数万年という人類の歴史的視野に立って眺めれば、近代なんてほんの一瞬の出来事なのだ。

近代の先には再び夢に満ちた広大な新しい自然の世界が拡がっているに違いない。

そのような未来の自然を発見したいという想いを巡らせながら被災地に向かった時に、私は東北の地で自分の故郷に帰ってきた、と感じたのだ。

信州を出て以来、田舎がこんなに魅力的に思われたのは初めてであった。

いつも東京へ向かっていた私の旅は、一巡して自然の地に帰り着いたのかもしれない。

しかしこれは私にとって、建築を探る旅の出発点なのである。

東京が失ってしまった豊かさが東北にはまだ残っている。

なぜ豊かかと問われれば、ここには人と自然とが一体化された世界が存在しているからである。

人々は未だ自然の恩恵で生きていることを幸せに感じている。

だから自然の猛威に屈伏しても、決して自然を怨むことはないし、自然への信頼を失うこともない。

何度津波に襲われても再び海辺に戻ってきたいと願う人々の姿がその証である。