「あけましておめでとうございます。」あっという間に今年も10日が経とうとしている。

先日緊急事態宣言が出されたのでお師匠さんの今月の出演のお仕事はキャンセルか延期になってしまうのではと心配していたが、13日、14日の伊勢の出演はなくならなかった。今はお伊勢さんでも人の少ない平日に分散してお参りしていただくように奨励しているようで、「平日伊勢参り」という企画に呼んでいただいたのだ。

今日はその準備のため和力の木村さんともう一人の出演者の景さんが来てくださり、一緒にお稽古をした。ひとつひとつの演目について、構成や演奏の中身はもちろん、楽器や道具の置き場所、出しハケの分担や順番、タイミングなどを細かく確認していった。

お師匠さんはクリップボードを片手に気づいたことをメモしておいて、もっとこうしたほうがいいと教えてくださる。その理由はいつも明解で納得できるし、その通りにすると確かにいつも良いほうに変わるのだ。木村さんも「ここはこういう音を入れてみたらどうでしょう。」というように、的確なご提案とアドバイスをたくさんしてくださった。

お稽古に精を出して、お昼には鹿肩ロースの焼肉、イノシシの角煮、夜にはイノシシ肉の鍋をした。コロナに負けないためにも栄養をつけておかなくては。

鍋を食べながらお師匠さんと木村さんがお話しされていたが、コロナのせいで仕事は少なくなったけれど、時間ができて以前できなかったことが今はできるというのも事実。あながち悪いことばかりではない。

言われてみれば私も昨年新しく始めたことや「そういえば自分は子供のころからこれが好きだった。」と思い出し、再開したことがいくつかある。その一つが「朗読」「語り」だ。次に取り組んでみたい物語を最近探していた。

お師匠さんの稽古場にはたいそう立派な本棚がある。表がガラス戸で、床から天井近くまで人の背よりも高く、3段に分かれていて横幅は一間ほどある。ここにぎっしりと並んだ小説、芸能関係の本、歴史、童話、落語、演劇、音楽、バイクなど様々な本を眺めていると、たまに「おっ。」と思う一冊に出くわすことがある。人の本棚を眺めるのはちょっとした冒険だと思う。並んだ背表紙の端から端へ目を走らせるとその人の歴史を少し垣間見た気分にもなって、私は好きだ。寝室に入るのと似たちょっとした気恥ずかしさもあったりして。

この間、ついにこの棚の中から朗読の題材を見つけることができた。斎藤隆介著「モチモチの木」だ。小学校のころ夢中になって何度も音読していたこの物語と、また35にして再会できた。楽しみながらがんばってみようと思う。

その前に、明々後日は伊勢での出演がきちんとできたら、赤福もちをいただくのが楽しみだ。

今日は起きて30分後には車に飛び乗って、それから長いことハンドルを握っていた。

私と真央ちゃん、胡弓と笛、三味線、ギターを積んだ車は天竜川を遡るように北へ70キロ。今日はお師匠さんと別行動で、私が10年来お世話になっているギターのK先生のご自宅へ、来春開催することになったコンサートの打ち合わせに行ってきた。先生とは阿智へ越して以降も連絡を取り続けており、和力の飯田公演にも何度も足を運んでいただいている。「久しぶりに一緒に演奏出来たらいいね。」ということになり、コンサートを企画するに至った。

山間の眺めのよいK先生のお家でおいしいコーヒーとアップルパイ、冷凍鬼灯などをいただきながら3人で曲目を考えた。ギターの合奏曲のほか、私が胡弓、真央ちゃんが三味線で加わる曲も用意することにし、フラメンコ、民謡、童謡、歌謡曲などバラエティーに富んだ内容になる予定だ。

コンサートと言えば、5日に今年最後の公演が名古屋の東別院で開催された。その名も「なんとかやってこられたコンサート」。

コロナ対策のため小野さんがご出演できず残念だったが、会場はとてもアットホームな雰囲気に包まれ、生の舞台に飢えていた(?)お客様の反応はとても温かく、素晴らしい公演になった。年内に一度はこうして名古屋での自主公演を開催できてよかったと思う。

その公演から帰ったら早速、また外の仕事を始めた。

寒さ厳しい信州の冬に備え、いつもできる限りたくさんの薪を用意している。

屋根のある薪積み場がいっぱいになってしまうと、今度は何もない庭の隅のほうに万里の長城のように薪を積み上げていく。最近だんだん薪が減りスペースができたので、その野天の壁から徐々に薪を屋根下に移動させていくようにしている。

お師匠さんの薪積みはリズミカルで速く、きれいだ。私と真央ちゃんがどんどん一輪車で薪を運んで行っても、次から次へ積んでいくので2対1でちょうどいいくらいのペース。何気なく積んでいるようでも薪をどのように置くかは瞬時に計算されている。手前と外側が高く、内側と奥が低くなるように積まないと崩れてきてしまうから、どの薪をどの向きでどこに置くかは適当に決めてはだめなのだ。

私は薪積みが好きだし、前よりはうまくなってきた気がするが、そろそろお金も少しづつ積んでいかないと、ゆくゆく自分の楽器を購入するためにはまとまったお金がかかる。お金積みのコツを誰か教えてほしい。

 

 

 

早いものでもう10月。

この「とおかんや」は、気が付けば今日で開設3年目を迎えたようだ。

2021年のカレンダーと手帳を用意したついでに過去の手帳を読み返してみると、4年前の今頃は、お師匠さんたち和力の皆さんは立川志の輔師匠の独演会にゲスト出演するため関西へ行っていらっしゃった。3年前、私とお師匠さんは狩猟で使う無線の講習会に参加し、2年前は地元栗矢神社の秋祭りに出演、去年はアメリカから舞のお稽古に来られた皆さんと合宿。さまざまな10月初旬があったけれども、今年満月をゆっくり眺めたかもしれない。

先週、いよいよ今日から「和力のもと」オンライン配信開始、という日が満月だった。まるで、連日の徹夜に近い編集作業を終えた金曽さんへの金メダルのように輝いていた。

オンライン公演の舞台裏。

いつも音響でお世話になっている金曽さんが撮影、編集を担当してくださり、飯田公園の収録後1週間缶詰状態で作業にあたってくださった。稽古場にテーブル3台がずらっと並び、その上にモニター、パソコン、スピーカーが設置された様はまるでスタジオ。

上手と下手、正面から撮られたアップや引きの映像が同時に画面に表示される。それを見ながら、どこをどのようにつなげるのが最も効果的かを考え、お師匠さんは金曽さんにリクエストをしていった。

「このシーンは全体が止まる瞬間を見せたいです。」

「この転換は見えないように、踊りに集中させたい。」

という具合に、本当の舞台では絶対にできないことだが、映像作品ではお客さんの視線と視界をこちらで指定できる。

金曽さんもご自分の意見を出してくださり、長時間2人でモニターをにらめっこ。

すっかり肩と背中が凝ってしまった金曽さんに、真央ちゃんはマッサージ用にテニスボールを貸してあげていた。

無事配信が始まり、一息つく間もなく次の公演へ。

10月4日、名古屋では木村さん主催の公演「神な月」の宴が行われた。

お琴、琵琶の奏者の方と木村さんの紡ぐ物語と音楽の舞台はとても素晴らしい内容で、特別ゲストとして出演されたお師匠さんの舞も、それぞれの場面にぴったりはまり、語りと音楽の世界観をいっそう鮮やかに引き立てていた。

先月に比べて丸々としてきたほっぺのあたりやお腹周りが証明しているのは、公演中にごちそうになったおいしい食事と、ケータリングやお土産にいただいたお菓子の存在。公演は太るが素晴らしい。月に似た福々しい顔になれる。