空港で飛行機に搭乗するときのことを思い出してください。ボーディングブリッジを
使って搭乗するときも、タラップを使って搭乗するときも、飛行機には決まって機体
の左側のドアから搭乗しているはずです。
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機内の非常用設備として離陸前に案内されるのだが、ドアは飛行機の右側にも設置が
されているのですが、乗客の乗降には決まって左側のドアが使用される。 |
「なぜ飛行機に搭乗するときは、左側のドアなのか?」その理由は、飛行機ではなく
船の歴史にあるのだという。 |
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船の世界では、船の左側を「ポートサイド(port side)」、右側を「スターボードサ
イド(starboard side)」と呼ぶ。ポートサイドは 文字どおりに「港側」であるが、
スターボードサイドとは 「舵側」を意味する「ステアリングボードサイド(steering
board side)」が訛ったものだという。 |
現代の船は舵が船体の最後尾に設置されているが、中世の船(ヴァイキング船)は舵が
船体の右側後方に設置されていた。舵が右側に設置された理由は定かではないが、一説
には右利きの人が多いからではないかとされている。船体の右側に舵があれば、右利き
の人が利き手を使って舵を操作出来るからである。 |
船体の右側に舵が設置されると、港にて人の乗降や貨物の積み揚げを行うときは、舵を
破損しないように、船体の左側を着岸させることになる。これが船の世界では、左側を
ポートサイド、右側をスターボードサイドと呼ぶようになった理由だそうである。 |
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このようにして船の世界では左側がポートサイドとなり、古くから人の乗降には船体の
左側が使用されてきたが、20世紀に入って飛行機が発達すると 飛行機も船に倣って、
機体の左側から人の乗降が行われるようになった。
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やがてボーディングブリッジをはじめとする多くの空港設備が、この習慣をもとにして
設計されるようになり、飛行機も船と同様に左側がポートサイドとなったのだという。
現在では、ごく一部の例外を除き、ほぼ全ての空港において、「乗客の乗降には左側の
ドアが使用される」ようになっている。 |
一般的に、飛行機の運航においては、左側ドアを使って乗客の乗降を行い、右側ドアを
使って 機内食や飲料の搬入、ごみの搬出などの整備作業を行っている由。したがって、
航空業界では、左側のドアを「パッセンジャーエントリードア(乗降用ドア)」、右側
のドアを「サービスドア(業務用ドア)」と呼んでいる。
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乗客の乗降だけでなくて 飛行機には 船の決まり事が多く取り入れられている。飛行機を
見ると 左の主翼の先端に赤いランプが、右の主翼の先端に緑のランプが設置されている
が、これも、船体の左側に赤い航海灯、右側に緑の航海灯の設置が義務付けられている~
という船の規則に倣ったものである。
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左に赤,右に緑の航海灯は、船の進行方向を把握するために必要な装備で 自船の正面に
赤い灯火が見えた場合、相手船は左に向かって航行していることになる。逆に 自船から
緑の灯火が見えれば、相手船は右に向かって航行しているんおである。もし両船に衝突
の危険があるときは、赤い灯火(赤信号)を見る船が回避行動を取る必要があると定め
られている。
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また 自船から、左側に緑、右側に赤の灯火が見えれば、相手船はこちらに向かっており、
両船に衝突の危険があるときは、それぞれの船が右側に回避する必要がある。 |
このような海上交通の規則が 飛行機にも導入され、飛行機でも左側に赤い灯火、右側に
緑の灯火の設置が義務付けられ、船と同様に衝突の危険があるときは、赤信号を見る側
が回避行動を取ることが定められた。 |
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これらの他にも、飛行機には船に由来する言葉や習慣がたくさんある。 |
機長を「キャプテン」と呼ぶこと、機長は4本線の階級章(肩章や袖章)を付けること、
客室を「キャビン」と呼ぶこと、乗務員を「クルー」と呼ぶこと等 全て船の決まり事が
飛行機に持ち込まれたものである。 |
そもそも「空港」は「空の港」であり、航空業界では飛行機のことを 「エアクラフト」
や「エアプレーン」でなく「シップ」と呼ぶ習慣があり、飛行機の機体番号は「シップ
ナンバー」、使用する機材の変更も「シップチェンジ」と呼ばれる。 |
飛行機の航法にも船の航海技術が導入され、航行距離は「キロ・メートル」ではなくて、
「ノーティカル・マイル(海里)」、航行速度もマイルを基準にした「ノット」が使用
されている。また、現在のように慣性航法システムや、人工衛星や無線標識による電波
航法が発達していなかった時代には、陸地の見えない外洋を航行する船舶の航海技術が、
大陸間を横断する飛行機でも利用されていたという。 |
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今回は飛行機に左側のドアから搭乗する理由や、意外に多い、「船と飛行機の共通点」に
ついて紹介した。ちなみに、現代の船は、舵が船体最後尾の中央に設置されているため、
ポートサイドを着岸させなければならない理由はなくなっている。実際、船の運航の現場
では港や岸壁の状況によって、スターボードサイドを着岸させることも全く珍しくない。 |
現在は、船より飛行機のほうが忠実にポートサイドを守って運航されているようである。 |