昨年末、厚生労働省が軽貨物自動車運送事業の運転手(個人事業主)についての労働者性に関する資料を発表しました。
個人事業主だった運転手が労災を請求する事案が増えており、
またその請求が認められるケースが増えていることに伴う対応です。
本来、個人事業主には労災の適用はありません。
労災保険法に規定されている「労働者」とは以下のとおりです。
・労災保険の適用事業に使用される者
・労災保険の適用事業に賃金を支払われる者(使用従属関係にある者)
個人事業主は本来独立した存在であり、
事業に使用されている者でなければ、賃金を支払わられる者でもないので、
労災保険法における「労働者」には該当しないのです。
ではなぜ、個人事業主である運転手が労災を請求し、
それが認められるのでしょうか。
それは、たとえ契約上、個人事業主とされている場合でも、
実態として労働基準法上の労働者に該当するような場合があるからです。
実態は労働者なのに、形だけ個人事業主となっていると、
労災保険をはじめ受けられる補償が受けられないこととなります。
こういったことを回避するため、契約が個人事業主となっていても、
実態はどうなのか、というところをしっかりと判断することになります。
この「労働者性」の判断が難しいところではあるのですが、
以下の2つの基準で判断されることになります。
・労働が他人の指揮監督下において行われるかどうか、
すなわち他人に従属して労務を提供しているかどうか
・報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか
上記の2つの基準を総称して「使用従属性」というのですが、
使用従属性が認められるかどうかの具体的な判断基準は、
労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)においてまとめられています。
今回厚労省が出した資料については、労働者性が認められた3事案について、
先の判断基準に沿って判断し、どのような点から労働者制が認められたかの具体的な事例が掲載されています。
個人事業主に業務を委託している運送業の事業所については一度内容を確認して頂くことをおすすめします。
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