間があいてしまいましたが、ケース・メソッド事例に関する、私なりの考察を書いてみます。


 




この件でジレンマとなっているのは、製品の安全性と効用です。




・ 安全性は、「やけど」をする危険


・ 効用は、


 - 利便性(使いたいときにいつでも熱い湯が使える)


 - 環境性(不必要な水を使わない)


 - 省エネ、省コスト性能(必要最小限のエネルギー、水資源の消費)


といったところでしょうか。


 


 


このケースは筆者が実際に経験した事例です。


この給湯器は機器内でタンクの90度程度の熱湯と水を混ぜ、最高60度で給湯する設計になっています。


機器内の配管を少し変えるだけでタンク内の熱湯をそのまま蛇口に送ることは可能です。混合水栓を使うことで、好みの温度に調整することは可能です(従来型の温水器はほとんどこれと同じです)。




据え付け直後にこのことに気付き、やけどをするかどうかは自己責任なので、タンク内のお湯をそのまま給湯できるようにしてほしいと交渉したのですが、聞き入れてもらえませんでした。


 


メーカーとしては多少の効用を犠牲にしても、「安全性」を取ることを優先すべきという判断だったのでしょう。


それはメーカーの姿勢として否定すべきものではありません。しかし、「安全最優先」の名のもとに思考停止になってしまわないよう、気を付ける必要もあるのではないでしょうか?


 


ユーザーが子供や高齢者、障害者などの場合、間違えて熱湯の状態で蛇口をひねってしまったとき、咄嗟に止めたり温度調整をすることができず、重度のやけどを負ってしまうリスクがあります。


 


しかし、そういうリスクを考える必要のないユーザーもあり、その場合にはユーザーは利便性、環境性などの効用を優先してほしいと考えているかも知れません。


 


薬品などの、リスクと効用の比較がメーカーや専門家などにしかできない製品と、日用品など、ユーザー自身にリスクと効用の比較が可能な製品とでは、判断基準は自ずから変わってくるのではないでしょうか。


 


この製品の場合、ユーザーが最高給湯温度を設定できるような設計として、設置の時点で家族構成、使用形態などをしっかりコミュニケーションしたうえで最初の設定温度を決めるという対応もあったのではないかと考えます。


 


「安全か効用か」の二者択一に陥るのではなく、メーカーも(製造物責任の)リスクを負わず、顧客のニーズにも応える最適解を求め続ける姿勢が大切なのではないかと考えます。