16才年下の女子の告白 | 半径3メートルから宇宙の果てまで

16才年下の女子の告白

取引先の営業の女の子が、今月いっぱいで退社するとのことで、では食事くらいいきましょうと渋谷道玄坂の台湾料理・麓郷へ行った。
「お酒強そうですよね」とおだてられ、
調子に乗って頼んだ酒がものすごい強い。ひと舐めで火を吐きそう。
こんなの飲ませてどうする気だよ♪ ここは道玄坂なんだぞッ
と16歳も年下の女の子を肘でつつきながらお会計。
金を出そうするので、自腹でオレをおごろうなどと生意気であると伝え、店を出る。

申し訳ないとうるさいので、「では次の店で一杯ごちそうしてくれなさい」と地下のバーに移った。
退職後は何をするのかと問うと、もう準備を始めていて、休日に学校に通っているとのこと。
ああん、しっかり者さんじゃないか。

話題はバカンスの話に。
「海外経験は多いですか?」
「いや、仕事で行ったのは韓国、香港。それ以外はグアム、ベトナム、カンボジアくらい」
「アメリカやヨーロッパは?」
「興味ない」
「へええ」
という流れのあと、いきなり彼女が切り出した。
「実はわたし、日本人じゃないんですよ」
予想外の告白にちょっとびっくり。
「というと?」
「両親とも二世なんです」
彼女は純粋な在日三世だった。
なぜそんな告白を始めたのか、
知らないうちに在日への差別的なことを言っていたのかと思ったが、
そうではないらしく、なんとなく話の流れで言ってみたとのことだった。

「帰化する気はないの?」
「はい、今のところは。でも母はライトな人で、不都合があったら帰化していいよと言ってくれてます」
「ふうん。まあ公務員になる気ないなら関係ないか。選挙権ないのはどうなの」
「それも今のところはいいかと思ってます」
やっぱり韓国で暮らしたことはなくとも、自分が朝鮮民族であるというアイデンティティは強く持っているらしい。

身の回りに在日は少なくないが、こうして面と向かってそのことについて話をすることってのはあまり多くない。きわめてプライベートなことで、仕事での付き合いだとなかなかそういうところまで話が及ばないからだ。
彼女はメディアで日本と韓国のイザコザを見るたびに、悲しい気持ちになるそうだが、韓国へいったところで、在日であることに対する哀れみを向けられるという孤独感も味わっているらしい。
「私って何人なんでしょう」
そんな重い問いをオレなんかに返せるわけがないので
「世界中隣り合ってる国が仲良しなところなんてないのサ」
と、答えにならない答えを垂らす。
ここで気の利いたことが言えれば、さすが16歳も年上。つまり素敵!
すなわち道玄坂の上に連れて行ってください! ってことにるんだが
まあ、オレは所詮この程度であるし、さらなる研鑽に努めようと思った次第でございます。