地面の摩擦による風速の減少とIAS/GS/ANUの関係

 

HEAD WIND 20KT            TAIL WIND  10KT

   IAS     G/S   ANU                     IAS        G/S      ANU         

30ft   135㏏  115㏏     4.8  °            30ft  130 ㏏    140 ㏏     4.3°

25ft   134     115      5.0              25ft    131        140       4.3  

20ft   133     114      5.3              20ft  132        140         4.3

15ft   131     113      5.7                15ft  133      140         4.3 

10ft   128     111      6.2                10ft    134        139         4.4

 5ft    123   109      6.8                  5ft  134        139         4.6

T/D    120     107      7.5         T/D   134        138         4.8

 

対地高度(車輪)30fで20㏏の正対風     対地高度30ftで10ktの追い風  

その上の高度でも風速は減少している     Thrustは通常よりN1が約1%

Thrustは通常よりN1が2%以上多く      少ない

ANUは高め                 ANUは若干低め

図のように地上の摩擦により風速は減少します。空港の風向/風速計の高さとタイア(車輪)と翼の高さの関係は一概に決められません。しかし、100ftからThreshold (滑走路端)を過ぎ接地迄の間に摩擦は増え風速が減少します。

Thresholdでは眼高は50ftですが、タイアの高さは機種により又、小型機・中型機により35~40ftの違いが有ります。そこで簡易的に理解しやすく計算し図を描きました。図と表は私が想像した計算値です。しかし、正確な数値ではなくとも、経験から感じているものです。

IASとは( Instrument Air Speed)計器速度です。地上付近では真対気速度で補正する必要はありません。

向かい風(Head Wind)では風の減少が True Air Speed( 真対気速度)に直ぐ現れ揚力が減少します。これはFlare(機首を上げること)で補います。対地速度は50トン~300トンもの重量では数秒では殆ど変化しません。そして、Flareの量がTail Windよりも多く、時間も0.5~1秒弱多く

かかるので接地迄の対地速度の減少が多くなります。 

Pitchを変えなければ 5㏏減少すると降下率が約200ft/min増大します。再度沈み始めた機体を瞬間的に止めることは出来ません。Elevatorが効く迄には1秒以上かかります。急激に大きElevatorを引けばもっと早く効き始め機首が上がるでしょう。しかし、機首が上がるだけで揚力が瞬間的に増えるわけでなく、Pitchが上がると重心の下にあるタイアは相対的に勢いがついて下がるのでショックが大きくなります。そして大きくバウンドすることになります。沈みを感じた瞬間にPowerを大きく出し機首を押さえる方がショックは少なくなるでしょう。私はしたことは有りませんが、先輩機長の操作を何度も見ました。

そして、Pathが正常ならば眼高で判断するのではなく500ft Marking前後の(位置)Positionで判断します。

向かい風成分が15kt以上ある場合、対地高度5ft(Radio Auto Calloutの”ファイヴ”のコールを参考にしても良い)から今までのFlareのRateより若干早く、力を強めて100ft先に引き延ばすと0.5~0.7度上がりノーショックで接地することが出来ます。この場合 タイアがSpinup(地上との摩擦でタイアが有る程度の回転率で回転を始める)せず  Spoiler Deploy(展開・約60度立ち上がる事)が若干遅れるので一瞬待ってSpoilerが立ち上がり  Shock Stratが沈むことを感じてからThrustをIdleにしてゆっくり Reverseを使います。対地速度は非常に遅く、滑走路は十分長いのです。ゆっくり前輪を接地するまでに10kt以上減速します。ReverseはIdleで問題有りません。ましてAuto Brakeなど全く必要ありません。

Tail Wind(追風)の場合、風速の変化は向かい風と同じです。そして、Ground Speed(対地速度)も数秒では殆ど変わりません。大きな違いは5㏏の風速の減少はその分向かい風成分に変わりIAS(対気速度)が5㏏増加した事と同じであり、Pitchを変えなくとも降下率約200ft/min減少します。Pitchを1度上げた事と同じになります。その上Ground Effectも同じく約200ft/minの効果があります。向かい風と同じく20ftでThrust Idleにすると接地迄殆ど対地速度は減りません。接地速度を少しでも減らすため40~30ftからThrustをIdleにすると良いでしょう。

もう一つのテクニックはTarget Speedの考えが出来る前のStandard Procedure(標準操作)があります。100ft付近から若干(N1 1~1.5%)Powerを絞り5㏏減らしThresholdで基準速度(失速速度×1.3)になるよう減速します。Stabilizer TrimをThresholdまでに使い確実にPathを維持します。これは危険操作ではありません。

20年以上前からTail Wind15ktの運用が始まっています。実際にはこの条件は滅多にありません。しかし、この考えを実践出来るように知識は持っていて欲しいですね!

このようにHead windでは2.5~3度Pitch Up、Tail Windでは1度弱~1.5度弱Pitch Upする違いが発生します。

話は少し変わりますが、横風も同じく減少するわけです。通常横風10㏏につき5度の偏流修正が必要になります。20㏏では10度です。100ft付近はもっと強いはずです。接地前後までに10㏏風速が減ると5度余分になります。そのままでは機体は風上側に移動し始めるので5度戻す必要があります。通常Headingを5度変えるにはBank(傾き)を取り少ないながらも旋回が必要です。Rudderで支えて5度Headingを変えても横滑りするだけで正しい変針をしていません。しかし横風の減少に対してはRudderだけで戻すことが出来ます。横風が減少し始めると風上側に機体が移動し始めます。これを瞬間的に感知してRudderでHeadingを変えることが正しい方法です。勿論一度に5度戻すわけではなく少しづつ戻すのです。

台風の時に1500ftでDown Wind Legを飛行中30度の偏流修正を取りました。と言うことは60㏏(風速30メートル)以上有ったのです。これが地上風の報告では平均18㏏/Gust(最大瞬間風)28㏏でした。又、米子空港に着陸する時も地上風の報告では制限以内だったが、Threshold近く迄ターミナルビルに向いていたと運航管理者に言われました。これだけ変化(減少)するのです。着陸速度の遅いYS-11だったので接地寸前に風下に流されてギリギリ滑走路灯を壊さず残りの滑走路に対角線で降りた経験があります。同時刻頃余部鉄橋から列車が落ちていました。一時間程前に米子市を通過したのでしょう。勿論平地で吹く風よりも、日本海から直接余部鉄橋のある狭い谷に吹き寄せる風はベンチュリー効果で相当強くなっていたはずです。45年前の想い出です。