理想も現実も軽視した定額減税 | 尾張エクセルの「日々精進ブログ」

尾張エクセルの「日々精進ブログ」

木曽の清流に映え、心触れ合う躍動都市;愛知県一宮市に活動拠点を置く、尾張エクセルです。保守政権を応援しつつ、経済・社会・軍事防衛まで、地域や国内、海外の気になる出来事や話題を、独断と偏見溢れる一味違った目線でブログ提供します。

岸田文雄内閣の目玉政策の1つ「定額減税」が始まった。会社員の場合は、給料や
ボーナスの手取りが増える。

高額所得者を除いて1人あたり4万円(所得税3万円、住民税1万円)、扶養家族
の分も合わせて税金が安くなる。これを歓迎しない人はまずいないだろう。だが、
やり方があまりにもまずい。これっきりにすべきだ。
政府が一律にお金を配るのと比べると、仕組みは複雑だ。最終的に減税は同じ額に
なるのだが、所得によって6月にドンッと手取りが増える世帯もあれば、減税分が
何か月かに分割される人もいる。さらには、給付との組み合わせになるケースも。
消費行動に与える影響は、世帯によって大きく異なるだろう。
住民税を徴収する地方自治体や所得税を源泉徴収している企業の担当者は、それぞ
れの納税額、家族構成に応じて処理していかなければならない。とても面倒である。
子供が生まれるなど扶養家族が増えれば、減税額も変わる。
そもそも税制と、「公平・中立・簡素」を旨としている。「経済力に応じた 公平な
負担、経済活動の意思決定をゆがめないような中立性、納税者が理解しやすい簡素
な仕組み」が必要なのだ。だが、今回の定額減税はいずれの条件も満たしていない。
また、産経新聞とFNNの合同世論調査(5月18、19日)の結果では、「評価
しない」が56.4%と過半を占めた由。減税規模3兆円超という大盤振る舞いにも
かかわらず、岸田政権浮揚に結び付くかは全く見通せない。今のところ、岸田首相
の政治勘はきわめて疑わしい。
「税は政治だ」とは、実によく言ったものである。毎年末の与党税制調査会による
税制改正作業では、重鎮が多様な利害を調整してきた。
自民党税調の幹部が、「あの業界の優遇措置をやめて増税するのならば、代わりに
こっちの税率を引き下げるんですよね」と聞かれて、「税とはそんなもんじゃない。
バーター(取引)なんかせんよ」と、たしなめたという。しかし、議論が立ち往生
しかけたとき「わしゃ、中間がええと思うんじゃ」と ひと言。税率の引き下げ幅を
半分にして、優遇期間を延ばすことで決着を図ったそうである。
そんな風に、与党税調は各方面からの陳情を受けて丸く収め支持基盤を固めてきた。
その半面で、「日本の税制はつぎはぎだらけのパッチワークのような体系になった」
とされる。
「これはよろしくない」と言わんばかりに「公平・中立・簡素」を強く主張してきた
のは、首相の諮問機関である政府税制調査会だ。有識者で構成して、中長期的な視点
から税制のあるべき姿を示してきた。
但し、その昔、自民党税調の大物は、政府税調について「軽視しない」と断った上で
「無視する」と続けたとされる。
米国の独立戦争のスローガン;「代表なくして課税なし」を裏返せば、税制を決める
のは学者ではなくて、国民を代表する政治家なのだ。
その総本山である与党税調は、時の首相より権威があるともされた。しかし、第一次
安倍晋三政権から首相官邸主導の態勢が整うにつれ、影響力は低下した。流れを引き
継いだ岸田首相が主導して打ち出した「定額減税」は、政府税調の掲げる理想からも
党税調の現実路線からもほど遠い。かといって画期をなすような内容でもない。
それにもかかわらず与党内では、「来年度以降も定額減税を実施すべきだ」との声が
上がっているというようだ。否定的な意見もあるが、調整の末に「中間でいこう」な
どと生ぬるく決着するのは避けるべきだ。
国の根幹である税制を軽視した「悪しき前例を作る」ことになるぞ!