星の王子さま (新潮文庫)/新潮社
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(1)作者・作品について(訳者あとがきより)

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
1900年生まれ、フランス・リヨン、貴族の長男、行動主義文学、パリのパンテオンにプレート、50フラン紙幣
25歳、路線パイロットに
29歳、ブエノスアイレスに赴任、コンスエロに一目惚れ、結婚
35歳、リビア砂漠に不時着
1939年、第二次大戦勃発、召集され偵察飛行隊に編入、アルジェで動員解除
1940年、アメリカに移住
1943年、「星の王子さま」出版、原隊に復帰
1944年、偵察飛行に飛び立ち、戦死
2000年、機体の残骸がマルセイユ沖で発見

(2)登場人物
語り手。大人だが子供の心を持っている
王子さま 子供
王子さまの別れた恋人
(王さま、大物気取り、酒びたり、実業家、点灯人、地理学者)
ヘビ 王子さまを毒殺して、元の星に帰す
キツネ 王子さまに、「いちばんたいせつなこと」を教える

(3)あらすじ
6年前、僕が操縦していた飛行機が砂漠に不時着し、そこで僕は星の王子さまと出会う。僕と王子さまは砂漠で1週間を過ごし、その間に僕は王子さまの旅の話を聞いた。王子さまは小さな星に住んでいたが、恋人である花とうまくいかなくなり、彼女と別れて6つの星を旅した後、地球にやってきたのだった。王子さまは、地球でキツネと友だちになり、王子さまにとっていちばんたいせつなものは別れたバラであること、王子さまはバラに対して責任があることを教わる。僕がこの話を聞いた後、王子さまはヘビの毒によって死に、愛するバラが住む故郷の星に帰って行った。

(4)名言・コメント等
1.僕が6歳だったとき、大蛇ボアが象を飲み込んだ絵を描いた、→大人たちは「帽子」と。

2.サハラ砂漠に不時着、飲み水が1週間分、王子さまに出会う、「ヒツジの絵を描いて」、「ボアに飲まれたゾウなんていらないよ」、木箱の絵を描くと「これだよ、ぼくがほしかったのは」。

3.王子さまは星から来た。

4.王子さまは小惑星B612から来た、「おとなは数字が好きだから」、「新しい友だちのことを話しても、おとなは、いちばんたいせつなことはなにも聞かない」、王子さまが行ってしまってもう6年になる。

5.(3日目)バオバブとの闘い、小さなバオバブをヒツジに食べてもらいたい、バオバブ=悪い植物、見つけたとたんに抜かなくてはいけない、なまけ者が住んでいた星で3本ほっておいたから(※日独伊三国同盟の比喩という説があるそうです)。

6.(4日目)(小さな星なので)「陽が沈むのを1日に44回見たこともあったよ」、「1分でフランスまで行けるなら、それで夕陽が見られる」、「悲しくてたまらないときは、夕陽が見たくなるよね」

7.(5日目)ヒツジはバオバブだけでなく、花も食べる。→「トゲは、なんのためにあるの?」、「花は弱いんだ。ものも知らない。でもできるだけのことをして、自分を守っている。トゲがあれば、みんなこわがると思ってるんだ」、「適当に答えただけだ。大事なことで、忙しいんだ、僕は!」、→王子さまは、本気で怒る。「そんなのは人間じゃない。キノコだ!」、「もしも誰かが、何百万も何百万もある星のうち、たったひとつに咲いている花を愛していたら、その人は星空を見つめるだけで幸せになれる。<ぼくの花が、あのどこかにある>って思ってね。でも、もしその花がヒツジに食べられてしまったら、その人にとっては、星という星が突然、ぜんぶ消えてしまったみたいになるんだ!それが重要じゃないって言うの!」→口輪を描いてあげる・・・(約束)。

8.ある日、種が飛んできて芽を出す。花が咲く。この花が生意気、見栄っぱり、わがまま、厄介。気まぐれなことばを真にうけては、とてもみじめな気持ちになった、「ことばじゃなくて、してくれたことで、あの花を見るべきだった」、「あれこれ言うかげには愛情があったことを、見ぬくべきだった」

9.王子さまは、花と別れる。(※よくありそうな男女の別れ)。そして、旅に出る。
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10.最初の星には、王さまが住んでいた。人が命令に従うのを望む。⇔「人にはそれぞれ、その人ができることを求めなくてはならん」、「権威というものは、なによりも道理にもとづく」

11.二番目の星には、大物気取りの男が住んでいた。「私を賞賛してほしいなあ!」、「どうしてそんなことがおもしろいの?」、<おとなって、やっぱり変だ>

12.次の星には酒びたりの男が住んでいた。忘れるために飲む、恥じているのを忘れるために飲む、飲むことを恥じている。

13.四番目の星は、実業家の星だった。星の持ち主、王さまは持ち主ではない、治めているだけ。星を持っていると、金持ちでいられる、→他の星を買える、→管理する、銀行に預ける=星の数を、紙切れに書いて、ひきだしにしまう。(※ビジネスマンがやっていることって、突き詰めればこういうことだと言っている。)→「ぼくは花の持ち主だったから、毎日水をやっていた。みっつの火山の持ち主だったから、毎週、煤のそうじをしていた。・・・だから、火山にとっても花にとっても、ぼくが持ち主で、役にたっていた。でも、あなたは、星の役にはたっていない・・・」

14.五番目の星、点灯人がひとりいる、夜になるとガス灯を点して、朝になると消す、指示通りやっている、自転周期が1分なので休むひまがない。「とってもすてきな仕事だ。すてきだってことは、役にたっているってことだ」、「あの人は、ほかのどの人にも、見くだされるんだろうな。王さまにも、大物気どりにも、酒びたりにも、実業家にも。でもぼくにはばかげて見えないのはあの人だけだ。それはきっとあの人が、自分自身以外のことをいっしょうけんめいやっているからだろう」、「友だちになれそうだったのは、あの人だけだ」

15.六番目の星、地理学者(※官僚のことでしょうか?)、探検家の話を書き留める、「その探検家がしっかりとした人物かどうか、調べさせる。探険家がうそつきだと、地理の本がとんでもないことになってしまうからだ」、「見に行くの?」、「そんなめんどうなことはしない。探険家に、証拠を出すように求める」(※私も、こういう仕事のやり方をよくします。)、「花ははかない。ほどなく消えるおそれがある」→「ぼくの花は、はかないんだ。世界から身を守るのにも、四つのトゲしか持っていない!それなのにぼくは、たったひとりで星に残してきた!」、→「地球を訪ねなさい」

16.七番目の星は、地球だった。

17.アフリカの砂漠におりる、ヘビがいた、「おれは、触れた者をみな、元いた土に帰してやる」、「もし故郷の星にどうしても帰りたくなったら、おれが力を貸そう」、「おれにはすべてが解けるから」

18.王子さまは砂漠を歩き続けた。花にしか出会わなかった。

19.王子さまは、高い山にのぼった。こだまが答えた。「人間っていうのも、想像力に欠けてるな。言われたことを繰り返すだけじゃないか。ぼくのところには、花がいた。あの花は、いつもぼくより先に、しゃべりだした・・・」

20.バラの咲く庭園、「あの花は、自分のような花はこの世に一輪しかないと話していたのだ。ところが、そっくりの花が五千もあるではないか。」、「ぼくはこの世に一輪だけの、財宝のような花を持っているつもりでいたけど、ほんとうは、ただのありふれたバラだった。」、「そんなものだけじゃ、ぼくはりっぱな王子さまになれないよ・・・、そうして王子さまは、草の上につっぷして、泣いた。」
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21.キツネが現れたのは、そんなときだった。「もし、きみがぼくをなつかせたら、ぼくらは互いに、なくてはならない存在になる。きみはぼくにとって、世界でひとりだけの人になる。」、「花がいてね・・・花はぼくをなつかせてたんだな」、「あんまり時間がないんだ。友だちを見つけなきゃいけないし、知らなきゃいけないこともたくさんある」、「なつかせたもの、絆を結んだものしか、本当に知ることはできないよ」、「人間たちはもう時間がなくなりすぎて、ほんとうには、なにも知ることができないでいる。なにもかもできあがった品を、店で買う」でも友だちを売ってる店なんてないから、人間たちにはもう友だちがいない」、「そうすればいいの?」、「がまん強くなることだ」、「同じ時間のほうがよかったんだけど。きみが夕方の四時に来るなら、ぼくは三時からうれしくなってくる・・・こうして幸福の味を知るんだよ。でも、きみが来るのがいきあたりばったりだと、何時に心の準備を始めればいいのか、ちっともわからない・・・ならわしって、大事なんだ」、→「もう一度、バラたちに会いに行ってごらん」、→「きみたちは美しい。でも外見だけで、中身はからっぽだね。きみたちのためには死ねない」、「あのバラだけが、彼女だけが、きみたちぜんぶよりもたいせつだ」、「ぼくが水をやったのは、あのバラだもの。・・・だって、彼女はぼくのバラだもの」→「じゃあ、秘密を教えるよ。とてもかんたんなことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」、「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」、「きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに、責任がある・・・」

22.鉄道員。「人は、自分のいるところにけっして、満足できない」、「子どもたちは、ぼろきれのお人形に時間を費やす。だから、そのお人形はとっても大事なものになる。それで、とりあげられると泣くんだね・・・」

23.物売り。のどの渇きをいやす薬を売っている。1週間にひと粒飲めば、もうなにも飲みたいと思わなくなる。「すばらしく時間が節約できる」、「その53分をどうするの?」、「好きなことに使うのさ・・・」、「ぼくなら、もし53分あったら、そっと、ゆっくり泉にむかってあるいていくよ・・・」
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24.物売りの話を聞いたのは、不時着して1週間目。水の最後の一滴を飲みほしていた。「あのねえ、きみ、もうキツネどころじゃないんだ!もうじきぼくは、のどが渇いて死んでしまうんだから・・・」、「たとえもうじき死ぬとしても、友だちがいたというのは、すてきなことだね。ぼくは、キツネと友だちになれたことが、すごくうれしい・・・」(※朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり)、→井戸を探しに行く。→「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を、ひとつかくしているからだね」、「そうだね。家や、星や、砂漠を美しくしているものは、目には見えないね!」、「うれしい。きみが、ぼくのキツネと同じ考えで」、「(眠ってしまった王子さまを抱き上げて)こうして今見ているものも、表面の部分でしかないんだ。一番大事なものは、目には見えない・・・」、夜明けに井戸を見つけた。

25.「心にしみる水だった。からだが必要とするのとは、まったくべつの水だった。星空の下を歩き、滑車の歌を聞き、僕が力仕事をして得た水だ」、あしたが、王子さまが落ちてきて、ちょうど1年目、このすぐ近くに落ちてきた。→僕は、飛行機の修理に戻る。

26.翌日の夕方、僕が飛行機の修理から戻ってくると、王子さまはヘビとしゃべっていた。「きみのはいい毒なんだね?ぼくを長く苦しませたりしないね?」、王子さまは雪のように蒼白になっていた。「夜になったら星を見てね。・・・ぼくの星は、夜空いっぱいの星のなかの。どれかひとつになるものね。そうしたらきみは、夜空ぜんぶの星を見るのが好きになるでしょ・・・ぜんぶの星が、きみの友だちになるでしょ?」(※ひとりを愛することで、世界中の人を愛することができる)、→「ぼく、苦しそうになるよ・・・ちょっとしんじゃうみたいになるよ」、「きみが噛まれたらいけないもの」、「そうだ、噛むのが二度目だと、もう毒はないんだっけ」、「あとはひとりで行かせて」、「ぼくはあの花に責任があるんだ!それにあの花、ほんとうに弱いんだもの!ものも知らないし。世界から身を守るのに、何の役にもたたない四つのトゲしか持ってないし・・・」。→王子さまは死んでしまう。

27.夜が明けてみると、王子さまのからだはどこにもなかった。(※キリストの復活のよう・・・)。描いた口輪に皮ひもをつけるのを忘れた。ヒツジが花を食べちゃったかもしれない。「そんなことないさ。王子さまは毎晩ガラスのおおいで花を守ってやるんだし・・・」、「きみたちにとっても、僕にとっても、ヒツジがバラを一輪食べたか食べないかで、世界のなにもかもが、これまでとはすっかり変わってしまう」。

(4)感想
 ・なんか、人生から戦闘力を奪う話だなぁ~。でも、みんなが王子さまのように生きたら、世界は貧しくとも平和になるのだろうなぁ~。
 ・みんなが「いちばんたいせつなこと」(=なつかせること、絆、時間を費やすこと)を求めたら、世界経済はどうなるのだろう?イノベーションは生まれないんじゃないかな。貧しい人は永遠に豊かになれないな~。貧困がテロリストを生むのではないのかな~?(もちろん、貧しい人が皆、テロリストになるわけではないけれど・・・)
以上
(担当:小笠原さん)