楽器やりたい | 半径3メートルから宇宙の果てまで

楽器やりたい

5歳から16歳になるまで、先生についてピアノを習っていた。小学生のときはさして興味もなく、苦痛な練習を続けていた。母曰く「あんたがやりたいと言ったから習わせているのよ」と言うのだが、そんなこと言った記憶がない。「やってみる?」と言われて「うん」と答えた記憶なら、ある。

しかし中学に入ったところ、同級生だった杉本君が上手にピアノを操るのをみて、目から鱗が落ちた。杉本君は流行っているアニメの主題歌を楽しげに弾いていた。僕は好きな音楽を弾くということになぜか頭が回らず、やれハノンだやれツェルニーだと練習曲にうんざりしていたので、新鮮な驚きだった。やっていることはコードバッキングに短音のメロディーを弾くだけという、とってもイージーな演奏なんだが、とにかく楽しそうだった。

高校時代は先生につくのはやめて、好きな曲を好きなように弾くだけだった。色気づいてきてオフコースなんかを弾いてみたりするも、弾き語りはどうもなじめなかった。よほど歌が上手くないと、自分の歌のマズさに興ざめしてしまうのだ。

で、この年になってまた楽器をやりたくなってきている。おとなしくピアノ弾いてればいいんだが、なんかこう、新しい楽器をやってみたいのだ。そう、たとえばフルート。メロディ楽器がいい。ボサノバに入ってくるフルートなんてもう大人っぽさのエキスがダラダラと垂れあふれてくるようでたまらない。

バイオリンを弾く知人が言うには、楽器を始めるなら可能な限り高価な楽器を買うべきだと教えてくれた。良い楽器は音もよく、練習の質も上がり、結果上達も早まるというのだ。そしてそれを正しいと経験的に思えることがあった。
僕が最初ピアノを習い始めた頃、5歳の時だが、そのときはテーブルの上に鍵盤の絵を描いた画用紙を置いて、手を乗せてぴょこぴょこを指を動かすことからはじめ、本物のピアノは高価だったので、次にエレクトリックピアノがうちにきた。音はピアノとは全く違うが、ヘッドフォンをつけて夜中も弾けるので、でたらめな現代音楽風の演奏に戯れていた。やがて小学校高学年に近い頃、やっと初めての本物のピアノが我が家にやってきた。中古のドイツのピアノだった。そこで僕はかなり戸惑ったのが、キータッチの違いだった。エレピのキータッチは非常に軽かったのに対して、本物のピアノはキータッチが重く、鍵盤の返りもいくぶん遅い感じがして、非常に不快だったのだ。

ことあるごとに鍵盤が重いので、指が疲れてイヤだと訴えていたが、慣れてみると、やっぱり楽器としての表現力は電気モノの比じゃないことを知り、それまでよりも練習も楽しくやることができた。

まあ、そういうことなんだろうと思う。