統合幕僚監部は10月14日に、「平成28年度上半期(平成28年4月1日~9月30日)の 緊急発進実施状況」を発表した。それによると、同期間の緊急発進回数は594回であり、 前年度の同時期と比べて251回(73%増)の大幅な増加となった。これは半期毎の統計 を取り始めた平成15年度以降で最多だったという。 |
これまで最も多かったのは、平成26年度の上半期の533回。このままのペースで推移を すれば、1年間で過去最多だった昭和59年度の944回を上回ることになる。 |
また、平成28年度第2四半期(7月1日~9月30日)の緊急発進回数は313回だった。 |
平成28年上半期での 緊急発進(スクランブル)の対象国・地域別回数及び割合(推定を 含む)は、中共機407回(約69%)、ロシア機180回(約30%)、台湾機5回(約1%)で、 その他2回(約0%)となっている。 |
中共機に対する緊急発進回数は、前年同期と比べて176回増加しており、国・地域毎の 緊急発進回数の公表を開始した平成13年度以降最多となった。ロシア機に対する緊急 発進回数は、前年同期と比べて72回増加した。 |
第2四半期の緊急発進の対象国・地域別回数及び割合は、中共機が208回(約66%)、 ロシア機;102回(約33%)、台湾機;2回(約1%)、その他1回(約0%)となっている。
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同上半期の方面隊等別の状況は、北部航空方面隊が161回(約27%)、中部航空方面 隊が17回(約3%)、西部航空方面隊が34回(約6%)であって、南西航空混成団が実に 382回(約64%)の緊急発進を実施した。 |
前年同期と比べて、全ての航空方面隊等の緊急発進回数が増加した。 |
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防衛省は「中共機へのスクランブルが急増した背景」として、中共機の航空戦力近代化や 東支那海海上における情報収集・警戒監視の強化を指摘した。また、「より遠方での制空 戦闘、対地・対艦攻撃能力などの向上を目指す訓練等とも関連がある」として、西太平洋 で行動の自由を確保するための接近阻止や領域拒否(A2AD)能力強化が背景にあると 分析している。(10月15日付産経新聞記事より引用) |
中共機に対する緊急発進の大半を引き受けている南西航空混成団においては、今年1月 に第9航空団を発足させて、戦闘機飛行隊を2個体勢に増強したが、それでも他の航空方 面隊と比較にならないくらい戦闘機1機当たりの負担は大きいという。 |
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戦闘機1機当たりの緊急発進回数を比較すると、南西航空混成団は戦闘機40機(1個飛 行隊20機で計算。以下同じ)で382回の緊急発進を実施しているので 1機当たりの緊急 発進回数は9.55回に上る。北部航空方面隊は戦闘機80機(注:7月に三沢基地;第8飛 行隊が築城基地に移動したことを考慮せずに計算)で161回なので、1機当たり約2回だ。 中部航空方面隊は戦闘機80機(注:8月に、百里基地の第305飛行隊が新田原基地へと 移動したことを考慮せず計算)で17回なので1機当たり約0.2回であり、西部航空方面隊 は戦闘機40機で34回なので1機当たり約0.9回だ。なんと南西航空混成団での戦闘機 1機当たりの負担は中部航空方面隊の48倍近くに上ることになる。 |
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航空自衛隊では、他の航空方面隊から西部航空方面隊へと戦闘機を移動させているが、 それでは南西航空混成団の負担は一向に軽くならない。第9航空団の戦闘機部隊を更に 増強したいところだが、那覇基地の地積の制約によってこれ以上増やすことが無理ならば 「下地島空港の利用」を早急に検討すべきではないだろうか。或いは、八重山(石垣空港 宮古空港など)への配備検討も必要であろう。 |