さくら さくら
舞い散る さくら
君の声はもう届かず
あの日の歌が聞こえる
もう戻れない
優しきあの日々__
第1章 サクラ サクラ
桜の森の満開の下を通ると
気が狂ってしまう。
山賊の男はそんなことを言っていた。
くだらないお伽噺で疑心暗鬼に陥った男は最愛の女をその手で殺す。
くだらない
くだらない___
なんて滑稽で、哀しい話なのだろう。
そんなことを思いながら私は本を閉じた。
「夜に読むような本ではなかったわ」
少し溜め息を吐いてから、ベッドに横になった。
夜は薬なしでは絶対に眠れない。
今日は生憎切らしてしまっていた。
夜になるとあの歌がずっと私に付きまとってくる。
「さくら さくら___」
あぁ、また、聞こえる。
彼の、寂しげな声___
毎日毎日、幼き日々に歌った優しげなメロディーが響く。
夜、起きているときも同じ。
夢の中でも同じ。
夜になれば私だけの中に必ず響いてくる。
「ねぇ、遊ぼうよ___」
これはいつまで続くのだろうか。
「ねぇ、コウさん____」
悪夢のような、甘い夢のような。
私は悪夢の中で締め殺されるのだろう。
私は甘い夢の中で溺れ死ぬのだろう。
私は、死ぬのだろう。