、帰りに美味しい物を……まあ、神社さんへ行くと美味しい物を引き当てる事が多いんですけどね。なんでか知りませんが。

 

 ということで寒い中だと思いますが、2月も神社さんへ足を運んでみましょう。

 せっかくの旧暦正月時期ですからね。

 言祝ぎつつ、五穀を意識しながら。是非。

 

 

世界一詳しくない「Ibanez SRG420FMZ」の話。

 

 Ibanez(アイバニーズ/イバニーズ)。

 世界中のシュレッダー/テクニカルギタリストに大人気のメーカです。

 ……あ、でもそれ以外のギタリスト向けのモデルもあるな。

 まあそれはいいとして。

 

 わたくしンちにいるコについてネットで調べると、そんなに情報がない。

 幾つか発見できましたが、少ないっすね。

 ってことで、世界一詳しく……ないですが、SRG420FMZの話を書こうじゃないかあ。うん。結構、文句も言うのでご容赦を。

 

  おっと。その前にRGとはなんぞや。

 

 1987年、Fender Stratocasterをベースとしたスーパーストラトの系譜として誕生したのが、RG。当初Steve・VaiのJEMシリーズの廉価版と位置づけされておりました。確か。

 

 このRGというモデル名は、Ibanezが開発した「RoadStarGuitar」の略称です。

 原型である「RoadStarGuitar」から徐々に時代に合わせたシェイプや機能を付加していった結果、現在のRGシリーズへ繋がっていきます。

 更にこのRGをベースとしたシグネチャーモデルも多数開発されていきます。

 結果、シュレッダーやテクニカル系ギタリストと呼ばれるプレイヤーがこぞって手にするモデルの代表格になったのです。

 現在はAZシリーズと共に、二枚看板のような位置づけになりましたが、今も様々なギタリストが求めて止まないギターとなっております。

 

 で、ご多分に漏れずわたくしも「IbanezのRGを弾けば上手くなれる!」と思った……ことはありません。だってプレイスキルは楽器関係なく当人が身に着けるものですからね。悲しいかな、それくらいの分別があったのですな。ふははは。でも「あのギタリストも使っているんだから良いギターじゃろ。いつかはRGをお迎えじゃい」みたいな感じで考えていました。

 ってことで、これから次項に続く。

 

 

Ibanez SRG420FMZ。

 

 シマムー(分かるよね?)楽器さんがIbanezに発注を掛けたモデル「SRG420FMZ」RGモデルですがシマムーさんのSが付いて、SRG。

  このように、楽器店が各メーカーへ依頼した「ショップ限定モデル」は数多くあります。そこにしかない特殊スペックのものです。

 このSRG420FMZもそういったモデルになります。

 

 

Spec

ネックシェイプ:Wizard  3ピースメイプル
ボディ:フレイムメイプルトップ(ベニア)/マホガニーバック
指板 :ローズウッド ドットポイントインレイ
トレモロブリッジ :Edge Zero Ⅱ ZPS3(ゼエロポイントシステム)
ピックアップ:ネック DiMarzio Air Norton
ピックアップ:ブリッジ DiMarzio THE Tone Zone 

セレクター:5Way

ノブ:ボリューム/トーン
ハードウェア:Black

生産国:インドネシア

ヘッド/ボディマッチングカラー

カラーバリエーション

TR:トランスペアレントレッド

BBL:ブライトブルー

2011年販売

 

 うちのコは「SRG420FMZ BBL」です。

「いつかはRG」の目標通りにお迎えしました。

 ええと。かなりリーズナブルでしたねぇ。理由は簡単で、デッドストックだったから。所謂新古品であり、ヘッドとボディカラーが退色して、なななんと! 高貴な色・パープルになっていましたもの。……ネットでも同モデルがパープルに変化した個体だらけなので、元々が退色しやすい塗料だったのでしょう。所々にブルーの痕跡が見られますけれど、それもごく僅か。光が当たらないところもパープル化しています。多分年単位で展示されていたみたいですねぇ。

 レッドの方は退色したのを見たことがありませんので、やはり塗料の差というのがあるんだなー。とはいえ、紫も好きな色だから渡りに船でした。

 元々が「Ibanezとシマムー楽器のコラボ! 1996年のJCustomを彷彿させるモデルでaffordable(手頃な価格)」と謳っていたので、どういった立ち位置のモデルだったかご理解頂けるかと存じます。はい。

 

 このモデルはスポット生産だったようで、在庫が切れたら新品購入は不可能なモデルです。当時、ショップでオススメしてきたスタッフの方から直に教えて頂いたのは「低価格なのに(当時の)Prestigeクラス(当時のIbanezは上のクラスからJCustom、Prestige、レギュラーモデルになっていました。Premiumとかはまだなかったはず)に負けない造り・スペックを実現しようとしたモデル。超オススメ。今が買い時」という内容でした。確かにピックアップはDiMarzioだし、指板のポジションインレイも1996年のJCustomにあった〈片側に寄せたドットインレイ〉で御座います……って。あれ? Prestigeクラスじゃないんかい。スタッフさんの勘違いだったんだな。確かに1996のJCustomの外観には似ているんですよね。どちらにせよ、人気が出そうな仕様です。……でも長期在庫で困っていたんだろうな。

 

 ぱっと見、全体的な造りはまずまず。

 当時「海外の生産国の中でもインドネシア製はいいですよ」と説明されましたが、本当だったようです。とはいえ色々な部分でコストカットしておりますね。これも企業努力ってぇことでしょう。

 しかし……まあこれは後述。

 

 ネックはIbanez特有のWizardで薄めですが、PrestigeやJCustomに比べると分厚いと思います。材はメイプルの3ピース。ハードメイプルというスペックで出ておりませんから、コストカットと材の堅さを鑑みてネックの厚みをそれなりに取らざる得なかったのでしょう。もちろんウォルナットの挟み込みなし。それでも長年酷く反らないので凄い。おまけにサテン塗装でサラサラ。

 

 指板はローズウッドです。これも低価格帯用のクラスでしょうね。とはいえ、当時の低価格帯ローズウッドは今の低価格帯ローズウッドより質が良かった……ような気がしないでもない。

 この幅広でフラットな指板はIbanezらしいですよね。

 

 ドットインレイは片側に寄せられ、12/24フレットのみ2連。

 フレットはジャンボで、意外と削れに強いように感じます。

 ……うーん。今の状態だと指板は汚れ傷つき、フレットは曇っている。どんだけ手入れしていないのか。あ。1~3弦はDRStringsにオマケで付いていた金色弦です。この弦は音がブライトだぜ、みたいなことが書いてあった気がする。なのでテスト的に張ったのだった。今思い出した。ブライトがどうかは置いておいて、悪くない感じですよ。それに予備弦として優秀。

 

 ボルトオンネックでオールアクセスネックジョイント(AANJ)です。

 このAANJはボディ側のジョイント部を滑らかなラインを描くように薄くし、ハイフレットへのアクセスを容易にしたもの。プレートを廃した四点のボルトでガッチリ固定してあります。

 ナット側からボディ側まで運指がし易く弾き易い、かな?

 

 ボディはRGシェイプで、Dinkyよりやや大きめ。

 RGシェイプはアッパーホーンとロウアーホーンが他のDinkyタイプよりトンガって鋭くなっているヤツですね。

 トップはフレイムメイプルのブックマッチ……ですが、ベニア(化粧板)です。

 薄く削いだフレイムメイプルを貼っただけですので、トーンに寄与しません。

  バックはマホガニーで、これも複数貼り合わせになっています。

 Ibanezと言えばボディはバスウッド、がド定番ですが、モデルになったJCustomはメイプルトップ・マホガニーバックだったので、それを踏襲したのでしょう。

 因みにバスウッドもキチンとした物だとトーンウッドとしてよい材です。IbanezやErnie Ball MusicManでも採用されています。そう言えばVaiのJemはアルダーボディでしたね。この辺りはいろいろな仕様がある、ということで。

 

 塗膜はポリエステル、のはず。ポリウレタンではないと思われます。この厚めの塗膜が質量と剛性を増しているので、結構タイトなトーンです。マホガニーの特性より、この塗膜の特性が強く出たということでしょうね。これぞエントリー/スチューデントモデルあるある。トーンウッドより分厚い塗膜が音に影響するってやつ。

 バックキャビティが大きめだからか、生音が思いの外大きく響きます。

 

 

 ボディ前面の各部。

 ブックマッチの木目は、何だか縦(ヘッドを上に立てたとき、或いはボディエンドを上に向けたときの方向)にも線が入っていますな。

 見る角度で木目が変化しますよ、化粧板だけど。

 ストラップピンはお迎えしたその日にSchallerロックピンへ付け替えました。フジゲン製ではなかったけど、ネジ穴加工したっけか? 記憶にない(フジゲン製のボディだと、ストラップピンのネジ穴がSchallerロックピンに同梱されたネジに合わないのです。インドネシア産でもそうだった可能性があるんですが……)

 

 ピックアップはダイレクトマウントで、ピックガードなどはなし。

 ネック側がDiMarzio Air Norton

 リードを弾くと心地よく音が伸びます。そしてその途中で派手にヴィブラートを掛けると倍音へ変化していく辺り、気持ちいい! 24Fギターだとヘッド側ピックアップがややセンター寄りになるのですが、それを物ともしないヘッド側ピックアップ感(?)があります。

 ブリッジ側はDiMarzio The Tonezone

 言わずと知れた有名ピックアップです。ヘヴィなリフから鋭いリードトーンまで出ます。メーカートーンチャートを見る限りミッドローが強めですが、SRG420FMZのように「分厚いポリエステル塗装による質量増加と剛性を増したボディ」だと丁度良い感じにトーン調整されます。ここがポイント、かな?

 

 ネック/ブリッジ、どちらもクリーンで弾いて良い感じです。本当に。いなたいトーンではない、モダンな感じになりますけれどね。

 

 ひとつ思ったのが、ピックアップのプリントと刻印のアリとナシ。

 Caparison C2に搭載されているピックアップには「DiMarzio」と白でプリントされているんですよね。ブリッジ側はSRG420FMZと同じくThe Tonezoneなんですけれど、プリントなし。ただ、SRG420FMZのネック・ブリッジピックアップ双方に「DiMarzio」と凸モールドで刻印されていいます。DiMarzio社の画像だとどちらも入っておりません。また、他のDiMarzioピックアップも幾つかあるのですが、それにはプリント/刻印はなし。メーカーサイトや通販サイトだと時々白プリントの「DiMarzio」が入ったものもありますが……。

 この辺りの使い分けってあるのかしら?

 

 この写真でも分かると思いますが、Caparison C2だとネック側・AirNortonSにも、ブリッジ側のThe Tonezoneにも〈DiMarzio〉のプリントがあります。

 うーん。多分何らかのルールはあるんだろうなあー。或いは生産時期によって刻印/プリントの仕様が違うのか。そう言えば、生産時期でピックアップの仕様が変わって、音が違うぞって話もありますよね。SeymourDuncanのJBとか。ってことはDiMarzioでもそういうことがあるのかしらん? 確かMusicManのAxis EXは第一期の途中から搭載されていたDiMarzioピックアップの芯線が2芯から4芯に変わったとか。そう言った部分でも時期ごとにいろいろなことが変更されているのでしょうね。

 おっと。そう言えば、このC2の仕様って、SRG420FMZに似ているんですよね。

 化粧板のメイプルトップに単板ではないマホガニーの組み合わせとか。

 全体的に塗膜はSRG420FMZより薄めかもしれません。なので、トーンウッドとしての役割はC2の方が果たしている……のかも。実際弾き比べると、同じThe Tonezoneなのにトーンキャラクターが違います。C2の方がやや太めというか。基本的にはThe Tonezoneなんですけどね。

 

 話をSRG420FMZに戻して。ピックアップセレクターは5Way。

 ネック側から切り替えていくと〈ネック側/ネック側コイルタップ/ネック+ブリッジコイルタップミックス/ブリッジ側コイルタップ/ブリッジ側〉の順に切り替わります。

 意外なことにコイルタップの効果が効果的です。

 

 コントロールはワンボリューム、ワントーンですが、ボリュームはハイパスフィルタがカマされている模様。開けて見たことないけど、きっとそう。シマムーのスタッフの方もそんなことを言っていた記憶がある。確か。このハイパスのお陰でボリュームを絞ってもトレブル成分がキチンと残っているように感じます。だから、ボリューム調整でクリーンにし、コイルタップでストラミングすると気持ちいいですよ。

 トーンもきっちり効きます。が、余り使わないかなあ。

 ただ、どちらのノブも重いのでステージで瞬時に調整が難しいことがあります。とはいえ、重い=勝手に動かない、ですのでそこはメリットでもありますね。

 結構ボリュームを弄るので、トーンノブと比べて汚れている……。

 

 FRTはIbanezのEdge Zero Ⅱ ZPS3

 ボディのリセス加工(FRTユニットを装着する部分を一段下げるように彫り込む加工)により、トーンより弾きやすさを優先した取り付けになっています。

 アームは付け根のスクリューキャップによりテンションが掛けられる仕様なので、固定もブラブラも思いのままなのがナイス。わたくし、固定が好きなのです。

 FRTユニットも扱いやすい……のですが、ゼロポイントシステムでアクションがやや重いです。ゼロポイントシステムは「2方向からスプリングテンションを掛けることによって、フローティング状態のFRTユニットを安定させ、弦切れが起こってもチューニングの狂いを防ぐ。また、チューニングも容易にさせる」もの……ですが、どちらもそこまで効果がありません。弦が切れたら、残りの弦のチューニングがしっちゃかめっちゃかですし、弦交換時にもあんまり楽ではないです。が、変則チューニングを行う際、FRTユニットを平行にするときはとてもイージーオペレーションで行えます(下記の解説・構造など参照)。

 

 

 ZPS3は一部スプリングとパーツを取り外して、Edgeトレモロに近い仕様にして使えます。当然、アームの挙動は軽くなりますよ。

 バックル傷はスルーして……ZPS3はこのような構造です。

 

 

 SRG420FMZは全体的な仕様のお陰か、ソリッドでタイトなトーン。これは現代的な音、とも言い換えられるでしょうか。

 フルチューブハイゲインアンプ/12インチ×4発のキャビで鳴らすと、もの凄く気持ちの良い音がしました。流石DiMarzio&フルチューブアンプ。ハードロック/メタル向け、と言っても間違いではないはずです。

 ところがFenderアンプなどでクリーンセッティングにしても結構良い感じに鳴ります。現代的ブルースやストラミングプレイ、はたまたロックンロールまで何でも御座れですね。このコ。セレクターやノブを使い、手元で多彩なトーン調整が出来るのも魅力です。ネック側ピックアップにして、トーンを絞ってジャズとかもやれんことはない、はず。わたくしはジャズ弾けないけれど。

 

 ある種オールマイティに使えるギターですし、スチューデントモデルとしては破格のスペックを誇ると言っても過言ではありません。当時あの価格でお迎えできたのは割と良かったっす。

 それに「ギターはデザインで選べ!」と標榜している身からすると、求める外見の要素を意外なほど満たしているのもポイント。特にピックガート/エスカッションなし、ピックアップダイレクトマウント。スチューデントモデルのRGだと大体ピックガードが付いているので、ここだけでも美味しいっすねぇ。リハスタとかでお友達に弾いて貰う姿を眺めて、「ええデザインやあ」とご満悦ですよ。ふはっ。でももうちょいボディが小ぶりだとベストよね。うん。

 

文句と賛辞。

 

 でも文句もあります。

 ぶっちゃけると、各部の精度と組み込み、部品の質は「?」な所がありまんな。

 例えば、金属パーツの塗膜が弱いところとか。お迎え後にすぐ塗装が大きくペリペリと剥がれ出し、地金が露わになって困ったことになりましたし。多分これ、生産時の問題じゃないかな。

 弦も特定のサドルの部分で切れまくる。激しいベンドやアーミング、ピッキングをしていないのにも関わらず、です。

 ネックやボディなどはNCルーターなどで切り出すので特に問題ありませんが、その後の木部への組み込みに難あり。オマケにビスが馬鹿になっている部分が!

 どうもこの金属パーツと組み込みのせいで〈アームを軽く動かすと一発で全弦のピッチが大きく狂う〉事態すら引き起こしていました。

 前述した「全体的作りはまずまず」ってところを覆すようなことが後から後から短期間に出てきます。

 

 どうしてショップでの試奏時に気がつかなかったのか?

 多分、アームなしだったからでしょう。スタッフの方から「アームを付けないのは、アーミングをしないで欲しいから」って言われましたもの。確かにガンガンアーミングするとスタッドとか他とか傷まないか心配になるよね、と納得したんですよね。

 余談ですが、他のシマムー店舗でも試奏んときに「ボディに傷が付かないようにガード付けます。傷つけないで!」と念押しされたことあるなあ。ガードはクリアファイルを切って作られたものでした。確か。わたくし、ボディ側へ向かって叩き付けるようなピッキングをしないのでガードは要らんのですが、スタッフさんの心情を考えるとやむなしだよなあと思いました。

 あ、そうそう。SRG420FMZの試奏の話。ギターを傷めたら悪いなあってことで、ド派手なベンドもしませんでしたよ。アンプもソリッドステートでかなり歪ませたものだったので、そっちのトーンに耳が行ってしまった、っていうのもあるはず。……ダカラオマエハ駄目ナノダ。

 そんな理由で、不具合に一切気付くことなく、という訳。

 

 こうなってしまうと楽器としてよろしくない。

 機材知らずのわたくしでも「こりゃおかしい」と気付きました。

 保証期間中でしたので遠慮なくシマムーさんに相談です。

 結果、メーカーであるIbanez送りに。戻ってきた状態をチェックすると、パーツは交換され、ネジ穴も補修されて問題なし。ほっと胸を撫で下ろしました。

 ただどうしてもいろいろ「?」なところが出てきたので、自分で組み込み直したりして。いやオススメしませんよ? こういうのはプロに任せた方がいいです。でも当時は恐れを知らないというか、何と言うか。自己責任でやっちまったなあ。

 ネック、ナット含むFRTユニット(ZPS3全体)をバラして清掃/再組み付け/各ビスやナット増し締め/フレット磨き/弦高・オクターブチューニングの再設定を行ったところ、チューニングの安定どころか出音の整い方が変わりました。弦切れもしなくなりましたし。

 上に書いたトーンの感想はこれら自前の再組み付けを行った後のことです(そしてその頃には、このコを勧めてきたスタッフの方が辞めていたというオチ)

 そこまでやったとき、このコが当たり個体であると理解出来ました……色んな意味で当たりだったけどな! でも今はよいトーン。でも金属パーツ、特にFRT周りはやはり質がイマイチであります。これは元々そういうものだった、ってことでしょう。

 

  そんなところで自分で弾いたSRG420FMZの音がないかと探したら、ありました。

 人様に聴かせないメモ的なヤツかつ、DAWの実験用です。

 だからしっちゃかめっちゃかですわね。間違いそのままだし。うははは。しかし上達しねぇなあ。ちちい。

 あ、裏で鳴っているリフは他に流用したような気がしないでもない。

 

 

 記憶を浚って見ますと「使用ギターは(当然)SRG420FMZで変則チューニング状態。バックはLine6の6弦リフ用プリセットで、The Tonezone。クリーンパートは同じく6弦リフ用でボリュームを絞ったセンター(ネック+ブリッジでコイルタップ)。アドリブリードパートはLine6リード用プリセット+Air Nortonだったはず。ただ、DAW上でモノラル録音にして幾つかチャンネルを重ねた状態にしています。リフはLとR。アドリブLeadはLとRの他、もう1チャンネルをモノラルで追加して3チャンネル。アドリブリードパートを強調するためのチャンネル+ミックス実験の残滓ですね。これ。どのパートもほぼ一発録りで(未だにパンチイン/パンチアウトを覚えていないから。だからミスったとこを差し替えなんぞできひん)、変則チューニングならではの使い方をしている、ような気がする。わたくしらしからぬ、ポップでキャッチーな曲アイデア……だよね? ね?

 

 メーカー修理+自分で組み込み直してからというもの、オールマイティな1本として活躍するようになったSRG420FMZ。

 手荒く扱っても壊れないし、チューニングも安定しているし、結構楽に弾けるしと信頼できるギターになりました。流石Ibanez。

 その後、その役割は新規に迎え入れた新たなRG、そしてJacksonのDinkyに引き継がれます。SRG420FMZはFRT搭載ギターでの変則チューニング実験用となり今に到る。そのうち、レギュラーチューニングに戻して弾き倒そうかしら。

 

 

総括:Ibanez RGは本当に必要だったか。

 

 SRG420FMZの後、RGシェイプのIbanezが2本増えています。

 6弦と8弦です。

 SRG420FMZをお迎えした当初、数々の不具合のせいで正直RGやIbanezに良い印象が抱けなかったのですよね。新古品、デッドストックとはいえある程度は楽器として期待していたこと、そしてそれを裏切られたことが原因であったことは否めません。

 その後、自己責任で Do it yourself(DIY。Do it! Do it! Do it……!)セットアップで「いいギターじゃん」に印象が変わったとしてもです。

 その後、新しい6弦RGがやって来て、やっと「IbanezのRGってやはり良いかもしれない」と認識を新たにしました。SRG420FMZよりいろいろ弾き易いんですよ、何故か。Ibanezのギターでよく言われる「楽に弾ける」「弾き易い」「下手糞でもある程度カバーしてくれる」という特徴がバッチリ出た個体だと言えます。

 RGの強み、というかIbanez全般のメリットは〈プレイアビリティについて担保されている〉ことではないでしょうか?

 兎に角弾き易い。そして、これまで難しかったフレーズが(下手とはいえそれなりに)弾けるようになるのですから。

 

 が、やはりこの弾き易いRGもFRT関連で不満点が出てきてしまいまして。それに関して言えば完全に個人的嗜好なので、この個体や仕様が悪いということではありません。そもそも確認してから「試しにこの仕様も使ってみるか」とお迎えしているのですから。それが上手くハマらなかっただけです。ただし、Ibanez RG系統を使っているギタリストの曲を弾くとズバッと「らしい」音を出すのも確か。Ibanezってモデルごとに特徴的なスペックを持ちますが、出音の根幹部分でどうしても変わらない部分があるんですよね。材やピックアップなどの電装系ではない、全体的な構造から生じるトーン。それがIbanezの個性なのでしょう。

 

 ……が。

 その後、Jacksonがやって来ました。

 デカロゴ日本製Jacksonが一旦生産完了するときのモデルです。

 そこで感じたのは、Ibanezより手に馴染むこと。

 しかしこのJackson、Ibanezより楽に弾けないギターなのでした。でもSSHというピックアップ構成もあって、オールマイティに使えるギターとして活躍を始めます。

 この辺りでESP及び、ESPのエントリーモデルを出しているブランドなどを何本も試していますが、結局お迎えには到らず。何故か「良いギターなんだけどなー」で止まります。身体に合わないのか。でも良いギターなんですよ、本当に。

 

 次にCaparisonを店頭で試奏して、そこで初めて「ああ、こういうギターが(自分には)いいんだ」と気付きました。手に取った間隔、グリップ感、トーン全てが突き刺さります。特にHorusは凄かった。これが元でC2のHorusやDellingerなどへ移行していくことになるのです。

 Caparisonも各モデルごとに個性がありますが、根底に流れるCaparisonトーンがあります。それが凄く心地よかった。クリーン、歪み両方ともそうでした(と言いつつ、C2はIbanez寄りというか、作っているフジゲン寄りのトーンです)。

 

 結果、Caparison大好きっこになりましたとさ。どっとはらい。

 

 ではなく。

 IbanezのRGは必要なかったと言えば、そんなことはありません。

 逆にあってよかった、と思います。

 プレイアビリティ的な点でIbanez RGはトップでしょう。何にも考えなくても楽器の方から「こうやって弾けば楽だよ」と導かれるようなギターですから。

 それに上記のようにIbanezじゃないと出ないトーンが必要なときに重宝します。

 JacksonやCaparison、Les Paulコピーモデルじゃそれを補完出来ないんですよね。オマケにこのコたちはガッツリ弾かないとキチンと鳴ってくれないときもありますからねぇ。はははは。もちろんそれぞれ弾きやすいギターであるのですが、RGと比べたら……という話。

 自分にとって「どんなギターやトーンが好きか」を教えてくれる一助になったのがIbanezのRGであった、と言っても過言ではないでしょう。

 

 もしFRTやIbanezに偏見がないプレイヤーだったら、RGをお薦めします。

 とにかくプレイスキルが上がったような気持ちになれて楽に弾ける=ギターを弾くことへのストレスが軽減され、演奏が楽しくなり、プラクティスも捗る。

 これって凄いことですよね。

 勿論RGを経て、そこから自分が求めるギターへ移行していくのもアリです。

 いろいろな意味でIbanezのRGは入門ギターとして最適解。

 現行品のエントリーRGなどお試しあれ。

 

 ……あれ? SRG420FMZからかなり脱線したな。

 まあええでしょ。

 

凶刃 ―― ベイジ解放戦

 

 ファイブスター物語最新話にて……あーあ。

 

 その前に、表紙にて解説された新しいGTMのデザインラインについて。

「ビブレーター放熱装甲」=共振・振動による放熱効果の増大を目的とした装甲。

 GTM・アグニムの頭部や肩部にある中空装甲・ビブラフォン装甲がそれ。ビブレーター放射形GTMです。

 

 わたくしたちが生きるこの世界で言う、「熱音響冷却システム」のようなものかしら? 「熱音響自励振動」現象を利用したもので、熱エネルギーを音エネルギーに変換させるシステムです。この音エネルギー=音波から冷熱を取り出すという訳。

 

 そして、伝導輪唱放熱/装甲同士の共振があるということは、グラスハープ(水を入れた容器の縁を指などで擦って起こす共振現象。美しい音が鳴る。また、容器の大きさ+水の量により音程のコントロールも可能)のように、GTMが起動して装甲の廃熱が起こると凄まじい大音響なのにとてつもなく美しい共振音が鳴り響くのでしょう。もしかしたらある一定のメロディすら奏でてしまうかも知れません。

 荘厳な音楽と共に出現、或いは佇む美しき巨大ロボットが見られる?

 

 このビブレーター放熱装甲のおかげで、GTMデザインの新しいラインが産まれている模様。刮目せよ! そして発表と共に驚け! わたくしは驚く予定だ!

 

 ここからはネタバレだらけなので、知りたくない人は回避。

 

 

 

 

 

 

 

 

回想シーンより。

 

 前回どうしてあんなことになっていたのか。

 それが回想シーンで描かれます。

 マグダルが見つからない理由。そして、アララギ・ハイトを伴ってやってきた、ジィッド。この時点で不穏な空気が漂っています。

 しかしマグダル、コールドスリープ解除後もそこまで成長していない=捜索側の予想に反して年齢的外見が変わっていない、ってことで。これ、マグダル自身が成長を止めている? 成長と止めると言えば――。そしてマグダルを護るマグダルガード・タワーの正体、そしてナ・イ・ン。詩女の記憶の継承。この辺りが鍵なのか。

 ま、マグダルもデプレも、マキシもほら、出自がねぇ。

 

 さて、大門のメンテ中の出来事ですが、三条香の気付きからマグダルが見つかる流れがここで発生しました。

 しかし、その連絡する間もなくジィッドに捕まってしまう……。

 44分間の奇跡の後に、マグダル周辺の話が動くのでしょうか。

 それとも詩女としてマグダルが奇跡に関連するのか。

 

 

剣、GTM、起動キー、AF。剣聖4点セット。

 

 ジィッドの狙いはアウクソーでした。

 自分を仮マスターとしてアウクソーに固定させるため、ミース・バランシェを攫ってきたのですが、当のアウクソーは壊れている、とジィッド。

 あと、同時に手に入れた剣聖の剣・懐園剣 雌剣を「おもちゃ」と断じ、デムザンバラを使いづらいGTMと唾棄せんばかりに悪態を吐きます。

 

 ぶっちゃけ、ジィッドにはどれも過ぎたるものです。が、当人はそれに気付いていない。今の自分がある理由に、デコース・ワイズメルによる引き立てがあったことも忘れ去っています。要するに、我々読者は勘違いした男の間違えた自己評価を見せつけられているのです。

 しかしジィッドが黒騎士の称号とGTM・ダッカス、エストを欲しがらなかったのは何故なのでしょう。デコースには勝てないと分かっているのか。それとも強い者・権力を持つ者には尻尾を振って利用したかっただけなのか。

 まあどっちにしろ屑ですよね、屑。

 

 しかし「アウクソーはどんなGTMにも反応しない=MHにのみ反応する」ということかしら。だとすれば、彼女がデムザンバラの真の名をMH名で呼ぶとき……。

 

 懐園剣・雌剣ですが、真の持ち主が振るうのか。それともマドラが振るうのか。

 はたまた、全く違う者がやってくるのか。

 ここも注目です。

 

 しかし、起動キーがやけに「キラッ」としているのは、何かの伏線?

 そもそも起動キーのあるGTMが珍しいのですが、もしかしてこの起動キーそのものが何か他の〈起動〉に繋がっているのかしら? ……アマテラスのことだから、何だかおかしな機能などかくして仕込んでいてもおかしくないぞ。

 

 

背徳は、騎士道に背いたこと?

 

 ジィッドが行ってきた非道は、FSS世界でも犯罪行為とされるものです。

 我々の地球でも戦争は起こっていますが、この戦争にもルールはあります。これに反することは「国際法の定める戦闘法規に違反する行為」です。

 また、FSS世界には騎士に対する騎士法もあります。

 それを護る代わりに、恐ろしいまでの特権を得るのが騎士です。と同時に戦争の代理人として、常に命をかけることになるのですが。

 ジィッドと彼の騎士団はそれら全てを破り、利己主義に走りました。

 まさに騎士道、戦争ルールへの背徳です。

 クバルカンでいうところの「徳」とは真逆の行為と言えるでしょう。

 ジィッド自身に何らかの役割があってこんな言動をしているのか、と思っていましたが、その予想を覆す「阿呆みたいな小物ムーブ」でした。

 おまけにドーマとの癒着も明言されてしまうと言う。……あれ? これ三条香がいるから、もしかしたら人身売買関連のルートを潰す展開へ繋がる?

 

 更に自分たちの犯罪を隠すため、GTMのエンジンをオーバーロード(エンジン動力計の能力を超えた出力を吸収すること。ここではエンジンに限界以上の負荷を掛けさせることか)城ごと全てを灰燼に帰せば良い、という行動に出ようとしています。デムザンバラの起動キーを手にしながら。

 このシーンで「アウクソー、懐園剣、デムザンバラ、起動キー」が描かれていることが今度のポイントでしょう。

 しかしこうして書き出してみると、三種の神器を思い起こしますね。

 剣、鏡、玉。やはりFSSは神話でおとぎ話ですな。

 

 おっと。

 このジィッドたちのGTMのエンジンをオーバーロード~ですが、外部からの強制装甲共振による廃熱=高熱の無効化、城を護るという展開かも知れません。そう。アグニムらメヨーヨのAFとGTMによってです。オーバーロード中のGTM自体は(エンジン以外)崩壊させても良いわけですから、強制的に限界を超えた装甲振動、からの超放熱させる、なんてやっても問題ない訳ですしね(ビブレーター放熱装甲じゃなくても、振動させたらなんとかならんかあ、と)。そのとき、メヨーヨのGTMから妙なる音色が輪唱が如く戦場に奏でられ、なんてシーンが見られるかも。

 

 でも、最終的には他のとんでもない背徳もありそうよね。ジィッド。

 んで、この辺りの手際の良さ他諸々、小悪党ジィッドを誘導して手引きしている黒幕もいるでしょうねぇ。まあそれだけで済まないでしょうし、この一連の流れすら何かのテストを兼ねていたり、とか。

 最初から最後まで、何者かの手の上にいるのがジィッドという可能性もあり。

 

 

足手まといの処理。

 

 ジィッドは「足手まとい」と断じた存在を身勝手にも処理しようとしています。

 そして「ミノグシアが悪い」という責任転嫁、他責思考を口にしました。

 

 ここで気になるのは、アララギ・ハイト

 手加減しているとは言え、普通の騎士であるジィッドのヤクザキックを腹部に受けて、倒れていません。出来損ないと言われる最底辺の(一応)騎士であるアララギ・ハイト。前ならこのキックで昏倒し、痙攣くらいしているはずです。

 ということは、すでに改造済?

 改めて思いましたが、アララギ・ハイトの名は「アララギ(卒塔婆)」+短歌結社誌・アララギ及びアララギ派(斎藤茂吉とかいたやつ)が融合したもの、かしらん?

 

 ニナリスすら斬ってしまうジィッドですが……。

 彼女の「ここに~」は、AFという情報共有体だからこそ――何かに感付いているのでしょうか?

 何故ジィッドのようなものを庇護しようとするのかと言えば、AFはどんな状況でも人間やマスターを護りますからね。だからこその進言なのです。

 しかしそれを無視してしまうジィッド。ああ、フラグが立ってしまった。

 なんか来るぞ。ジィッドにお灸を据えに。据えられたときは死んでるだろうけど。

 そしてニナリスは生き残ります。これ、ジィッドの悪行を伝える役目も負うってことかも知れないなあ。そして背徳のジィッドの汚名に繋がる、とか。

 

 このジィッドの刃は、ニナリスの心にも傷を残しますからね。彼女の次のマスターはメイザー・ブローズでミラージュのAFになります。が、これは極秘次項です。GTM開発に携わる……のはデムザンバラをジィッドですら扱えるまで抑え込めたその能力からでしょう。そしてメイザー・ブローズもいろいろある人物ですが、ドーマ~マグダルに関連していきます。この辺りのドラマに注目です。

 

 そしてミースの服を斬るジィッド。

「お、やんのか?」「やるかっ、刑事くんやぞ!(また分からないネタを)と思いました。はい。申し訳ない。

 

 

このタイミングで挿入しますが、ミースは処女受胎ということだよねー、と。もちろん、ミコトさまとは違いますよ。あれは単為生殖ですから。いや、それとも違うっちゃーちがうんでしょうけれどね。ミースの場合はある種の体外受精です。というか、人間を超えるものを生み出してしまった、禁忌の行い。通常の性行為による懐妊ではないのです。

 

 素手で持たれたガット・ブロウですが、意図した部分だけ切断力を発生させることが可能である……っていう証左? 刃が付いてないしね。まあ、それはいいとして、城の外ではマドラたちとデプレたちが控えています。ミース救助と同時にデプレ突入なのですが、内部はそれよりも緊迫した場面です。っていうか、推し団扇かー! あの秘密兵器は! この推し団扇ネタの詳細は、ええと。Fool for The City 2025Editionにて。読めば分かるさ。

 

 しかしだな。ジィッドよ、ここまで小物だとは……。

 この後、これはジワジワと誰かに嬲り殺しにされる展開かもなあ。

 一瞬で殺したら溜飲が下がらないものね。

「一度で殺したら、面白くないじゃない。こんなヤツ、苦しめるだけ苦しめないと楽しくないヨ」なんて言いそうなヤベえヤツから、ね。

 そんで「ジィッド様と呼べや!」の伏線からの、「○○さまぁ、おたすけぇえ。ジィッド、反省してまーす」とかやりかねない。

 でも赦されないよね。これでいくと。

 

 そんで一部の連中が逃げ出してますが、アイツが来ますよ。きっと。目つきの悪い、豆大福&足首好きのガキんちょが。「この道は通行止めだ。他を当たれ」と。

 

 

落ちた首。

 

 アウクソーの首が落ちた。

 と思わせておいて!

 

1)改造されたアララギ・ハイトが本性を剥き出しにして反撃

 → 彼が命を差し出してミースを護るのは愛だけれど、それが元で暴走。デコースが何かに気付いたときにはすでに身体に手が入り始めていたとか。

 

2)壊れたアウクソーが人間を攻撃

 → 壊れているからダムゲートコントロールや星団法なんぞ無視して良い存在。そして彼女の出自が、ほら、あれだし。とはいえ、両手両足を動かした形跡無しなのでねぇ。……頭突き? んなアホな。

 

3)超速度で侵入してきたマドラたちの攻撃

 → 一応、この線もあるっしょ。

 

4)アララギ・ハイトにカイエン憑依からの怒りぶった斬り

 → 予想範囲内の展開ですが……。どうだろ?

 

5)ヒトエフタエに替え玉(AFによる合成音声とか)を置いてきた、マキシ

 → これもありそう。マドラは騙せても、AFは騙せない=ニナリスが感付いたとかね。暴走マキシによる虐殺開始で、マザーズ含めた皆殺しからの44分間の奇跡?

 しかしマキシは「剣聖の称号」の為に、マドラからの命令に縛られているはずなんですが、それを反故にするのかしら? ただマキシが何故ここまで剣聖に拘泥するのか。そこにポイントがあると思います。マドラから力で抑え込まれていることもあるのでしょうし、トロフィーとしての剣聖が欲しいのは(超越した存在とはいえ)子供らしい思考です。が、ここに「元剣聖・カイエン」への対抗心があるんじゃないのかなあ。ミース、アウクソーの母達を苦しめていた父親・カイエンへの意趣返しというか。「ボクが剣聖になったら、お母さんたちがボクを認めてくれる。カイエンよりも愛してくれる」という短絡的思考+ジョーカー宇宙での孤独感をどうにかしたい、という「人間くさい」思考が舞混ぜになっているのかも知れません。

 後に剣聖となり懐園剣・雄剣の新の主となるマキシが、まだ何者でもない時代。それが魔導大戦なのでしょう。しかし魔に導かれる大戦かあ。あ。カイエンが懐園剣・雌剣というのももしかしたら……。

 

6)アマテラス陣営からの誰か

 → まあ出てきていないの、沢山いるしね。忍者の彼女とかいろいろ。

 

7)外部GTM(ヒトエフタエorディー・カイゼリン)による狙撃

 → GTMは壁など無視して全てを見通せます。対人レーザーなどで人間を狙撃できるんですよ。周囲一帯を灰にしちゃうのが一番手っ取り早いですが、このときは要人保護がありますらからね。複数ロックオンによる狙撃が一番。しかし首を落とすくらいの威力で狙撃って出来るのだろうか。出来るんだろうな。で、これまでこの方法を使わなかったのは……やはり人道的なものなのか。GTMによる騎士への狙撃は騎士法には引っかからない気もするけど。それか相手GTMとAFによる妨害/カウンターを怖れてのことかも知れないなあ。複数人の騎士相手に同時狙撃は可能だとしても、その瞬間前もって仕込まれた罠で人質を殺されてもよろしくないですからね。

 

8)GTMからMHへモーフィング中のシュペルターからの対人レーザー

 → これもありそうなんだよなー。GTM/MHの自己判断による自分の母親=アウクソーを護る行為。外部の狙撃より狙いやすそうだし。

 

 これらのどれかで、ジィッドの手下の首を落ちたのかな?

 アウクソーに刃を向けていた手下の騎士は黒髪なので、ここもミスリードを誘っているのでしょうねぇ。アウクソーの「びくっ」は彼女が目にした何かに対する反応、かな? 多分。いや、本当に首が落ちた可能性も残されていますけれども。

 

 

 でさー、気になるのはミースの流血なんだなー。

 マジでアウクソーの首が落とされ、その血とミースの血が混じり合ったとき、血の召喚が始まる……とか、何らかのキーになりそう。

 はい。女性は子宮内に受精卵が着床すると、それに含まれるデータが自身にアップロードされます(カイエンとクーン参照。これは我々の世界でも言われてます)。ってことは、ミースとアウクソーにはマキシを経た遺伝子の書き換えが行われているんですよね。故にマザーズでもあり、また、彼女たちがすでに〈特殊な存在〉になっていることへの伏線じゃないかなあ。

 で、神による介入・44分間の奇跡が始まる。

 

 どうなる!? 後事を知りたくば、次回をご覧あれ!

 

 ……次回を早く読みてぇ-。

 

『FOOL for THE CITY』とわたくし。

 

 2026新春、初回の音楽ものはこれだ!

 

 ということで『FOOL for THE CITY 2025Edition』の話です。

 

 

 永野護先生衝撃のコミックデビュー作、その再発版ですね。

 ファイブスター物語共々「これは漫画じゃなくて、イラストストーリー」的な言い方も永野センセご本人がされてましたけれども、これこそが永野護によるコミック形態表現の始まりであります。でしょ?

 読み返してみると、改めて「この話はタイトル通り街の話」なのだなーと。

 この「街」に関しては色々な意味がありますし、読者ごとに捉え方が違うでしょう。なので、それぞれの判断にお任せします。

 

 今回の描き下ろし表紙はデジタルペイントによるもので、オリジナル版を踏襲したものになっています。視点が変更された感じになっていますし、画のタイトルも変わっていますので、要チェック。

 もちろん巻末にある新規「機材関連」ページも必見です。

 ……楽器好きを置いてけぼりにしない構成なので、大丈夫よ。多分。

 逆に言えば楽器初心者を楽器沼に叩き込む内容かも。しかし卓までか……。

 楽器関連だけではなく永野ファンにとってチョイチョイ凄いことを書いているので、とりあえず読むべし。

 そうそう。あのヘッド裏にあるシール、これガレキなんかのパッケに貼ってあったシールのラケですよね。引っぺがして貼ったのか、それともシールを台紙ごと貰ったのか。どっちなんだろ?

 

 サンライズ入社後の永野センセ。その様々なデザインや発言などに〈友人達ともども狂わされていた〉時代、突如として現れた『FOOL for THE CITY』。これで音楽や楽器、バイク、ファッション他様々なものへの興味という動線を作られた方も多いのではないでしょうか?(当時、永野センセ曰く「(サイン会かなんかに)来るファンの子たちがお洒落だった」って発言がありました。今でこそコミック、アニメファンはオサレな人が多くなりましたが、ニュータイプ創刊以前のイメージだとそうではなかったわけです。その後、永野センセや『FOOL for THE CITY』による啓蒙(?)でファンたちも変わった、のかも知れません)

 

 今読み返す『FOOL for THE CITY』は、初々しさと共に何処か達観したようなふてぶてしさと当時のカルチャーが融合していて、味わい深いものでした(ファッションとかね。他、FOOL for THE CITYのカセットは今ならデジタルデータを入れたメモリになっているだろうな。で、ネットに繋がっていない媒体で聴け! とか)。

 よーくご覧頂くと永野デザインの新機軸と共にファンサービス的なモブや装飾品、紋様、小ネタ、音楽ファンなら分かるでしょ? 的なものに満ちあふれています(アニマル・ドーシー無事やンけ、とか、シャーリー・テンプルおるやん。元彼の様子を見に来たんかいな? とかそういう『FOOL for THE CITY』本編関連の補完をサラッと描いている部分もありますよ)。それこそ部屋番号とかですら「!」ですもの。ページの端から端まで目を皿のようにして読むべし! です。

 ……で、当時から永野センセは「女は足だ!」と明言されておりまして。カントク(おトミさん)はお尻……という話もこの作品に入っていますが、そのシーンで描かれているいろいろな足は当時の永野デザイン集合! という豪華さであります。あれ? 三つ折りソックスのエストがいないぞ。連載前で隠し球だったからかしらん?

 

 ともかく今も続く『ファイブスター物語』と直接リンクしている作品ですから、ファン必携の書といえるでしょう。日本書紀における「一書に曰く」みたいなもんですし。……あれ? 違うか? でも重要なエピソードであることは変わりありません。

 

 因みに『FOOL for THE CITY』初版本は、以後刷られたものと違う部分があります。

 今回の2025Editionもそうなったりして。まさかねぇ。

 

 ともかく、読め! ってぇことで。

 

 

『FOOL for THE CITY』とわたくしの赤っ恥。

 

 当時、永野護&『FOOL for THE CITY』に影響されていた〈いたいけなガキ〉であったわたくしですから、口から出るのは永野護センセの発言から得た知識ばかりでした。音楽、楽器、バイク、ファッション他。

 フォガットっちゅうバンドがー、とか、アシュ・ラ・テンペルがーとか、ドイツのプログレがー、とか、Gibsonのフューチュラがー、とか、パンヘッドがー、とか、So-Calのー、とか、レイヤードが-、とか……ああ。なんて薄さ。

 そんで、とあるパイセンから「お前の知識は全部永野護の受け売りやんけ」と指摘され、顔を真っ赤にしましたねえ。ああ。赤っ恥。

『FOOL for THE CITY』を読み返すと今でも鮮明にその時のことが思い返せます。

 

 しかし今もあんまり変わってないような気がしますけれども。

 取材などで様々な方々から聞いたことや、各種資料から引いてきたものがわたくしの知識(?)になって、それを書いている訳ですから。

 いろいろな事に興味を持って、何でもチェックしておく癖は『FOOL for THE CITY』とそれに関係した個人的な赤っ恥から始まったものかも知れません。例えそれが薄っぺらい、広く浅い知識になろうとも。

 

 恥も掻いておくと後に役立つという話。

 

 

 

『FOOL for THE CITY』と楽器。

 

『FOOL for THE CITY』という作品と楽器は切っても切れない関係性です。

 登場人物と同じ存在だ、と言っても過言ではありません。

 

 例えばラッセル・コール(ラス)が最初に手にしたベースギターはFender プレシジョン・ベースですが、作中でも多く描写されています。そんでラス、彼は基本指弾きです、きっと。スラップもビートリズマーでやっていますね。

 アラニア・シャンカール・アンダーソンはFender ストラトキャスターからGibsonのレスポールジュニア・メロディメーカーに持ち替えます(持ち替え後のシーン、メロディメーカーのヘッドのベタを塗り忘れているのだ。ベタ指示は残っているんだけどね。チェック!)。持ち替えはイアン・マクドナルドが復帰、彼がGibsonレスポールスタンダードで参加したときですね。ディッシュインレイ+木目無し……だから、ゴールドトップか。と思わせておいて、センターにラインが入っているので(ブックマッチかしら?)、違うかも。

 イアンは後にGibsonエクスプローラーがメインになっております。……フューチュラではないはず! でもボディくびれ部分がやや細いんだよなー。エクスプローラーのヘッドではあるんだけどさ。

 スティーブ・フリップスはSonorのドラムセット。途中からドラム全体を描くシーンがなくなるのですが、まあ、面倒よね。ドラムを描くの。

 

 楽器やPAや、他の描写も流石! でして。

 実際現場知らないとこんなとこまで描かないよね、っていう。

 ギターケーブル抜け防止のストラップ引っ掛けから何から、拘りの画ですよ。

 ……そんで、実際のFoghatのライブ映像見ると、使用ギターもすっかり同じというかー。レスポールジュニアとレスポールスタンダード(ゴールドトップだけど)。ベースはプレベかしら? これも拘りかもなあ。

 

 楽器って描くの大変なんですよ。

 形状や各種パーツやら、とにかく複雑。

 ええと。お手元に楽器があるのなら、指先や掌で色々な所を触ってみて下さい。単純なラインではないでしょ? 直線だと思った部分が少し膨らんでいたり、直角に落ちずにややテーパーがかかっていたり。これを表現するのは骨です。

 楽器を上手く描ける人は凄いんだぞう。

 

 割と漫画やイラストで描かれる楽器って、描く人が現物を持ったことがあるかどうか、持ったとしてもキチンとその体験を消化しているか分かることもあるんですよね。「ああ、この人ベースをストラップで下げたことないんやろな」とか。もちろん持ったことなくても、写真や映像から全てを読み取って表現してしまう方もいらっしゃいます。あ。もちろん模写とかトレースじゃなくてね。

 これは服(和服、洋服)や刀などの武器の描き方でも言えることでしてね。イラストがどれだけ超美麗でも「そうはならんやろ」、って。逆に、ざっざっと雑に描いてあってもそこに「重み」や「意味」がキチンと表現されている画もあるんですよ。そういうのを目の当たりにすると「すげえなあ」って思わせられます。

 ドラマなどの実写でも「ええと、バンド経験者なら分かることが再現されていない」ってのも時々ありますけれども。

 まあどれも「些細なことに拘って意味のない指摘をするお前は糞だ! 糞だ! 糞だ! 糞だ!」って言われちゃうだろーなー。でも気になるの。

 

 あ。

 あと音楽漫画で特定のジャンルを腐しているものもありますが、それはそれで悲しい。ジャンル分けなんて意味がないけれど、それ以前の問題でもありますけどね。

 もちろん凄い音楽漫画は数多くアリマス。

 ロック、バンド、吹奏楽、ジャズ、ブルース……兎に角目に付いたものから読んで欲しいと思います。もちろん『FOOL for THE CITY』もね!

 そんで笠原倫先生の「唇にパンク」。名作です。はい。

 

 

 

『FOOL for THE CITY』とわたくしの楽器。

 

 

 よ、漸くここへ辿り着いた。

 

『FOOL for THE CITY』から楽器に興味を持った訳ですから、当然の如く「オレァ、Fenderのプレシジョン・ベースでベーシストになるんだぜ! それかヨォ、リッケンでイエスのクリス・スクワイアよ! くりす! 壊れ物! フル・フラジャイル! すたーれーす、ばいぼぉー、ぶらーぁっー」なんて展開に……なりませんでした。

 選んだのはギター。おまけに『FOOL for THE CITY』に出てくるギター類と被らないチョイスばかりで……。加えてFRT搭載ギターばかりですもの。木目が出ていてもう透く削った化粧板を貼り付けたもんだし。塗膜もラッカー塗装皆無で、ポリウレタンかポリエステルもんだもんね! 流石安ギター愛好家。そんで8弦ギターへ進んでいくという。でもIceman(ミラージュ)のデザインは未だに欲しいっすけどね。

  あ。あとアンプはLaney、Boss、デジタルギタープロセッサもLine6だもんなあ。エフェクターもディレイくらいだし。ボリュームペダルにピックはJIMDUNLOPで被るところ皆無。あ。ワウペダルは多分写真と同じモデル使っている……はず。ここだけ一致してた。よっしゃ。

 

 この辺り、まあ臍曲がりというか、何でもかんでも真似はシネェぜという意思表示なのかしらん? この生来の臍曲がりは今現在の作家という生業にも影響を及ぼしておりましてネ。嗚呼、そもそも作家になる予定はなかったのに。文章を書くのが苦手だった学生時代からすれば訳が分からんことだわい。気がつけばこの道を歩んでおりますわ。そんで、あのとき憧れだった方々と会ったり、一緒にお仕事をするなんて……。儂、本当に運が良いんだな。偶然だとしても。いや、でもそれって沢山の方々の尽力、助力あってのこと。自分だけではそんなことになっていない。本当に有り難いことなんですよ。でも……ええと。あるエピソードがありまして。それを踏まえるとそうなるのも必然だったのかなあ(この「必然」に関して色々エピソードがあるのですけれど)? 

 

 さて話を戻して。

『FOOL for THE CITY』を読んでから楽器が欲しい! になって以後の変遷を書くと

〈アコギ → Les Paulコピーモデル → Ibanez(永野センセはイバニーズ) → 他〉って感じに進みました。ベースは1本あるけれど、このコはプレベやジャズベとは全く別方向のもんです。でも結構良いトーン持っているんですよ。ええ。

 Line6 Helix/HX Stompのお陰でここんとこベースを弾くのが楽しいわー、って思い始めましたが、独学なのでスラップとか出来ねーでやんの。ツーフィンガーでぺちぺち弾くだけ。それもルート音を。初心者も初心者ですよ。

 でも上手く弾けたときは実に楽しく嬉しいでんな。

 

 おっと。実は『FOOL for THE CITY(Foghatの方)』をコピったことはありまして……。『FOOL for THE CITY(コミック)』に出会ってその存在を知った後、深夜ラジオの提供バックかなんかで『FOOL for THE CITY(Foghat)』が掛かっているぞ! と知ってからエアチェックして聴いたのが原曲を耳にした最初。

 その後、友人が手に入れた音源でフルコーラスを知るわけです。で、耳コピをしましたが、後にそれが「微妙に合っているけれど、絶妙に違う」ことが分かったのでした。2本分のギターを1本でやろうとしていたから余計にねぇ。

 未だしっかり覚えていませんし弾けませんが、やはり「らしい」音が自分のギターから出るのは大変な喜びで御座いました。ふははは。

 

 ってことで、 ごぉいんぐ・とぅ・だ・しりぃー と歌いながら今回は締め。