政治資金規正法の改正案が6月6日、衆院本会議で可決し、衆院を通過した。自民党
派閥の政治資金問題を踏まえ、政治資金パーティー券の購入者の公開基準額を現行の
「20万円超」から「5万円超」に引き下げると記載をした。不記載があった際に、
議員本人の連帯責任を問う仕組みも盛った。…果たして、これで十分なのだろうか? |
改正案には自民党と公明党、日本維新の会などが賛成した。6月7日に参院で審議に
入り、6月10日に本格的な質疑が始まるという。
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岸田文雄首相(自民党総裁)は6月6日、首相官邸で「改正を確実に実現するために、
引き続き緊張感を持って取り組まなければならない」と語った。また 「実効性がない
という指摘はあたらない」とも発言していた。 |
政治資金収支報告書について、議員本人の「確認書」の提出を義務づける。「連座制」
の要素を取り入れ、議員が必要な確認を怠った場合は公民権停止などの処罰を科す由。
政策活動費について、使途などを監査する第三者機関の設置も盛り込んだ。付則では、
3年後の見直し規定を設けた。規正法違反で所属議員が起訴された政党を対象に政党
交付金を一部減額する制度の創設も検討する。 |
…とは、言うものの。 |
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「政治とカネ」の重大問題が発生する度に、政治家が世の中の批判を受け、政治家や
政党自身が「その場凌ぎ」的に議員立法で改正を繰り返してきたのが政治資金規正法
である。そのため、罰則は相当重い(最大で「禁錮5年以下」)が、実際に政治家に
同法の罰則を適用して処罰することは容易でない。「ザル法」と言われてきた所以だ。 |
ところが 実は、政治資金規正法は、単に「ザル法」だというだけでなく、ザルの真ん
中に「大穴」が空いているというのが現実であろう。 |
「政治とカネ」の典型例が、政治家が、業者等から直接「ヤミ献金」を受け取る事例
である。それは「水戸黄門」のドラマで、悪代官が悪徳商人から、「越後屋、おぬし
も悪よのう…」などと言いながら「小判」の入った菓子折りを受け取るシーンを連想
させるものであり、まさに「政治家の腐敗の象徴」である。 |
しかし、国会議員の政治家の場合、「ヤミ献金」を贈収賄罪に問うのは容易ではない。
そこでは「国会議員の職務権限」との関係が問題となる。国会議員の法律上の権限は、
国会での質問・評決、国政調査権行使等に限られている。与党議員の場合、いわゆる
族議員としての「政治的権力」を背景に、各省庁や自治体等に何らかの「口利き」を
することが多いが、その場合、「ヤミ献金」のやり取りがあっても、職務権限に関連
しているとは言えず、贈収賄罪の適用は困難なのだ。 |
だからこそ政治資金規正法という法律があり、政治家が業者から直接現金で受領する
「ヤミ献金」こそ、政治資金規正法の罰則にて重く処罰されるのが当然と思われるで
あろう。だが 実際には、そういう「ヤミ献金」の殆んどは 政治資金規正法の罰則の
適用対象とはならない。「ザル法」と言われる政治資金規正法の真ん中に「大穴」が
空いているのである。 |
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小生が愛読をする日経新聞6月8日付けの朝刊コラム;【春秋】から一部加筆の上で
引用して紹介する。 |
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「ザルに申し訳ない」。国民民主党の玉木雄一郎代表がおととい、こんなコメントを
していた。衆院を通過した「政治資金規正法改正案の」ことだ。「ザル法」と呼ばれ
て久しい。広辞苑を開いたら「ざるの目のように荒くて、抜け道の多い不備な法律」
との説明があった。
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それにしても、本当に失礼な 比喩なのである。植物を編んで作る「ザル;編組製品」
は、縄文時代の遺跡からも出土している。稲作よりも長い歴史を持つ技術だ。素材や
編み方、大きさを変えることで、調理器具にも漁具にもなる…。軽いから、運搬にも
ぴったり。プラスチックや金属製になっても、生活に欠かせぬ道具に変わりはない。 |
裏金問題が発覚して以降、延々と続いてきた法改正の議論が終盤を迎えた。はたして
「政治活動を国民の不断の監視と批判のもとにおく」という目的にかなう器は出来た
のだろうか。岸田文雄首相は今の国会での衆院解散を見送る意向だという。これでも
まだ国民の支持は得られないと、ご本人なりに考えたのかもしれぬ。 |
一年中活躍をするザルだが、炊飯ジャーが普及する以前は、この時期に使われたのが
「飯笊(めしざる)」である。「竹で編んだ飯びつ」のことだ。炊いたご飯が暑さで
饐(す)えるのを防ぐために、通気性に優れた容器で保存する。日本人の知恵の所産
でもある。風通しを良くして、中身の腐敗を防ぐ…。そんな法律ならば、ザルだって
失礼とは思うまい。 |