1枚の絵
一瞬の出来事だった、と今でも思っています。
私がある朝、園庭で遊んでいる子どもたちを見ていた時のことです。
「えんちょうせんせい、ちょっと、まって!」
保育室にいた男の子が、テラスに出てきて、私を呼び止めたのです。
何のことだか分からず、テラスに近づいていくと、その子は、じっと私を見つめ、さっと保育室に入っていきました。
入っていった、と思っていた男の子は、すぐテラスに出てきて、手にさげている白い紙を差し出しました。
「これ、えんちょうせんせい! あげる!」
もらった紙を見ると、クレパスで描かれています。
私?
紫色にピンク色を塗り重ねた胴体。
映画「ET」のような顔。
目が3つある、と思ったのですが、1つは耳なのでしょう。
両手は羽根のようになっています。
可愛い絵です。
絵のことは、よく分かりません。
でも、この絵は、いまも私の宝物です。
それにしても、あの子は、なんと早く、私の似顔絵を描いたことか!
ほんとうに一瞬、といっていい早業でした。
どうして、私を描く気になったのでしょうか?
なぜ、私にくれる気になったのでしょう?
あの時のことは、何度考えても、夢のような出来事に思われるのです。
私の似顔絵は、今も園長室に飾ってあります。