考える言葉
このコーナーで以前(2008年11月20日)、「美しい言葉」と題するものを掲載しましたが、今回はその姉妹編です。
ちょっと気取った題名にしてみました。
私自身、考えるヒントになればと思い、大切にしてきた文章なのですが、皆様はどのようにお読みになりますか?
①人間にはお腹の底から笑えることがあるんだ。
それが生きるってことなんだということを、私は子供たちにちゃんと教えてやりたいんです。(伊集院静『機関車先生』中のセリフより)
②何もしないで、ただ、存在するだけで、満ち足りている、……世の中にこれほど仕合せなことがあるだろうか。(白洲正子『夕顔』より)
③味よりも栄養といったことだけが進むと、食品が過激な自然食になったりして、美味しい不味いはどうでもよくなり、正しい正しくないだけが問題となる。
食べ物を舌ではなく、頭で食べるようになる。(赤瀬川原平『ゼロ発信』より)
④優しさは公平であろうとする精神から出ずるように見えた。
わたしに優しくしよう、というものではなく、わたしの意見を先入観なく耳に傾けよう、という教師的態度から優しさが生まれてくる。
ただ優しくされるよりも、これは数段気持ちのいいことだった。(川上弘美『センセイの鞄』より)
⑤人間が出来て、何千万年になるか知らないが、その間に数えきれない人間が生れ、生き、死んで行った。
私もその一人として生れ、今生きているのだが、例えていえば悠々流れるナイルの水の一滴のようなもので、その一滴は後にも前にもこの私だけで、何万年遡っても私はいず、何万年経っても再び生れては来ないのだ。
しかもなおその私は依然として大河の水の一滴に過ぎない。
それで差支えないのだ。(志賀直哉「ナイルの水の一滴」)
⑥毎日夢を追いながら飛びまわっている彼等の姿には、生きることに賭けているいじらしさがあふれていた。(北小路健『古文書の面白さ』より)
⑦子どもの「早く」と大人の「早く」は時間的にはずいぶん違います。
子どもは子どもなりに早くしているのです。……子どもはよく見ています。
お母さんは頼んでも早くしてくれないときがある。
お母さんの都合で「早く」と言う場合があることもよく知っています。(川田珣子『園長のひとりごと』より)
⑧競馬場でただ走ることが宿命の馬と、はずれ馬券を細かく千切る男達は、もしかしたら、同じ目をしているのかも知れない。(向日邦子『父の詫び状』より)
⑨子育ては群れの文化なのに、我が国では群れを失い、あっても文化を共有できずにいる。(中沢正夫『なにぶん老人は初めてなもんで』より)
⑩みんな何かを犠牲にして生きる。
ところが君はそのことでずっと憤っていた。
なくしたもののことばかりを考えていた。君は分かってなかったんだ。
犠牲も人生の一部だってことが。(ミッチ・アルボム『天国の五人』中のセリフより)