こんにちは、粟津サヤカですコーヒー
京都を旅するコミュニティツアーのガイドをしています。
(コロナ禍の現在、ツアーはお休みしています。)
 
眺めているだけでワクワクしていた
とあるレトロ建築の解体がきっかけで、
レトロ建築がさらされているどうしようもない現実を知り、
ならばせめてその姿を記録にとどめようと
ブログを書いています。

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私のツアーには

比叡山や愛宕山、大文字の如意ヶ嶽など、

山に登るツアーがいくつかあります。

 

登りながらのガイドは、

普通の身体機能しか持っていない私には、

やはりちょっとしんどいので、

できるだけ、

平坦なところや歩きやすいところで

しゃべってご案内し、

きついところは黙々と登るように

タイミングを見はからっています。

 

そんな京都の山々、

毎年、下見も含め各コース2回は

登っていたのですが、

コロナ禍でしばらく登っていません。

 

外出自粛で

体力が落ちていないか心配です。

 

さて、今回はそんな

京都の山間部にあるレトロ、

明治時代から人知れずコツコツと

私たちの日々を支えてくれているレトロ、

 

清滝(きよたき)発電所を記録したいと思います。

 

場所は右京区清滝。

嵐山を北西方向へ、奥へ奥へ、

愛宕山の南東の麓にあたるところ。

清滝川のほとりで

ひっそり、黙々とお役目を務めています。

 

清滝川は

源を京都市北部の桟敷岳(さじきがたけ)に発し、

 

北山杉の産地で有名な

小野郷、杉坂、中川を流れ・・・

 

古代からの山岳信仰、

そして紅葉の名所として知られる

栂ノ尾、高雄を流れ・・・

 

この清滝を通過して、

川下りで有名な保津川へ合流していく

河川です。

 

そんな清滝川が

清滝地区に流れ込む辺りは、

愛宕山の登山口があることから、

山頂の愛宕神社へ登る参詣客の

宿場として大いににぎわいました。

 

また、近代になると、

自然豊かで風光明媚な土地柄が人気を集め、

名だたる文人墨客や学生らが

足を運ぶようになります。

 

今じゃちょっと想像できませんが、

清滝川のこの辺りでは

観光客を乗せた川下りが行われていたそうです。

 

そんな清滝に

水力発電所が建設されたのは

明治42(1909)年、

今から110年以上も前のこと。

清滝川水力電気株式会社によって

木造平屋建て切妻造りの建屋が姿を現しました。

 

インフラレトロならではの

シンプルな出で立ちながら、

さり気なくハーフティンバーの装飾が施され、

西洋の山小屋のような佇まいに心がなごみます。

 

半円形の窓は、

発電所の地図記号を連想させるような意匠。

なんだか頼もしい印象ですね。

 

発電所から2キロほど上流、

高雄神護寺の下流付近には

取水関が設けられています。

ここから水圧鉄管により

発電所へ導水しているそうです。

 

発電所の後方の山肌には

太いパイプが設置され、

落差33.33メートルの水路式発電設備が

250キロワットの電力を出力しています。

 

あの有名な黒部川第四発電所の出力が

335,000キロワットだそうですから、

現代人の私たちにとっては

ほんとうにわずかな量ではありますが、

 

明治42年のこと。

当時は拡大する電力需要に

少なからず貢献したことでしょう。

 

発電に使われた水は

再び清滝川へ。(写真右下)

 

水力発電は

二酸化炭素排出量が少なく、

エネルギー変換効率が80パーセントと高く、

また、天然ガスや石油、石炭などと違い、

資源が国産であるため

ほぼ永久的に発電し続けることができるのだそうです。

エコですね。

 

清滝発電所の事業主は

竣工翌年の明治43(1910)年には

清滝川水力電気株式会社から

嵐山電車軌道株式会社に、

大正7(1918)年には京都電燈へと移り変わり、

戦時の配電統制令、

戦後の電気事業再編成令を経て、

現在は関西電力となっています。

 

今回は清滝発電所を記録しました。

 

近代化に突き進む京都にとって、

都市部から近い場所に

発電所を持つことは重要だったでしょうから、

山がせまる地理的特徴を活かし、

自然河川を利用した水力発電所は

とても合理的なもののように思います。

 

また、京都盆地を取り囲む山々は

どれも1000メートル以下の低山なので、

他県の急峻な山々の

大規模な水力発電所に比べて

あまりに小規模で

かわいらしいものにはなりますが、

それも含めて、

清滝発電所は京都の近代化を映し出す

京都らしいレトロ

といえるのではないかと思います。

 

さてさて、

次はどこを記録しようかな~ランニング

 

今回の記録は下記を参考に作成しました

  • 京都市の近代化遺産 :京都市近代化遺産(建造物等)調査報告書、産業遺産編 京都市文化市民局文化財保護課編 2005年

  • 関西電力ホームページ 水力発電所一覧

現在、周辺は

愛宕登山や渓谷歩きを楽しむ方が多いですが、

昭和初期から戦前期には

嵐山から鉄道が走り、

山頂付近とを結ぶケーブルカーが発着する

一大レジャーエリアとなっていました。

その痕跡が残るレトロについては

以前このブログで記録しました。

ぜひ、こちらもご覧ください。

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また、京都の水力発電所には、
琵琶湖疏水を利用したものもあります。
以前にこちらで記録しましたので
ぜひご覧ください。
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